FGOってデータが引き継げないときっとこんな感じ 作:ピリの唄
きっとこうなる。
「サーヴァント界最大のヒットナンバーを、聴かせてあげる!」
槍を地面に突き立て、エリザベートは構え、立香は両手で耳を全力で塞ぐ。
そしてマシュたちに耳を塞ぐように言う前に
「『鮮血魔嬢=バートリ・エルジェーベト=』!!」
エリザベートの宝具が冬木の街の聖なる場所である教会で解放される。
初めて宝具の解放を見たマシュやオルガマリーと違い、記憶を取り戻した立香はこの宝具のことも知っていた。
監禁城チェイテを改造してとんでもないサイズのアンプとして召喚する。
そして槍をマイクに見立てて熱唱するのだ。
その容姿と同じように綺麗な歌声が霊基に響く。
・・・・・・物理的に。
「ブタども~!ありがと~っ!!」
ただし、エリザベート本人は周りにダメージを与えていることに気付いていない。
何せ、ハロウィンでもキャスターとなったうえでバージョンアップさせたチェイテ城で歌っていたからだ。
誰かこの娘の暴走を止めて。
その歌をネロ皇帝だけは誉めていたけれど、その他のサーヴァントたちはエミヤやクロエに耳栓の投影を依頼していたことをエリザベートたちは知らない。
そもそも、以前の人理修復で初めてエリザベートと出会った時にエミヤに
「マスター、彼女が宝具を使うときに使いたまえ。死にたくなければな」
と言って渡して貰ったのが投影された耳栓だったために、味方の被害はほとんどなかった(マシュや味方になってくれたはぐれサーヴァントたち全員に配っていたらしい)。外から観測していたDr. ロマンも一時的に通信を切ることにより無事だった。
だけど今回は耳を塞ぐことができたのは立香のみ。
・・・・・・残念ながらそれでも走馬灯を見ているのかもしれないが。
そしてアンプ化チェイテ城の後ろに居たが距離が近かったマシュもデミ・サーヴァントになったとはいえ、耳を塞ぐことが出来ず目を回している。
所長に至っては倒れている。反応が全くない。
カルデアとの通信も取れなくなっている。
「見てみなさい、子ジカ。私のライブが聞こえたからかしら。観客がどんどん集まって来るわ!!」
音に対して集まって来たのだと声を大にして言いたい。しかもサーヴァントや人ではなく知恵の無い怪物だと言いたい。
「アンコールにお答えしないとアイドルとは言えないわよね!?」
誰もアンコールなどしていない。
しかしエリザベートの宝具は今の立香にとっては魔力消費が多いために疲労状態で何も言うことができない。
誰も彼女を止めることは出来ない。
無言を肯定と受け取ったのか
「アンコールいくわよ!聞き惚れなさい!!」
エリザベートの地獄のステージin冬木教会はまだまだ続く。
敵性サーヴァントが近寄ってくることもなく、怪物たちを相手に立香の魔力を消費して自己満足のコンサートは終わらない。観客である怪物が寄ってくる限り終わらない。
立香の意識は真っ暗になった。
そしてそこそこ遠くの場所から立香たちに同情の目線を送るフードを被っている男は、耳を塞ぎながら呟いた。
「さて、どうすっかねー」
彼は彼女のライブが終わるまで近づいて来ることはなかった。
さあ、特異点攻略を続けよう(復讐者風)。
結論、冬木だけでも攻略します。
冬木以外の特異点は余裕があればで。