【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0102話『ラムネはいかが?』

 

 

 

 

八月に迫る大規模作戦を前に私は備蓄をしながらも並行して今ある任務をやっていた。

その主な任務が『戦果拡張任務!「Z作戦」前段作戦』の攻略だ。

数日前に行った『サーモン海域北方』と『KW環礁沖海域』の同時攻略で喪失してしまった資材もそこそこに回復してきたためにZ作戦を行おうとしていた。

なにかって一度はクリアした海域だからこそ大規模作戦の前の手慣らしにやっておこうという話になったのだ。

別段戦果に関しては気にしてはいないんだけど少しでも深海棲艦の勢力を削ることが出来ればそれだけで役に立つことはできるという考えである。

 

「提督。中部海域に出ていた大淀(わたし)から離島棲姫の撃破に成功したという連絡が届きました」

「そうか。これで後は消化試合だな」

「そうですね。後の海域はどれも手強いですが今のうちの練度ならなんなくクリアできるものですから」

「よし。順次出撃してもらって海域を攻略してもらおう」

「はい。部隊の編成に入りますね」

 

それで大淀とともに『中部海域哨戒線』、『グアノ環礁沖海域』、『沖ノ島海域』へと出撃させる部隊を編成してそれらを攻略していった。

報告はすぐに帰ってきて各海域の攻略に成功したという。

 

「よし。これで任務とEO攻略ともにあらかた終わったし戦果関係のものはなくなったな」

「そうですね。資材の消費もそこそこで済みましたし後は大規模作戦開始まで待ちましょうか」

「そうだな。後は遠征部隊に頑張ってもらおうか」

「はい」

 

それで今日のやるべき任務も終わったので一息つこうと思う。

 

「大淀。少し外に出てくるからなにかあったら無線で連絡を入れてくれ」

「わかりました。お疲れ様でした提督。出すべき資料はまとめておきますね」

 

大淀にそう告げて執務室を後にした私はどこに向かおうかと考えていた。

畑にしても今は特にやるべきことは無いし……もしあっても武蔵達が勝手にやってくれるだろうと思っている。

もう畑仕事では私だけの仕事ではなくなって交代制なために言葉は悪いが替えは効くんだよな。

畑仕事が趣味になりつつある現状はどうにもできないのは耐えがたいけど他のみんなも畑仕事を楽しくやってくれているし時には私も休むのもありだろう。

 

次にすることと言えば艦娘達の直接のメンタルケアだけどこれといってうちの鎮守府の艦娘達はストレスを感じている子は少ない印象なんだよな。

春の大規模作戦で仲間になった六人もそれぞれの役割を持って頑張ってもらっているしな。

ガングートは演習で練度上げを頑張っているし、神威も改母となった今は畑仕事で張り切っているし、大鷹と海防艦の四人は鎮守府近海の対潜警戒をしょっちゅうしてもらっているしな。

特に対潜警戒のおかげで地元の漁師さん達が安心して漁に出れるという話をよく聞く。

択捉なんか漁師の人達に可愛がられているとかなんとか……。

もちろん占守と国後も一緒に可愛がられているのは言うまでもない事だ。

 

『お役に立てて嬉しいっしゅ!』と占守。

『べ、別に御礼なんていいわよ。で、でもありがとう……』と照れる国後。

『これも海防艦の務めですから!』と一番幼く見えるのに真面目な択捉。

『ふふふっ、頼もしいですね。わたしも、頑張らないと……!』とそんな三人を見守る大鷹。

そんな四人が今ではもう鎮守府近海のパトロール専門になってしまったので今では駆逐艦のみんなが出る機会が減ったのが唯一の心配かな……?

まぁいつか言ったと思うけど先制対潜が出来る子は限られているから燃費も軽い四人が警備に回ればかなり経費が浮くのも一つの利点でもあるんだよな。

 

他には……と色々と考えていると前方から大和が歩いてきた。

その恰好は水着姿のために鎮守府内の潜水艦の訓練用のプールでひと泳ぎでもしてきたのだろう。

 

「大和」

「あら提督。こんにちは」

「ああ、こんにちは。そんな大和はプールから戻ってきたところか?」

「はい。正式に水着の恰好が大本営から許されたのでこうして泳いできました。あのいつもの水の上に浮く感じと違って沈みながら泳ぐというのは不思議な気持ちになりますよね」

「それはわかるな。私も初めてこの世界に来て海の上で立っているという現象を味わった時は不思議な気持ちだったからな」

「そういえば忘れていましたけど提督と榛名さんはいきなり海の上に置き去りにされていたんでしたね」

《はい》

「そうだな。その時はまだ榛名が眠りについていたから妖精さんだけが私の助けの綱だったな」

 

大和にそう聞かれたので榛名と一緒に当時を思い出しながら大和に話を聞かせる。

 

「……思えばこの世界に来たのはなにかしらの世界の意思だったのでしょうか……?」

「それはわからない。だけど一つだけ確かな事があるな」

「提督、それは……?」

《榛名も聞きたいです提督》

 

大和と榛名に催促されたので私は素直に答えることにした。

 

「それはみんなに実際にこうして会えたことだな。こんな奇跡はなかなかないだろう……? だから嬉しいんだ」

「そう、ですね……。大和も提督とこうして普通に話ができるのも今でも夢なのではないかと錯覚する事がたまにありますから」

《榛名も大和さんと同じ気持ちです。そして提督の気持ちにも触れられる機会が何度もあって私達は真に家族のような関係になれたんですよね》

「また、恥ずかしいけど嬉しいような事を言ってくれるな二人とも」

 

それで少し恥ずかしくなって頭を掻いていると、

 

「ふふ……提督のそういう仕草を見れるのも役得の一つですね。この世界に来るまでは一方通行な気持ちでしたから。いつか提督自身の本当の姿も見れたら嬉しいですね」

「はははっ。私の本当の姿なんて見たらガングート達は驚くだろうな」

《そうですね。提督の本当の姿を知っているのはこの世界に来る前までの者しか知りませんからね》

 

それでついつい大和と榛名と話が弾んでしまっている私達。

そんな時に少し話し込んだために暑さも相まって喉が渇いてきた。

そんな私を大和がすぐに気づいたのか持っていたバスケットの中から一本ラムネを取り出して、

 

「提督。大和印のラムネです。一本いかがですか?」

「ありがとう、いただくよ」

 

それで大和にラムネをもらってすぐに口に含む。

炭酸のいい感じが伝わってきてすぐに喉が潤う。

 

「うん。やっぱり大和のラムネはうまいな」

「ありがとうございます。あ、そうです。でしたらこれから提督もひと泳ぎしませんか? きっと今も泳いでる子達も喜びますよ」

「そうか?」

「はい」

 

大和がそう頷いていたので、

 

「わかった。それじゃ榛名。水着に着替えてこようか」

《はい、提督》

 

それですぐに水着に着替えて私はみんなと一緒にプールを楽しんだのであった。

 

 

 

 




前半はリアルな近況の攻略話で後半は大和を出してみました。
アニメのような過激な恰好の水着じゃないから可愛いですよね大和。
ラムネが飲みたくなってきました。




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