FGOってデータが引き継げないときっとこんな感じ 作:ピリの唄
知ってます?この原作、SNじゃないんだぜ?
もちろんカーニバルでファンタズムな世界でもない。
あ、ホロウでもないよ?
「・・・・・・冬木ってこんなところがあったんだ」
「この家は木で造られています。これが日本家屋なんですね」
カルデアから出たことのないマシュには珍しいのだろう。
だが、日本人である立香にとってもここまで立派な日本家屋は、京都や奈良などの古き良き街でしか知らない。
「まあ、入ってくれ」
「お、おじゃまします」
まさかカルデアに来てから同年代の男子の家におじゃますることになるとは思ってもみなかった。
やっぱり立香の知る知識は無いものと考える方がいいだろう。
自分の常識が、知識が変わっていくことは別に何の問題ない。だって歴代の男性と教わっていた偉人が何人も女性になっていたりするもの。
囚われ続ける必要はない。
「さぁ、始めるぞアーチャー!レシピの貯蔵は充分か」
「フ、貴様は誰に聞いている。それよりも貴様が心配するべきは食料の貯蔵だ」
「・・・・・・確かに。セイバーも食べるけど人が増えてた」
目の前で料理勝負に夢中になっている二人のせいで立香の中にここが特異点ではなく日常なのかもしれないと思う気持ちが沸き上がってくる。
「どれだけ作ってもかまいません。全て残すことなく美味しくいただきましょう」
「その台詞はレディとしてどうかと思うわ」
「私たちの分も残るよね?」
「その先輩、自分たちの食べる分はしっかりと皿に取ってください。きっと残らない気がしますから」
マシュの中の英霊が美味しい食べ物は王に取られて無くなると訴えていた。
立香の経験もアルトリアの食事の量を知っていた。
サンタになるとターキーで霊基を再臨するようなサーヴァント。その胃袋はこの特異点でも健在である。
だが、最初にエリちゃんを召喚したときに諦めたエミヤの料理、それが食べられるのなら取られるわけにはいかない。
前回から続く記憶のお陰で既にエミヤによる餌付けが済んでいる立香。料理の奪い合いに参加する気満々だった。
***
衛宮士郎にとってアーチャーは認められない存在だ。
アーチャーは理想の存在であるが、その理想そのものを否定する存在だからだ。
だからこそ敗けを認める訳にはいかない。
「でもなぁ」
料理の技術は年季がモノをいう。
衛宮士郎は調理実習で二年間未だ無敗とはいっても(本人曰く)料理は趣味じゃなくて、する人がいなかったから仕方なく身に付けたもの。
確実に趣味(と開き直っている)だろうアーチャーには技術で勝てないだろう。
一流シェフとメル友百余名とか言っていたから尚更に。
「だからって俺のやることは変わらないか」
自分よりも料理が上手な人は大勢いる。
洋食は桜の方が上手くて、和食でもその内追い付かれそうだ。
中華は遠坂に勝てるイメージが思い浮かばない。
だったら一番得意な和食で、今の自分に作れる最高の一皿を作る。
敵は常に最高の状態の自分自身だ。
アーチャーを意識し過ぎたせいで上手く作れませんでした、じゃ許されない。
「それじゃ、先ずは下ごしらえからかな」
行動に移した士郎の手元からは食欲をそそるいい匂いが漂っていた。
***
「これはなんの拷問だろう・・・・・・」
エミヤとリリィによる料理を待っているのが本当に辛い。
二人の手元からいい匂いが漂って来るのだ。
アルトリアなど何回か台所を覗きこみ、
「シロウ、その、味見役は必要ではないですか?」
と言って追い出されていた。
マシュもいい匂いでお腹を鳴らし、顔を赤くしていた。
そのー、二人とも出来れば早く作って下さい。
匂いでお腹が鳴りそうなのですけど。
マシュは既に鳴っちゃったし。
グロッキー所長も意識が現実に戻りそうになるほどのいい匂い。
何故か身に付いている対毒スキル(仮)が匂い全てを防がなくて良かったけど、餌付けされた身にはこの待ち時間は辛いです。
実はタイトルが疑問文の理由は食べてないから。
書いていてお腹がくうくうなりました。