【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0119話『それぞれの花火大会模様』

 

 

 

 

今日は町の方で花火大会が行われるという事で私達は鎮守府から出ていき花火が見える丘へとやってきていた。

浴衣姿の川内が、

 

「提督ー、もうすぐで花火が上がるんだね!」

「ああ。だからそんなにせわしなく動き回るな」

「もう……姉さんはこういう事に関してはよく騒ぎますよね」

 

神通がそれで額を抑えていた。

神通も浴衣姿のために少し動きにくそうにしている。

だけど私は知っている。

浴衣グラでの神通は中破してからが本番とばかりに目つきも鋭くなるんだよな。

 

「司令官もよく花火が見える場所に行きましょう」

「あっ……綾波姉ばっかりずるいぞ! 司令官、アタシも一緒に行くからね」

 

それで綾波と敷波に両手を引かれて私は移動する事になった。

 

「提督? あまり遠くに行っちゃダメだからね? お姉さんとの約束よ」

 

陸奥が私が移動する間際にそんな事を言っていた。

おそらく私の身を心配しての事だけどどうにも子ども扱いされているようで何とも言えない気分になる。

 

「さ、司令官。ここならよく花火が見えると思います」

「一緒に見ようね」

「それじゃ座るとするか」

 

それで私は芝生が生えている地面に持ってきていたシートを敷いて座った。

綾波と敷波が私の両隣りを確保して座っている。

そこに古鷹が遅れてやってきて、

 

「あ、少し遅かったかな……?」

 

そこには少し残念そうにへこんでいる古鷹の姿があった。

 

「古鷹さん、私の隣なら空いていますからどうぞ」

「うん。座らせてもらうね……」

 

それで古鷹も綾波の隣に腰を下ろした。

他にも何人か浴衣姿の艦娘はいるのだけど暗いので誰が誰か分からない状況だ。

そんな時に空に上がる一つの光。

空高く昇っていったそれは破裂をしたのだろう。闇夜の空を明るく染めあげる。

花火大会が始まったのだろう。

 

「わぁー……綺麗です」

「そうだね。綾波姉」

「はい。提督、とっても花火って綺麗ですね」

「そうだな」

 

それで誰かが「たーまやー!」とか叫ぶかなと思ったんだけどそこで川内の声で、

 

「夜戦だー!!」

 

と叫ぶ声が響いてきて思わず笑みが零れていた。

普段通りで安心したとも言えるけどね。

それから次々と花火は上がっていき夜の空を様々に変色させる。

………そういえばよく友達と見に行っていたっけ。

この世界に来る前の懐かしい記憶が蘇ってきていて少し郷愁を感じていた。

だけどそこで古鷹がそんな私の事を心配したのだろう顔を覗き込んでくる。

左目の輝きがそれで余計に私の顔が映ってどうしたものかと思っていると、

 

「……提督? もし心細かったらいつでも頼ってくださいね? もう私達は提督が言うように家族なんです。胸に溜まっている事があったら言ってくださいね」

「………ああ。ありがとう、古鷹。大丈夫だよ。古鷹のその気持ちだけでもうずいぶん気持ちは和らいだから」

「そうですか! よかったです」

 

それで私達は花火が終える時まで空を眺めていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

違う場所では海外勢の艦娘達が、

 

「ジャパンの夏……とてもビューティフルですね」

「そうね。ドイツでもこんなのはあまりないから見ていて飽きないわ」

「アメリカもそうね! とっても綺麗だわ!」

 

ウォースパイトが、ビスマルクが、アイオワがそれぞれ空を見上げて日本の花火を美しいと感じていた。

 

 

 

 

また違う場所では空母たちが、

 

「赤城さん、やはり日本の風物詩はいいものですね」

「そうですね、加賀さん。やはり……日本の花火はいいものです」

「そうですね赤城さん」

「多聞丸にも見せたかったなぁ……」

「翔鶴姉、また来年見に来ようね」

「そうね瑞鶴」

 

一航戦、二航戦、五航戦のみんなが騒いでいた。

 

 

 

 

またある海上の上では深海棲艦が襲ってこないか哨戒をしている川内の代わりに阿武隈率いる水雷戦隊が遠くから見える花火を見て、

 

「ここからでもちゃんと見えますね! みなさーん、周囲を警戒しながらも花火を楽しみましょうねー」

「「「はーい!」」」

 

阿武隈はそれで駆逐艦のみんなに指示をしながらも花火を見て笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

そして鎮守府で待機している面々も、

 

「おっ! 花火の音が聞こえてきたわね!」

「見えるかしら……?」

「いい音を鳴らしているわね」

 

それでせめて音だけでもと楽しもうとするものや寮の上に登って楽しんでいるものもいた。

 

 

 

 

そして駆逐艦のグループも少しお茶目を発揮していて、

 

「照明弾でも上げようか!」

「いやいやダメでしょ! せめて普通に花火セットを用意して普通に楽しもう!?」

 

皐月を筆頭にはしゃぐ子達が後を絶たないでいた。

それでもなんとかお姉さん組が場をなんとか宥めていたんだけどどうにかなりそうであった。

 

 

 

 

 

 

みんながみんな、撃ち上げられる花火を見上げて楽しんでいた。

そして一同は同じ考えをする。

それは、

 

『また来年もこの綺麗な花火を見るために生き残ろう』と……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花火が撃ち終わりだしたので私達もそろそろ撤収しようかという話になっていた。

そんな時に川内がその手に花火セットを持ってやってきていた。

そしてその目は爛々と輝いていて、

 

「提督……? これだけで終わりって訳じゃないでしょう? 私達の花火大会はまだまだこれからが本番だよ」

「そうか……それじゃ帰ったらみんなで盛大に花火をしようか」

「やっりい♪ 提督も話が分かるね!」

 

それで川内は喜んでいた。

後ろでは神通が眩暈を起こしそうになっているけどそこで那珂が「大丈夫? 神通ちゃん?」と支えていたのでまぁ大丈夫だろう。

陸奥も陸奥で、

 

「あまり火遊びはダメよ? 引火したら後が怖いんだから……」

 

そう言って過去を思い出しているのか少し表情が優れていなかった。

 

「まぁまぁ、節度を持ってやりましょうよ陸奥さん」

「そうだよ。こんな時間は貴重なんだから楽しまないと」

 

綾波と敷波にそう言って陸奥はしぶしぶだけど「そうね」と答えていた。

そして古鷹が私の腕を掴んで、

 

「さ、提督も早く鎮守府に戻りましょう」

「そうだな。あ、少し待ってくれ。榛名は楽しめていたか……?」

 

そこでさっきまで無言だった榛名に問いかけると、

 

《はい……とても、とても感動しました。やっぱり花火はいいものですね。榛名、感激です》

「そうか。それならよかった。それじゃ鎮守府に帰ったら私達で第二次花火大会でも開こうか」

「そうですね」

《はい!》

 

それで私達は鎮守府に帰ったらみんなで花火を出して楽しんだのであった。

だけど後で大淀達に怒られたのはしょうがないという事で諦めたのは別の話。

 

 

 




途中で別の艦娘の視点も何度か入れてみました。
時折こんな時もあるんだと思います。
リアルな花火大会には今年は行けなくて残念でしたけど家の部屋の窓から見えていたのでまぁよかったです。



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