問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ? 作:ちゃるもん
ねぇ知ってる?
この小説って原作5巻の58ページまでしか進んでないんだって。
……来年までかかるかもなぁ(´・ω・`)
では、どうぞ。
「……さっきとは打って変わって、随分と胡散臭い笑顔だな」
「ちょ、」
「いやあ、よく言われるんや。妹からも胡散臭い胡散臭いとよく馬鹿にされたもんや。むしろ、さっきまでは胡散臭くなかったんか。そっちの方が気になるわ」
ケラケラと腹を抱えて笑う蛟劉。本人も自覚があったのだろう。特に気にした様子もなく、自身が胡散臭くない笑顔を浮かべていた事に驚きを隠せないでいた。
まあええか。と、煙管を咥えなおし渡し船を漕ぎ始めた。
煙管を咥えながらのんびりと漕ぐ蛟劉を見て、十六夜は不思議そうに問う。
「……アンタ、収穫祭のゲームには参加しないのか?」
「いまは少し揺ついとるな。ま、マトモには参加せんと思うよ。僕は風来人って奴でな。世情に流されるまま、箱庭をうろついとる流れ者よ」
「ふうん。そりゃ勿体無い話だ。その実力なら引く手数多だろうに」
おっ? と黒ウサギが反応する。十六夜も同じことを思っていたのだろう。しかし蛟劉は苦笑いしながら首を振った。
「はは、そりゃ買いかぶりすぎやで。手前の旗本一つも守れんかった男なんて、どのコミュニティもいらんやろさ。だから、精々しがないおっさん同士で仲良うやる位がちょうどええんよ」
ケラケラと笑い煙管を吹かす蛟劉。
十六夜はそっと眉を顰め、黒ウサギは咄嗟に口を押さえた。義仁は話についていけないことに早々から気付いていたため気配を消し、気楽に短い船旅を楽しんでいた。
「……そうかい。野暮なこと聞いたな」
「構わんよ。ガロロ君からは面と向かって〝枯れ木の流木〟とか言われとるしな」
「そりゃいい得てる。その覇気の無さ、正にそれだ」
ヤハハと笑って便乗する十六夜と、苦笑する蛟劉。
黒ウサギは困惑しながらも、少しだけ納得した。
(そっか……覇気を隠しているのではなく、本当に覇気が無かったのですね……)
〝枯れ木の流木〟―――夢破れて世情に流される姿を言い表したのだろう。
蛟劉が何を理由にコミュニティを失ったのかは三人の与り知らぬことだが、落日の傷はそう容易く癒えるものではない。十六夜は話題を変えようとして黒ウサギに問う。
「そう言えば黒ウサギ。拉致られたって言ってたが、何処まで拉致られたんだ?」
「あー……それを話し出すと長いのですが。実は北川の、平天の旗本まで、」
―――ガコンッ! と、渡し船が大きく揺れた。
「わ、きゃ……!?」
「お、おお……!?」
突然の揺れで黒ウサギは体勢を崩し、十六夜の上に覆いかぶさる形で倒れこんだ。義仁は川に身を乗り出しそうになった所を十六夜と蛟劉の腕によって守られていた。
「っとと、すまんな! 大丈夫か3人とも!」
蛟劉は慌てて舵を取りなおす。
同じように面食らった十六夜だったが、此方は対応が早かった。
(オッサンに気を取られたが……これまた、役得だな)
黒ウサギの豊満で肉付きの良い身体が船の揺れに応じて全身に押し付けられる感触は悪くない。豊かな胸の柔らかさは勿論のこと、上質な生地の様に手に吸い付く素肌は触れるだけで蠱惑的な甘さを感じられた。並の男だったら太ももに指が触れただけで理性を失い、初雪のような柔肌に爪を立てて押し倒していただろう。
―――流石は神々の愛玩種。魅了の恩恵がなくとも、触れ合うだけで十分にエロい。
「あ、や、す、すいませんっ!」
黒ウサギは思わずウサ耳と髪を緋色に変幻させてしまうほど赤面し、十六夜から距離を取る。純情な黒ウサギには今のハプニングは少々衝撃が強かったのだろう。
ウサ耳としっぽをパタパタと揺らし、紅潮したまま俯いてしまった。
(いやあ……あんなエロい身体で、よくこんな風に育ったもんだな)
心の底から感心したように、しみじみと頷く。
時間にして十秒にも満たない時間だったが、眠気を払うには十分すぎる衝撃だった。これも日頃の行いがいいからだな、と結論出し。
先ほど黒ウサギが口にしかけたことを思いだす。
「……待て、エ黒ウサギ」
「ちょっとお待ちを。エって言いかけました今? エなんて言おうとしたのですか今!?」
「……待て、エロウサギ」
「だからって言い直さないでくださいお馬鹿様ッ!」
スパァーン! とハリセン一閃。十六夜はむっと顔を顰め、
「……〝箱庭の貴族(エ」
「言わせるかこのお馬鹿様ああああああッ!!」
スドパァァォォアンンンンンッ!! と全身全霊の一撃で叩く黒ウサギ。
渡し船は先程より一層激しく揺れた結果、黒ウサギはまたも十六夜の胸板に倒れこみ、義仁は川へと投げ出されたのだった。
その後、蛟劉に救い出された義仁は黒ウサギと珍しい十六夜の正座からの謝罪を見ることになった。
お読みいただきありがとうございます。
うーん……このオッサンの空気感よ。
いや、今更ですな……。
では、また、次回〜