04 辿り着けアダラートの森
森へ向かうには乗馬するしかなく、近場で捕まえた馬に乗ることになった
「それにしても黒スーツで乗馬って何か変だよな」
「言わないでよ阿修羅。アンタまだマシじゃん。あたし達なんてスカートだよ?」
らぶしぃの言うとおり、上半身は男性アバターと同じだけど、女性アバターは黒のミニのプリーツスカート、レザー調のニーハイブーツっていう、制作陣の悪意伝わるコスチューム。阿修羅を先頭に三角形を描くように進んでいるのは、スカートが捲れて中身が見えないようにするためでもある
「ところで阿修羅、クラススキルってなに?カンナ知ってる?」
「ううん、知らない」
「説明しよう!クラススキルってのは自分の身体の何かを消すことなのだ!」
先の戦闘で例えると、阿修羅は気配を文字通り『消した』から、背後に周り込めたというわけだ
「消せるって言っても何でも消せるわけじゃない。ジャマー、バーサク、トリガー……消せるものはそのクラスごとに決まってる」
「なるほど……覚えとこ」
奥知さんとはあまり交流はないけど、意外としっかり者なのかな?
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オイラックス村から馬に乗ること20分。森の入り口に辿り着いた。立て看板には『この先徒歩厳守』と書かれており、かなり広い厩舎が設けられている
「なんでこんなめんどくさいことを……」
「森の景色を楽しませるため……違うな、他の目的があるかも」
「例えば?」
「わかんないけど…森の景観の保全、とか?」
「おーい女性陣!置いてくぞー」
「あ、待って待って」
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「舗道はないの?」
「あったじゃん、らぶしぃ。……入ってすぐに」
「カンナ、それただの入口や」
そう、入ってすぐの所には小休憩ができそうなスペースと舗道があった。でも、そこを過ぎるとあとは全部人の手の行き届いていない獣道で、安全な徒歩ルートを探すことすら困難だ
「あたしもうヘトヘトなんだけど……」
「どっかで休めねーかな……って、あれは池か?」
「二人共、静かに」
俊一が見つけた池、大きさ的には湖だけど、そこから一人の女性が現れた
羊の角のようなものが生え腰まである白く長い髪、吸い込まれそうなほど透き通った落ち着いた赤い瞳……アルビノって言うんだっけ。そしてその身に纏うローブのようなものさえ神々しく見える。間違いない、彼女こそが『精霊』だ
「突然失礼致します。……貴女が『精霊』ですか?」
精一杯、綺麗な言葉で対応する
「あら、カッツェ…じゃなくて、ポチの部下の方?」
「はい。私達三人がそうです」
「初めまして、私はアニス。アニス・リアルローズ。お察しの通り、『森の精霊』よ」
両手を広げ、子供みたいに無邪気に笑ったアニス。とても愛らしいと思った
「貴女達三名を歓迎するわ! でも、お願いがあるの」
「お願い?」
「最近この森を狙わんとする山賊がいるの。彼らを追い払い、真の安寧をこの森に与えてほしいの」
「了解です」
振り返り阿修羅とらぶしぃに目線を送る。同意はもらえた
詳しく話を聞くと、この泉の付近に山賊がアジトを構えていて、森林伐採などを誰の許可もなくやろうとしているとのこと。そいつらを懲らしめたらミッションクリアってことだ
「私は奥にあるロッジにいるわ。貴女達も後で来てね」
「はい、ありがとうございます」
「……綺麗な人」
らぶしぃ……あんた完全に惚れちゃったね。まぁそれ位魅力的な人だったのは否定しない
「さて、作戦だけどどうしようか」
「正面突破しかないでしょ」
「わお」
大胆な人なのね、奥知さん
「阿修羅が時間を止めてる間にあたしとカンナでフルボッコ。これが理想」
実際あの氷結はかなりの脅威。私のグロウ・ブーストもちゃんと使えばかなり強いはず
といったところで一度終了。現実世界の時間がもう23時だったからね。
アダラートの森の保護。椎那の捜索と共に進めなきゃいけないとなると、私は……私達はまだスタートラインにすら立っていなかったのかな
今はただ、襲い来る睡魔に囚われるとしよう
To be continued...