問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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ふぅ……(恍惚)
あ、ぶっちゃけ自己満です。

では、どうぞ。


第68話 懇願

 乾いた笑い、フラフラとその足取りは不確かで、何をすればいい、どうすればいいなんて解決策を思案しようと頭が働く。しかし、頭は動かず、帰ってくるのは何も無い。ゆっくりとした動作で扉に手を掛け、退出しようとするグリフィス。

 

 しかしその背を、納得出来ない者の腕が引き留めた。

 グリフィスの心情を表すが如くよれっとした衣服の襟首を掴みあげ、無理やり元の席へと押し付けた。

 

「なーに、1人で絶望してやがる馬肉。まだ話は終わってないだろう?」

 

 笑顔。誰が見ても、怒っている様子でもない、ただの笑顔。目が笑っていない訳でもなく、ただの、笑顔。子供をあやす様に、泣いている子を泣き止ませる優しい笑顔。

 

 投げ飛ばされた事すらも忘れ、グリフィスはその顔をほんのりと綻ばせ十六夜を見た。

 

 グリフィスはその笑顔に一抹の光を見た。元の地位は無くなるだろう。コミュニティを追放されるかもしれない。だが、それだけで済むかもしれない。

 七大妖王と白夜王を敵に回し、ただ殺されるのであればまだ優しい。死ぬ事も許されず永遠の拷問に会う可能性すらある。むしろ、そちらの方が高いとさえ思える。だが、無くなるかもしれない。その優しげな笑顔にグリフィスは希望を見た。

 

「今話が終わったのはなんだ? まずサラへと侮辱。これは今度処罰が下されるらしいな。次は〝ノーネーム〟への侮辱。これはこっちも煽ったからまー、様子見でいいだろう。

 あとひとつはなんだろうなぁ? 侮辱なんて抽象的なものじゃなく、実害が出てるはずなんだが?

 まー、俺も? 命があったわけだし、オッサンは別のことに頭にきてるみたいだからあんま強くは言わねぇよ」

 

 それは、まさに吉報。希望、救いと言って過言なきもの。グリフィスは救われた。助かったと涙ぐむ。頭を下げた。きっと、いや間違いなくこれでは足りないと分かっている。プライドなんぞ、命に比べれば安いもの。絶望よりも安いものだ。

 

「いやいや、そんな謝らなくていいって。ほんと。だからさ」

 

 この場でお前の誇りである角と翼を切り落とせよ。

 

 にっこりと、十六夜は微笑んで見せた。

 

「これは、うちのチビが受けた心の傷の分だ。心の傷はもう治らねぇ。直すことは出るがな。じゃあ、治らない物をどうやって弁償する? おれは相手の取り返し用が無いものを奪う。

 お前、グリーの兄貴だってな? グリーは俺達が箱庭に呼ばれた時、初めてのゲームで相手取ったグリフォンだ。今回のゲームでも、俺を天空城へと連れて行くために翼を失った。

 そんな弟から聞いたんだが、お前〝龍馬〟と〝鷲獅子〟をも持つ第三幻想種ってのを誇りにしているそうじゃないか。

 なら、角はチビの心。翼はオッサンの受けた傷。良かったなぁ! グリーから聞いたが翼はまだ治る余地があるらしいぜ!」

 

 …………なにをいっている? つのをきりおとせと? つばさをきりおとせと?

 

「おい、だまってんじゃねぇよ。これはお願いじゃねえからな? 命令だ。ああ、それとも怖いか? なら俺がへし折ってやる。さっさと獣に戻れ。ほら。ああ、取り巻きにも同じ苦痛を味合わせろと、そういうことか。確かに、実害を出したのはお前じゃねえもんな。なら、取り巻きからは片脚ずつを貰おうか」

 

 沈黙を保って来た取り巻きも、その発言に大きく身震いした。ガタガタと歯をかき鳴らし、顔は青をおさ通り過ぎ、もはや何色か例えようのない色になっていた。

 

「はいはい。今からグロ注意やからな。義仁はんとか、慣れてない子や見たくない子は早めに出ときなー」

 

 蛟劉が手を数度叩き、ジンや耀、義仁達を追い出した。今この場に居るのはサラ、十六夜、蛟劉、グリフィス、取り巻きの2人。計6人。

 

 蛟劉が今一度人数を確認し、し終わったと同時に部屋は水に覆われた。

 

「これで、声は外に漏れない。血で汚れもしない。なかなか便利やろ? 壁に水這わせただけやけど」

「充分すぎる絶技だと思うがな。そういや、馬肉の角はサラの角の代替品として利用出来ねぇのか?」

「出来んことは無い。以前ほどの力は出せないが、それでも親和性は高いはずだ」

 

 グリフィスは逃げた。この3人は既に決行する気で話を進めている。なにが救いだ、なにが希望だ。待っていたのは絶望ではないか。扉のノブを壊そうと乱雑に扱い開けようとする。しかし扉は開かない。全力で殴ってみても、その薄い水の膜に軽い波が生まれるだけ。逃げ場などなかったと、理解したくなかった事を理解してしまった。

 

「さあ、始めようか」

 

 最後の足掻きだと言わんばかりにグリフィスは獣〝ヒッポグリフ〟の姿へとなる。しかし、何も出来ずに地に打ち付けられた。首元を握り潰すように蛟劉が掴み、押さえ付けていた。

 

「おやまあ、漸くヤル気になってくれたか。それじゃあ、十六夜くん頼んだよ」

 

 刑罰執行。嫌だと頭を振り、十六夜の腕から逃れようとするが、蛟劉に頭を押さえつけられそれは叶わない。人間一人分はあろうかと言う巨大な角。その根元に十六夜の手が宛てがわれる。

 

 ギリギリギリッ

 

 ゆっくりと、その角に力が込められていく。十六夜は軽い表情で、さながら雑巾を絞っているかのよう。グリフィスの声にならないら絶叫が鼓膜を揺さぶるが、途中からはもはや声すらも出ず、気を失いかけていた。が、それを許すほど蛟劉も出来がいい訳では無い。首筋に力を込め無理やり意識を取り戻す。

 

 そして、遂にグリフィスの角が頭からネジ切られた。ゴトリと鈍い音と共に床に落ちる角。即座にサラの炎によって止血が行われた。そして、その止血は同時にもう、角が生えてこられないという事を暗示していた。

 

 絶叫すら上げられず、グリフィスの瞳からは涙が止まる。現実を受け止めきれなくなった弊害だ。しかし、十六夜が今度はその翼へと手を伸ばした。

 

「やめろ! やめてくれ! 頼む……、もうしない、お前達にももうてをださないからもうやめてくれもううしないたくないやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめやめやめやめてやめてややぁァァァァァァァァァァああ

 

 あああああああ

 あああああああ

 アアアアアアア

 アアアアアアア

 

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 グリフィスの懇願虚しく、翼は行きよい良く引き抜かれた。

 




お読みいただきありがとうございます。

ふう……(恍惚)
いやぁ、オッサンは再起不能に基本できないけど、モブ(?)には容赦しなくていいから……タノシイヨネ

ま、これがオッサンを敵に回すということだ。
白夜叉がいないだけマシだと思う。うん。

では、また次回〜

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