生徒会室のドアをノックする。休日登校に加えてコレだ、慣れないことはしたくないね
「どなたー?」
「二年四組の咲口です」
「あ、神菜。おはよー。入って」
「失礼します」
部屋に入ると、奥知さんと俊一、生徒会長の殿村明里さんが既にいた。俊一の隣には見慣れない男子。
「初めまして、俺は嵐山匠真。椎那の彼氏だ」
えっ、あいつ彼氏いたの
「ついでに言うと俺の親友な」
学年で言えば私だけ二年生で、皆三年生か。一応敬語解除の許可は貰っておいたけど、この面子なら正直要らなかったかもね
「じゃあ改めて。咲口さんの妹、一年六組、咲口椎那さんが行方不明になった件について、情報共有をしましょう」
「まず、EGG-75っていうゲーム機でVRMMOのソフト、ハウンドキャットを起動させたら椎那ちゃんが消えた」
「警察は余りに非現実的すぎて捜索届を『形だけ』受理しただけで、動こうとしてない。私の親は海外だし、正直頼れない」
「で、ヒントがハウンドキャットにあると思ってプレイしてるんだよね」
「……随分と大胆な賭けに出たな」
「藁にもすがる思いってやつだね」
「ハウンドキャットのホームページのキャラクター紹介ページを印刷してきたわ」
なんでまた
「コラボ先や開発企業の社長なんかをモデリングしたキャラなんかもありがちだもんね」
「つまり、椎那がモデルになったキャラがいるかもしれないってこと?」
「なるほどな。でも見た感じ『椎那ちゃんに似てる』印象のキャラはいないぞ」
「だーよねー」
「いや美麻は椎那さん知らないでしょ」
「メインNPCで話進めてきてるけど、モブキャラだったら椎那を探すのはキツイな」
「そうなったらSNSパワーを頼るしかない」
まぁそうかもしれないけどさ
「ところでこの『キャサリン』ってのは何かしら?」
「ラスボスだな。グラフィックはネタバレ防止で公開されてないみたいだが」
すごく嫌な予感がする。考えたくもない未来だ。
取り込まれた先がキャサリンなら、ストーリー上私達は椎那と戦うことになる
そうなったら私は誰と戦うことになるの?
「神菜?」
「大丈夫、ちょっと不安になっただけ」
「……次行くわね。現実での話よ」
会長の話を纏めるとこうなる。ここにいる5人以外、椎那が消えたことに関して騒ぎ立てるような様子は誰一人見られなかった。ここにはいないけど、椎那の親友、橋田みよちゃんでさえも心配するどころかまるで超絶他人事のような素振りだそうだ。
『椎那が行方不明になったのは事実だけど、荒立てて探すような事じゃない』というわけのわからない認識ってことは、現実世界では椎那を探すことは非常に困難だってことだよね
「とりあえずハウンドキャットをやってない私と嵐山は聞きこみ調査を、美麻達はハウンドキャットでモデリングされたかもしれないキャラを探しましょう」
「キャラを?」
「性格、雰囲気、ルックス……なんでもいい。ゲームに取り込まれたってことは『椎那っぽさ』を感じるキャラがいると思うの」
「なるほど」
「それじゃあ今日の会合はここまで。みんな、頑張って」
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「収穫はほぼゼロ、か」
アダラートの森最深部、ロッジにて情報を整理する
「少なくともアニスが椎那ちゃんってことはなさそうだね」
「そだね。でも、とりあえず今は――」
アダラートの森保護計画に集中しないとね
To be continued