【完結】戦艦榛名に憑依してしまった提督の話。   作:炎の剣製

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更新します。


0010話『会談』

 

 

 

久保提督と柳葉大将さんを会議室へと案内している道中で、

 

「しかし、榛名提督…」

「はい。なんでしょうか?」

「君はこの世界に来てからまだそんなに日数が経っていないと伺うが、寂しいという気持ちにはならないのかね? もとの世界には家族などもいたのだろう?」

 

柳葉大将さんがそう言って私の事を心配してくれていた。

やはり大将という地位を持っているのだからこのくらいはお手の物なのだろう。

 

「はい。ですがもう戻れないのは分かっていますから大体は吹っ切れています。

それに艦娘達が一緒にいてくれますから寂しくはありませんよ」

 

そう言って私の隣を歩く大淀に目を向けた。

大淀はそれで笑顔になっていた。

 

「…そうか。いらぬ心配だったようだな」

「ですが心遣いだけは受け取っておきます」

「それならこちらも心が休まるよ」

 

そんな話をしながらも私達は会議室へと到着した。

そこで大淀が中を確認するために扉をノックする。

 

「私? 会議用の資料やその他の物は準備は出来ていますか…?」

『はい、私。大丈夫ですよ。もう入ってこられても大丈夫です』

 

そんな不思議なやりとりがされて久保提督と柳葉大将さんは少し目を丸くしていた。

そして、

 

「…榛名提督。その、なんだ? 今のやり取りはなんだね…?」

「あ、あはは。複雑な話なのですがうちには大淀が二人いまして…」

「そ、そうなのか…。しかし、大本営では丁重な扱いをされている大淀を二人も持つとは…」

 

それで柳葉大将さんはぶつぶつと考え出してしまっていた。

それで今は話しかけない方がいいと思って久保提督へとその辺を聞いてみると、

 

「はい。通常、鎮守府には大淀という艦娘は基本は任務を私達に伝えるだけの存在として派遣されるだけなのです。

…上級の提督になってくると戦闘でも運用できるという話ですが、それと同時に手続きが大変らしいんですよ。

大淀という艦娘は先ほど伝えた通り大本営から派遣されてくるだけですから、その個人での鎮守府に配属となると上の判断に迫られるそうで…」

「なるほど…」

 

それを聞いて納得した。

この世界では大淀という個体の艦娘はやはり大本営直轄なんだなと…。

二次創作世界では色々と黒幕だとか実は深海棲艦とも内通して繋がっているとか酷い言われようだからな。

それはともかく、

 

「それじゃこの世界でこれからやっていくにはやっぱり色々と任務とかの手続きが必要なんですか?」

「いえ、大淀という艦娘も派遣されない鎮守府もありますので任務や情報伝達などの手段は電文で送られてくる仕様が一般的です。

げんにうちには大淀はまだいませんし…。ですから本格的に協力関係になりましたら電文が送られてくる機械が大本営から送られてくるかと思います」

「そうですか。説明ありがとうございます」

 

久保提督とそんなやり取りをしていたら中の準備が整ったのだろう、大淀二人が並んでどうぞと言って私達は会議室へと入っていった。

私と対面する形で久保提督と柳葉大将さんが着席する形になり、

 

「…それでは会談を始めましょうか」

「そうだな。まずいいかね? この鎮守府だがインフラ整備などはどういった状況だね?」

「いきなり痛いところを突いてきますね。

はい、おそらくそちらが思っている通り電気、ガス、水…他にも消耗品などが確実に不足していますね。

電気に関しましては自家発電施設がありますからなんとか鎮守府内の電気関係のものは使えますが、やはり水とガスが使えない事によってトイレやお風呂施設と言った衛生面での分野が使えないのは難点です。

他にもまだ食料などは一か月は食せる分はありますが制限していかないとやり繰りできない程に切迫しています。

それによって今はまだ我慢できていますが、そろそろ艦娘達の不満は限界に近いものがありますね」

 

私がその事を伝えると「やはり…」と言った声が二人から聞こえてきた。

 

「あい分かった。その件に関してはこちらで大本営へと掛け合ってみよう。

すぐにとはいかないが返事がもらえればインフラ整備に着工できる準備はしよう。

他にも酒保なども最低限の準備はさせよう。引継ぎに関してはこの鎮守府には当然明石もいるのだろう?

できれば後でそれ関係で話がしたい。会わせてもらっても構わないか?」

「わかりました。後で明石に話をつけておきます。

…それと、そうですか。ありがたい話です。ありがとうございます」

 

これでインフラ関係は解決したことになる。

次は何が来ると思っていると、

 

「さて、では次だが君の世界とこちらの世界の任務内容が違いがないか確かめたいのだが、いいかな…?」

「わかりました。…大淀、頼む」

「はい提督」

 

それで大淀は今まで私がこなしてきた任務を簡易的にまとめた資料の束を柳葉大将さんに渡す。

柳葉大将はそれを凝視しながらも一枚、また一枚と捲っていく度にどんどんと驚きの表情になっていって最後まで捲り終えたのだろう。

少し疲れた表情をしながら、

 

「…確かに確認した。おそらく我らの世界とは概ね同じ内容だった」

「そうですか。よかったです」

「…しかし、つい最近大本営が発表した鈴谷改二と鈴谷航改二の任務ももうクリアしているとは驚きだ。

鈴谷航改二に第二次改装できる練度の要求は極めて高いものがある。

さらには大本営から賞与として貰えるだろういくつかの勲章で作成できる改装設計図もその数分必要になってくる。

君はその分を必要とされるものを全部揃えることが出来たという事だな?」

「はい」

「そうか…」

 

それで柳葉大将さんは少し考え込んで、そしてある事を私に要求してきた。

 

「この資料とは別にこの鎮守府に在籍している艦娘の練度表などはあるかね?

できればこの任務表と一緒に大本営へと提出させたいと思っているのだが…」

「わかりました。大淀、用意のほどは…?」

「抜かりはありません」

 

それで大淀は任務表とは別に艦娘練度表を柳葉大将へと渡した。

そして今度は一緒に見てもいいと思われたのだろう久保提督も一緒に中身を拝見している。

しばらくして私の鎮守府の艦娘達の練度も把握できたのだろう口をあんぐりと開けるという状態になっていた。

 

「…すごいな。こうして数字に現しただけでも分かる高練度の艦娘だらけだな」

「はい。驚きました」

 

二人はそれで少しの間、驚愕の顔が治らなかった。

しばししてその資料を後ろで黙って立っていた蒼龍へと渡していた。

でも蒼龍も興味を持ったのか練度表を覗いていたが顔には出さないが小声で「うわっ、すごい…」と呟いていたのは印象的だった。

 

「よし。では大方の物は手に入った。だからもう何日か我慢してもらっても構わないかね? いい返事ができるように努力はしよう」

「お願いします」

「それで他にはなにかあるかね…?」

「そうですね…」

 

それで後は細々とした話などをした後、最後に、

 

「さて、それでは最後に…榛名提督。

君の世界ではどうだったかは分からないがこの世界でもこの日本のために深海棲艦と戦い尽力してくれる覚悟はあるかね…?」

「はい。どこまでお力添えできるかわかりませんが、もう私はこの世界の住人として生きていくことを決めています。ですからよろしくお願いします」

 

そうして私と柳葉大将は握手を交わした。

 

「そして君はこの世界に来る前までは一般人だったと聞く。…その落ち着きようからにわかには信じられないがな。

よってこの世界での常識を学ぶ必要がある。君の世界の常識との認識のズレを治すためにしばらく久保少佐が君の教育係に抜擢された。

…なぁに、心配はいらない。まだ提督としては新米だがこれでも今年の海軍学校では首席で卒業した実力がある。きっと君の力になってくれるだろう」

「という訳です。当分の間ですがよろしくお願いしますね、榛名提督」

「ありがとうございます」

 

そうして会談は終わって柳葉提督は帰りに明石と少し話をした後に自身の鎮守府へと帰っていった。

久保提督も色々と準備があるようで少ししてから帰っていった。

私は二人が帰っていった後に、こんなに真面目に話をする機会はなかったので久しぶりに疲れてしまっていた…。

 

 




こんな感じに会談も終わり次回から本格的に動こうと思います。

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