問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ? 作:ちゃるもん
いやー、話数50辺りからですが、本当にサブタイ決めるのがキツい。
私は話を書いた後にサブタイを付けるのですが、基本単語なんで被らないようにってしてるとどうしても……似たようなものばっかりになるんですよねぇ
では、どうぞ。
水も滴るいい男。そんな言葉を体現するかの如く髪をかきあげる十六夜。上着のボタンは胸板が見えるまで開かれ、水滴が流れていく様は男である義仁ですら感嘆の声が出る。正しく、アイドルを見ているような感覚に陥る。十六夜の整った顔、目を惹きつけるほどの綺麗な金髪だけでなく、堂々たるその立ち姿からそう思えて、見えてしまうのだろう。
つい先程まで正座から誠心誠意の謝罪を行っていた人物とは思えない。黒ウサギはこれほどまでに素直な十六夜が信じられないと、別の意味で感嘆していた。
「そういや、オッサンは〝主催者〟としてゲームを開催してたが。ゲームに参加してみたいといい、どう言う風の吹き回しだ?」
「え、そうだったのですか?」
「おや、義仁はんは抜け駆けしてたんかいな」
蛟劉が茶化すように横槍を投げ入れ、黒ウサギが驚きの表情と共に義仁を見る。義仁は愛想笑いをしつつ遠い目で事の発端を説明し始めた。
義仁が開催……と言うよりは一枚噛んでいる、否、利用されたと言った方が表現としては正しいだろうそのゲーム。
義仁はサラから渡された羊皮紙を3人に見せる。ゲームの名は
『ギフトゲーム ― 〝アンダーウッド〟の収穫祭・狩猟部門
・参加者
自由参加(前日までに要申請)
・ルール規定
一、コミュニティごとに戦果を競う(ゲーム内での同盟は可)
二、亜人含む人類は狩猟用の武具を着用すること
三、勝敗は獲物の総重量をポイントにして決する
四、角付きの戦果には加点あり(奉納、祭具の寄付を認めた場合に限り)
五、期間は前夜祭の正午から夕暮れ迄とする
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、各コミュニティはギフトゲームに参加します。
〝龍角を持つ鷲獅子〟連盟 印
〝ノーネーム〟代表 木島義仁 印』
蛟劉と十六夜は関心の声を、黒ウサギは絶句していた。
〝ノーネーム〟がすべてを失い、細々と暮らしてきた。今では十六夜達のお陰で一定の生活水準を保てるようになり、多くのゲームへの誘いも寄せられている。だが、それでもゲームを開催する事は夢のまた夢。報酬も満足に用意できる自信もない。宝物庫には多くの財宝が眠っているが、人を選ぶものばかりだ。
だと言うのに、目の前の男はこんな軽々と黒ウサギ達の、〝ノーネーム〟がずっと待ち望んでいたレベルへといとも簡単に足を踏み入れた。十六夜のような怪力を持つわけでもなく、春日部のように動物と会話する訳でもない。ましてや、飛鳥のように無限の可能性を秘めたる力を持つわけでもなし。
正真正銘の一般人。黒ウサギには、このゲームに著名されているその名前が、何時か、いつの日か〝ノーネーム〟の土地でも実現出来るものだと確信した。
なにせ、こんなにも凄い力を持った人達が居るのだから。きっと、この事はかつて〝ノーネーム〟に居た仲間たちにも届く事だろう。知らなかったなら、声高らからに自慢してやろう。
黒ウサギは1人決意を新たにし義仁を見上げ、会話の輪へと入っていった。
「実は、十六夜君たちよりも先に来てたのはこれの資金集めの為なんだ。えーと……ペリィドン……? ペリュドン? とかの殺人種って幻獣が、巨龍との戦いで力が低下している事をいいことに〝アンダーウッド〟の近隣に居座って、人を襲っていたらしくてね。
復興の為に支援してくれてるコミュニティまで襲い始める見込みが出てきた。けど、そこにまで手を回せる余力はなし。精々牽制してどうにか押しとどめるのが限界だったらしいよ」
「なるほど。そこでオッサンの出番か」
「え? なにか分かったん?」
十六夜と黒ウサギはどこか納得したように強く頷いた。だが、義仁と短い期間で仲良くなった蛟劉は何が何だか。1人だけ頭の上にはてなマークを浮かべていた。
「オッサンは恩恵無しで魔王に対抗する手段を模索してる。まー、被害が出た後の話になるから対抗ってのも可笑しいがな」
「え、なにそれ気になるわ。勿体ぶらんで教えてーな」
「正しくそれだ。オッサンは魔王に汚染された土地を恩恵無しで浄化する方法を模索、研究していてな。結果も一応出たんだっけか?」
「一応ね。〝ノーネーム〟の土地の場合だけだけど。時間で瓦解した土地に対してだけじゃ、まだ結果を出したとは言えないからね」
そうして、蛟劉もすべてを理解した。〝アンダーウッド〟は1本の巨大な樹木によって支えられていると言っても過言ではない。土地を維持するだけでもそれなりの費用は掛かるはず。ましてや、魔王に攻め込まれた場合など莫大すぎる金が流れるだろう。だがしかし、そこで義仁の持つ知識が少しでも広まっていれば? 今後の為にもお金を出してでも学んで起きたいという者は多いだろう。
「今まで考えたこともなかったわ。恩恵無しで魔王に対抗するなんて。そりゃぁひとつのゲームを支えるぐらいの儲けはでるわ。にしても、随分面白い事してたんやねぇ」
「大変ですけどね」
「そりゃそうよ。魔王どころか、最悪神すらも敵に回す行為やから。けど、その知識、技術は復旧させなあかん。困ったことがあったら相談乗るから……専門家に相談乗るっていのもおかしいか。ま、色々お話ぐらいしようやってことで」
蛟劉はにっと得意気に笑って見せた。
お読みいただきありがとうございます。
これで、飛鳥と耀の出番が終わりです。え?出てないだろって? 主人公が出てこないんだよ察しろ(´・ω・`)
いやぁ、最初はそっちで書いてたんですけど、殆ど原文になっちゃうので……流石に数話続けてほぼ原文って言うのもなぁってのが……ユルシテユルシテ
ま、まあ? 出番終わりってのは? 流石に? あれなんで? その内だしますごめんなさい。あ、でも耀ちゃんは割とすぐ出てくると思いますよ。
では、また次回〜