【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0014話『鈴谷の悩み』

今日はまだ鎮守府全体を把握していないために任務を終わらせた後に鎮守府内を散策していた。

それで前方からとある艦娘が歩いていた。

 

「あ、提督じゃん。チーッス!」

「ち、チーッス…」

 

鈴谷だった。

女子高生のようなノリでなんとか返事を返すと「ノッテくれてありがと!」と言ってすぐさまに私の腕に絡んできながらも、鈴谷は私が暇をしているという事をすぐに察したのか、

 

「提督、暇そうじゃん? それならちょっと鈴谷に付き合ってよ」

「別にいいけど…どこにいくんだ?」

「うん。もう一人の私は今どうしているかなって…」

「もう一人の鈴谷か。そうだな、今頃弓道場で軽空母連中に鍛えられているんじゃないか…?」

「そうだと思う。あの子前から一緒にいた私と違ってこの鎮守府にいた期間はまだ短いじゃん? だから心細いんじゃないかなって…」

「そうだな…。よし、見に行ってくるか」

「話が分かるぅ! それじゃレッツゴー!」

 

それで鈴谷がリードしながらも弓道場へと足を運んでいくとそこでは面白い光景が繰り広げられていた。

 

「鈴谷! 式神式の艦載機の出し方を伝授させたるで?」

「ダメー! 瑞鳳が鈴谷に弓での艦載機の出し方を教えてあげるの!」

「あわわ…そんな一気に迫ってこないでよー!」

 

龍驤と瑞鳳が先輩風を吹かしたいらしく鈴谷の取り合いをしていた。

見ているだけなら面白い光景だけどこちらにいる鈴谷にとってはあんまり面白くなかったのだろう、

 

「はいはい! 龍驤先輩に瑞鳳も! 私が困ってるじゃん? 一旦落ち着こう!」

 

そう言って二人の間に入って仲裁していた。

 

「せやけどぉ…せっかくの新しい後輩なんやし…」

「うん。空母のイロハを色々と教えてあげたいの…」

 

二人はそれでシュンとなっていた。

そんな二人の頭に私は手を置く。

それで私がいることに気づいたのだろう。

 

「まぁ、そう焦るな二人とも。喧嘩なんかせずとも鈴谷は別に逃げはしないんだから。

同じ空母寮の仲間なんだから時間をかけて切磋琢磨していけばいいじゃないか?」

 

そう言って場を和ませようとした、のだけど、

 

「司令官、甘いで? そんな事を言っていたら鈴谷はすぐに逃げてしまうからな」

「うん。これだけは譲れないの。鈴谷、すぐにさぼっちゃうんだからまずはその根性を治さないといけないの」

「…そうなのか? 鈴谷?」

 

それで私は軽空母の方の鈴谷に言葉をかけると鈴谷は「うっ…」と少し怯えた顔になって、

 

「だってさぁ…私、この鎮守府にきてからそう日も置かずに重巡から航空巡洋艦になって一気に軽空母にまでなっちゃったじゃん?

だからっていうのもなんだけど、体の変化にまだ心がついていけなくて…それで急に弓の使い方を伝授するって言われてもマジ困るんだけどーって感じなの」

「私も苦労しているんだねぇ…」

 

それで航巡の方の鈴谷が慰めていた。

それに鈴谷の言い分も分かる。

航改二にするためだけに一気に育てたのも私が先見の明が甘かったのも関係しているから苦労させているわけだし。

だからそんな鈴谷に諭すように、

 

「…でもな、鈴谷。多分だけど次の大規模作戦ではお前の出番ももしかしたらあるかもしれない…。

だけどそんな中途半端な状態で戦闘には出したくない。それで君がもし沈んでしまったら私はまた後悔してしまう」

「提督…」

「だからさ、今はまだ少し慣れないかもしれないけど軽空母としての艤装の練習、頑張っていかないか…?

もしなにかあったらすぐに私に愚痴りに来ても構わないからさ。今のうちはまだ先輩たちに甘えられるいい機会だしな」

「ううー…わかったよぉ。鈴谷、もうちっと頑張ってみる」

 

少し肩を下げて気落ちしながらも、鈴谷はそう言ってくれた。

それでよし!っと私は鈴谷の頭を撫でてやると鈴谷は気持ちよさげに顔を綻ばせた。

だけどそこで別の視線を感じた。

なにかと思ったら龍驤と瑞鳳が少しふくらっ面になりながらも、

 

「提督ぅ! 瑞鳳の事も褒めてよぉ!」

「せやで? うちらも鈴谷の育成を頑張ってしているんやからご褒美くらいは必要だと思うんや」

「はいはい。二人ともありがとうな。えらいよ」

 

それで二人の頭も撫でてやると鈴谷と同じく二人とも笑みを浮かべて喜んでいた。

 

「それじゃ頑張ってくれ」

 

と言って私と鈴谷は弓道場を後にする。

 

「提督、やるじゃん! 私や龍驤先輩たちの扱いとかも手慣れている感じだし」

「みんなの性格は大体は把握しているからな。それでも乙女心だけはまだわからないけど…」

「それは提督がおいおい理解していくしかないんじゃない…? ね、榛名?」

《はい》

 

鈴谷の問いかけに榛名はすぐに出てくる。

でも、

 

「なぁ、榛名。君っていつもどの程度私の行動を把握しているんだい…?」

《提督の行動なら考えていること以外はなんとなくですが把握できていますよ。

私と提督は心以外はもう完全に同化していますし…》

「そうだとするとなんか恥ずかしいな」

《提督も私の体であれこれできるんですからお相子ですよ。さっき、改二になって大人らしい体になった鈴谷さんに腕に抱き着かれていた時少し嬉しそうでしたし…》

「ばれていたか」

「提督、榛名の尻に敷かれちゃってるねぇ~」

「言うな…」

 

そんな話をしながらも私達はそれから色んな所へと顔をのぞかせたのであった。

 

 




まだうちの二人目の鈴谷は鎮守府に来てから一か月も経っていません。

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