01 探せ妹
「特殊部隊ハウンドキャットへようこそ!」
黒い背景に浮かぶ猫のぬいぐるみが陽気に語る
「僕の名前はポチ!犬みたいでしょ」
ああ五月蝿い。これだからチュートリアルは飛ばしたいんだ
「ご存知の通り、数年前キャサリンって人がこの世界を襲ったんだ。おかげで街中壊滅状態さ!…そこで君ってわけ」
初耳ですが何か?猫に殺意を覚えたのは初めてかも
「君のそのアビリティでこの世界を救って欲しい!」
私が…咲口神菜が救いたいものは、世界なんかじゃない
「さあ…いよいよ君の冒険が始まるよ」
たった一人の妹なの
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「ハウンドキャット?」
幼馴染のイケメン君、上月俊一のベッドで横になってそのゲームの名を口にする
「ああ、ガイアス社の最新ゲームなんだ。今流行りのVRMMOってやつ」
嬉嬉としてゲームを語る俊一。勉強の方は私がいないとダメなくせに、既にプロゲーマーへの道を歩みかけている。
「私もそれのテスターなんだよ!」
妹の椎那。私より胸があり私より社交的。なんだろうこの敗北感。家事とかも全部してくれるし…今のところ身長でしか勝ててない
「それじゃあ早速!」
「おう」
EGG-75という卵型の椅子のようなゲーム機に乗り専用のチップをはめ込み、二人同時に叫ぶ。その姿はまるで兄妹のようで微笑ましい
……私が椎那の姉なんだけど
『ハウンド・イン!』
椎那がEGG-75を残して消えた。……って消えた!?最近のゲームは体ごとゲームの世界に行くの!?
「ちょっと、俊一!」
「んー?」
「椎那が…椎那が!!」
私の必死な呼び掛けに何かを察したらしい俊一が、EGG-75から降りてこちらを見る
「…おい神菜。椎那ちゃんは?」
「わかんない…それ付けたら消えちゃった…」
「とりあえず警察に捜索願を出そう」
「う、うん」
警察署で事情を説明して捜索願を提出。ゲームを起動したら消えていたなんてそんな使い古されたライトノベルの設定みたいなことが現実となっているわけで、色々と勘ぐられたりお巫山戯で通報するなと叱られた。こっちは大真面目なのに。まぁ受理されただけマシかもしれないけど
家に帰って、コーヒーを飲んで落ち着こうとしても落ち着けなかった
なぜ椎那だけが。妹はどこへ行ったのか。どうやったら帰ってくるのか……思考だけがぐるぐると頭の中で暴れている
こんな日に限って俊一は忙しそうだし、両親は海外出張で家を空けてるしで私はただでさえ広いこの家をさらに広く感じていた
「あ、そうだ」
どうしてこんな簡単な捜索方法を思いつかなかったんだ、私は!
携帯を取り出し俊一の番号を探す
「もしもし、俊一!?今来れる!?」
『いいけど、どうしたんだよ?』
「見つけたの!私達にしかできない椎那の捜索方法を!」
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「話を聞かせてくれ、神菜」
「まずは状況を整理しよ。VRMMOのハウンドキャットを起動させたら椎那が消えちゃったんだよね」
「ああ、簡単にいえばそうなるな」
「とんでもない考察だけど、椎那はゲームシステムに飲まれちゃったんじゃないかな」
「つまり、こういう事だな?」
『椎那を探すためにハウンドキャットをやろう』
「ハモったけど、そういうことだよ」
「そうと決まれば!」
「うん!」
『ハウンド・イン!』
To be continued...