【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0144話『アークロイヤルの着任と一悶着』

 

 

 

欧州棲姫の個体を倒したことによって私達の艦隊は任務を完了したことになったので大本営から褒章として勲章とアークロイヤルの受け取りを行うために鎮守府正門へと待機していた。

アークロイヤルはイギリスからわざわざ来てくれる手はずになっているので結構な待ち時間があったけどそれも予定通りには今日中には来てくれるという。

それで私は今か今かと送られてくるはずの車が来るのを待っていた、のだけど……、

 

「……ビスマルク? あなたはアークロイヤルの事が苦手でしょう? なぜ出迎えに来たのですか?」

「う、うるさいわね、ウォースパイト……別にいいじゃない? もう今は敵じゃないんだから少しくらいは挨拶くらいはしておいても損はないだろうし……」

「そうね。これから毎日顔を合わす仲になるんですから始めのうちに慣れておくのも大切よね」

 

私の右側には少しビスマルクの怯えようにニヤリと笑みを浮かべているウォースパイトが、左側には挨拶をするというが及び腰になって私の服の裾を掴んでいる少ししおらしい感じのビスマルクがいた。

普段この二人は滅多な事では喧嘩はしないのだけど、やっぱり因縁があるのかたまに口喧嘩をするくらいには仲はそこそこ良いのか分からないけど、まぁ仲はいい方なのかな……?

私もそこについてはいまいち分からないんだよな。

よく金剛が二人の間に入って仲裁している光景を見るけど金剛はいい感じに緩衝材にはなってくれていて感謝している。

しかしそれもアークロイヤルが来たら相関図模様が激変するだろうなぁ、主にビスマルクにとっては……。

史実でビスマルクは大英帝国の誇る戦艦であるフッドを沈めたのはいいんだけどその後に追撃戦を受けてアークロイヤルの発艦させたソードフィッシュの艦載機によって攻撃を受けたことによって負傷して不安定な航行を余儀なくされて最後には追撃艦隊によって総攻撃を受けて沈んだという。

だからか今回の大規模作戦でソードフィッシュが貰えた時はビスマルクはとても複雑な表情をしていたのを覚えている。

ソードフィッシュが苦手……それは総じてアークロイヤルも苦手になるというのは少し考えれば分かる事なのかもな。

そんな事を考えている時だった。

 

「あ、 Admiral。車が来たようよ」

「そうみたいだな」

「ついに来たのね……」

 

ウォースパイトはとても嬉しそうに、私は新たな仲間の歓迎のためにキリッとした表情になって、ビスマルクはこれから難敵に挑むような心持ちで挑むのだろうな。

そして車が正門前へと到着した。

時間にしてはもう午後の8時過ぎだから結構遅かったのだろうな。

車からは運転手の軍の人が降りてきて、私はその人と握手をした後に、

 

「榛名提督。ただいまを持ちまして一人の艦娘の護衛輸送を完了いたしました」

「ありがとうございます。いつもご苦労様です」

「いえいえ。榛名提督含めてこの鎮守府の艦娘さん達は私に優しいですので嬉しい限りです。他の鎮守府だと事務的にしか接触して来てくれませんから」

 

そう言って軍の人は苦笑いを浮かべていた。

中々に苦労人のようだな。

 

「ともかく、それではドアを開けますのでどうぞ受け取ってください」

 

それで軍の人がドアを開けるとそこからまるで騎士のような恰好をしていて冠のようなカチューシャが似合う女性が降りてきた。

それでウォースパイトが走りだしそうなのを我慢するのを見て取れた。

まずは私が挨拶をするのを分かっているのかその場で立ち止まっている。

その気持ちがありがたいと思いながらも私はその女性に挨拶をする。

 

「あなたが……アークロイヤルで合っていますか?」

「ええ。私は、Her Majesty's Ship Ark Royal。貴女がAdmiralなのね……よろしく」

「ああ、よろしく。これからともに頑張っていこうか」

「ええ。そして祖国の窮地を救ってくれて感謝しているわ。ありがとう……」

 

そんな感じで私とアークロイヤルは握手を交わす。

それが終わるのを待っていたのかウォースパイトがアークロイヤルに話しかけた。

 

「ようやく会えたわね……。嬉しいわ、アークロイヤル」

「ウォースパイト……貴女もこの艦隊にいたのね。私も会えて嬉しいわ……。そしてそっちのは……おや? ふむふむ……」

 

アークロイヤルはビスマルクに視線を向けると興味を示したのかじっくりと見つめていた。

 

「な、なによ……?」

 

やっぱり私の服の裾を掴んでいる為に弱腰になっているのだろうな。

普段の気丈な振る舞いからは少し考えられないけどこれも仕方がないな。

 

「ふむ、なるほど……お前はビスマルクか。過去に大変お世話になったな」

「お、お互いさまでしょ……?」

「そうだな。……まぁ過去のいざこざを掘り起こすほど私もバカじゃない。だからビスマルク、これから同じ艦隊で過ごすのだからよろしく頼むぞ」

 

そう言ってアークロイヤルはビスマルクに手を差し出す。

その手をビスマルクは少しおずおずしながらも握って、

 

「よ、よろしく……」

「ああ」

 

これでお互いに過去の因縁は払拭できたわけではないだろうが第一印象はまずまずだったな。

そんな二人にウォースパイトが「クスリッ」と笑いながら、

 

「また私達の艦隊が国際的になったわね、Admiral」

「そうだな。まぁまた賑やかになるだろうことは考えなくても分かる事だろうけどこうして因縁の相手とも同じ釜の飯を食べる仲になるというのは感慨深いものだな」

「その気持ち、分かるわ」

 

それでビスマルクの頭を「これから楽しくなりそうだな」とガシガシと掻いているアークロイヤルと「やめなさい!」と必死の抵抗をしているビスマルクのそんな少し憧れる光景を見ながら、

 

「さて、それじゃ改めて……アークロイヤル。我が艦隊にようこそ」

「ええ。Admiralの指揮を見させてもらうわ」

 

それで改めて私はアークロイヤルと握手を交わした。

その後は軍の人は見届けたのか満足そうに帰っていった。

そしてアークロイヤルの空母寮に移籍するための準備をするのであった。

もうアークロイヤルの私物も別口で届いているから部屋の整理に忙しくなるぞ。

 

 

 




アークロイヤルの着任回でした。
次回は空母寮の賑わいでも書きましょうかね。
まだイベントは終わっていないので終わるまで宴会話はお預けですし。




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