問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

92 / 121
投稿です。

見回りなので引き延ばし回
次回から北側へ。内容がぽっかり抜けてるのでかなり端折ります。

では、どうぞ〜


第92話 お仕事

「呼んだのは他でもない。招集会についてや」

「は、はあ」

「義仁はんは基本的に好きにしてくれといたらええ。あの馬鹿を一度会場に連れて行ってさえくれればあとは自由や。味覚が無いのもリリさんに聞いたから、名所巡りのツアーみたいなのを用意することも出来るから気軽に言ってくれ」

「そ、そうですか。まあ、味はかなり濃く作って貰えれば多少は感じるんのでそこまで悲観してませんし、料理の楽しみ方は他にもあるので特に苦はないのですが……」

「そう言うてくれると少し救われるわ。〝アンダーウッド〟じゃ、僕に付き合ってもらってたから少し負い目を感じてたんよ」

「あの、そろそろ離してあげません?」

「無理や……。あの真っ赤な顔見てみい。離したが最後……説教から始まるお仕事フルコースが来るのは目に見えとるで」

 

義仁が現在居るのは元白夜叉の仕事場。現蛟劉の仕事場である〝サウザンドアイズ〟の支店。その中の客間にいる。上座には蛟劉が座り、その対面に義仁だ。そして、何故か水の玉に閉じ込められた女性店員のがいた。

 

「日程が早まったから……でしたっけ。仕事がふえた、短縮したのは」

「そうや。十六夜君達が先に行ってしもうたみたいやから、僕も早めに行っておこうかなって。ストッパーがいた方がええやろ? だから、な? 仕事なんかしとる暇はない―――」

 

がゴンッ!!!! 蛟劉の言葉に反応するように水の玉から鈍い音が響いた。蛟劉の笑いに陰りが指す。蛟劉は音の発生源から目を逸らし、代わりにと義仁が音の発生源―――閉じ込められた女性店員を見て、小さく悲鳴を上げた。

 

「ヒェッ……。こ、蛟劉さん。早く解放した方が……」

「大丈夫や。音は通らない。だから僕らの会話も聞こえてない。だから、あんな都合よく水面を殴れるはずも無い。つまりはブラフや……」

 

そう言う蛟劉の額には脂汗が滲んでいた。白夜叉の身内というものもあり、蛟劉は彼女にたいして強く出ることが出来ない。さらに言えば、蛟劉が血反吐を吐きながら終わらせる仕事量は白夜叉がなんの苦もなく終わらせ、時間が余ったからと遊びに行く量。一般人には到底体力が持つはずもないそれの手伝いを女性店員はしていたのだから、出来て当然の領域。散々彼女に助けて貰っている蛟劉は尻に敷かれている状態なのだ。

 

がゴンッ!!!! 二度目の衝撃音。流石に観念したのか、蛟劉が錆びたブリキ人形のようにギギギッと、ゆっくり振り返り、小さな悲鳴を漏らした。

 

「ヒェッ……。この世の生き物とは思えへん……、リリさんとはまた違った怖さが……」

「日頃からどれだけやらかしてるんですか蛟劉さん……」

「僕は悪くない。白夜王の方がやらかしてる。仕事はできても問題児なのに変わりはない。僕悪くない」

「言ってることが訳分からない事になってますよ。ほら、私も手伝いますから。早く解放してあげて下さい」

 

そこまでま言ってようやく観念したのか、蛟劉は女性店員を解放した。取り敢えず、義仁の手伝いもあってか仕事は一週間で無事終わった。

 

それと、この一週間で蛟劉は死んだ。丸一日帰ってこなかった義仁を心配したリリからの説教や、女性店員からの怒号。唯一の癒しであるはずの義仁は基本事務作業。会話をするのも大体は女性店員と。

 

仕方ないと言えば仕方ないし、こうなったのも全ては自分の落ち度……。誰かを責めるわけにも行かず蛟劉はそっと、息を引き取るように床に着いた。

 

「義仁様。手伝っていただきありがとうござました。あそこで寝ているのは明日にでも北側に送り届けておきますので、義仁様はどうぞゆっくり準備をしてから来られてください」

 

最後まで慈悲はないんだなと思いながら、義仁は〝サウザンドアイズ〟を後にした。

 




お読みいただきありがとうござます。

蛟劉死す
女性店員さん割と好きなんですが、名前がないのが(´・ω・`)
ちなみに余談ですが、書き始める前のメインヒロインが何も決まってない頃。本当ならこの女性店員さんがメインヒロインでした。
そのうちそーいった話も書いてみたいものです。

では、また次回〜

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。