ハウンドキャット   作:凪紗わお

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02 学べチュートリアル

 

「ゲームを開始する前にプレイヤー登録を行います」

 

無機質な女性の声。あまり好きじゃない

 

登録するって言っても名前とアバターだけ。名前は下の名前をカタカタにした「カンナ」で、アバター……どうしよ

 

「最初から作ることもできますが、プレイヤーの姿を再現したものを作ることができます」

 

いいじゃんそれ。あ、でもそのままだとつまんないし、ポニーテールに纏めて髪の色を緋色に、瞳を琥珀色に。うん、いいじゃん

 

「新人エージェント、カンナ。登録は正常に完了しました。心ゆくまでハウンドキャットをお楽しみください」

 

へいへい

 

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「特殊部隊ハウンドキャットへようこそ!」

 

黒い背景に浮かぶ猫のぬいぐるみが陽気に語る

 

「僕の名前はポチ!犬みたいでしょ」

 

ぬいぐるみだし表情が変わらないからわからないけど、ケラケラ笑うって事はそんなに気にしてないのかな

 

「ご存知の通り、数年前キャサリンって人がこの世界を襲ったんだ。おかげで街中壊滅状態さ!…そこで君ってわけ」

 

ゲームのホームページには、プレイヤーであるハウンドキャットの新人エージェントは、10種類以上の『アビリティ』と呼ばれる特殊能力を持つ、ゲーム内の世界では世界に3割ほど存在する新型の人類らしい

 

「君のそのアビリティでこの世界を救って欲しい!」

 

だからこそプレイヤーは人類の希望のような存在になるのだろう。でも。

 

「さあ…いよいよ君の冒険が始まるよ」

 

――私が救いたいのは、たった一人の妹なの

 

「おっと、その前にキミについてもう少し知りたいな。君が希望するクラスと、所有してるアビリティを教えてくれるかい?」

 

クラス、というのはRPGでありがちな「戦士」「魔法使い」「僧侶」みたいなやつ。

 

ハウンドキャットに於いては、

近接戦闘が主体の「バーサク」

魔法や銃などの遠距離攻撃が主体の「トリガー」

攻撃技が少ない代わりにトラップ生成や回復といったサポート技が豊富な「ジャマー」の3つ。

 

私は前線で戦いたいからバーサクにしようかな

 

そうなるとアビリティは相性が良さそうな『グロウ・ブースト』がいいと思う。三段階で怪力と音速を出す、シンプルな筋力増強タイプの能力だけど、二段階目以降は頭身が伸びるらしい。……おっぱいも大きくなるかな?

 

なんにせよようやくスタートするらしい。ポチが消え、画面が明るくなった

 

 

「よお、カンナ!」

 

幸先悪いな、私。いきなりチャラ男に絡まれた。頭上にコントローラーのマークと「阿修羅」って出てるから、そういう名前のプレイヤーなのだろう

 

「えっと、どなたですか?」

 

あ、ボイチャ標準装備なんだ

 

「俺だよ、俺。上月俊一だよ」

 

「なんだ俊一か」

 

現実世界との差は……結構ある。茶髪の天パは青髪のツンツン頭に、瞳の色が一緒なのは少し腹が立つ。体格についてもちょっと小さくなった気がする

 

「一応チュートリアルの続きやっとくか?」

 

「うん、お願い」

 

「操作方法は至ってシンプル。動きたいように体を動かせばこの世界でも動ける。まあ多少のアシストは入るけどな」

 

EGG-75は従来のVRゲーム機のようなモーションセンサーによる画面の傾きや動きとコントローラーや指先のセンサーによる動きの読み取りではなく、脳が体に送る命令を読み取りその動きをゲームに反映する。だから従来品に比べ数倍のレスポンスとよりリアルな仮想現実体験をする試みを成功させた唯一のゲーム機だと言われている。噂では触感や匂い、温暖差までレスポンスするとか

 

「で、アビリティの発動条件だが、アビリティの名前を言えばいい」

 

「それだけ?」

 

「それだけ」

 

「グロウ・ブースト」

 

「おわ!?」

 

渾身の回し蹴りを避けられた。あっちのアシストが効いてるのかな

 

そしてわかりやすい変化。体が軽いし蒸気みたいなのが出てる。グロウ・ブーストが発動してるよーって合図だろうか

 

「何にせよこれで椎那を探せるね」

 

「ああ。そのためにもまずは――」

 

辺境の地、『オイラックス村』の探索から始めないと




To be continued...

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