問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ? 作:ちゃるもん
なんか随分厳しいですが、僕のところのペストちゃんはこれだと割り切ってくださしあ。
では、どうぞ。
──―箱庭五四五四五外門舞台区画・〝星海の石碑〟展示回廊入場口。
「で? どーゆうつもりなの?」
「ふぇ?」
カフェテラスの端っこで、小さい両頬に黄金芋のタルトを詰め込んでいたリンは、突然の質問に手を止めた。話しかけたペストは、そんなリンの様子に興味が無いのか紅茶の入ったカップを傾けた。
ペストとリンの二人は今、ジンたちと二手に分かれていた。
ジン、サンドラ、殿下、義仁の四人は展示回廊の中の現場を確認しに行き、ペストとリンの二人は入口で待機。
しかしそれでは暇だからと、〝サラマンドラ〟名物の黄金芋のタルトを食べていたのだ。
「そうねぇ……取り敢えずそのナイフは仕舞いなさいな。露骨すぎるて笑っちゃいそう」
くすくすと、小馬鹿にするようにペストは笑う。その言葉にリンはおどけたように返した。
「──―流石はペストちゃん! 殺気は漏らしてないつもりなのになー」
「ねえ、質問に答える頭もないのかしら?」
──―ヒュゥ、と首筋を鋭いナイフが撫でた。
頸動脈の薄皮をそっとなぞるような絶妙な力加減。
知覚すら出来なかった一撃。しかし、危害を加えられたというのに何愚わぬ顔で紅茶を嗜むペスト。実力では、己が上だと分かっていても、その自信は徐々に疑問へと変わって行った。
「悲しいわね……。ちょっとした挑発じゃない。 底が知れるわよ? それともあれかしら、自分のペースに持っていけないのが悔しい、とか?」
「そんなわけないじゃーん。いまのは軽い挨拶。それで、私たちの目的、だっけ?」
妙な嫌悪感。リンは魔王であった頃のペストを知っている。右も左も分からない。ただ、殺さんとする具現……とでも言えばいいのか。厄介払いをしたいようにも見えた、ただの格下。
「は? え、本当に質問の意図を理解してなかったの? やっぱり、ジンについて行くのが今のところ最適解かしら……」
「え、え」
「目的もなにも、ジンとサンドラを抜きに来たんでしょ。随分回りくどいことしてるみたいだけど。私はおまけって所かしら? はぁ……少し期待してた私が馬鹿みたい。これじゃただの脳筋集団ね」
待て、待ってくれとリンは願う。何がどうなっている。私たちの情報が一体どこから漏れた?
「まあそうよねぇ、かの〝ソロモンの霊王〟が恩恵を分け与える為に用意した試練の一つ──―〝アラビアンナイト〟をクリアした血族。その血を受け継いでるのかあの子の頭の回転は下手な魔王なんかじゃ太刀打ちできない。さらには、〝精霊使役者〟なんて化け物恩恵を持ってるんですもの。魔王の使役、封印に特化した恩恵。あなた達からすれば是が非でも手に入れたいわよねぇ。
ね? 魔王連盟さん?」
お読みいただきありがとうございます。
力関係はペストの方が下ですが、予想のつけようがないナニカって怖いですよねぇ。
では、また次回〜