問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

急にアクセス出来ませんなって、書いたデータが吹っ飛びました。自動保存は無事だったので良かったです。

では、どうぞ。


第63話 世間話

 上流から下流に流れていく川に逆らい、その場に留まる小さな船の上。揺らめく煙は煙管から。こほりとひとつ咳が零れた。

 

「おっと、もしかして苦手やったか?」

「あ、いえ、続けてもらって大丈夫ですよ。煙草の煙は久し振りでして。日頃吸ってる人も、私とは真面目な話になるせいか火を消してしまいますし。むしろ、どこか懐かしく感じてるくらいです」

「それじゃあ、遠慮なく。にしても、義仁殿もえらい方とお知り合いみたいやね」

 

 えらい方とは?義仁は首を傾げた。その様子に蛟劉も小首を傾げる。軽い沈黙が続き、漸く思い至ったのか義仁は声を上げた。

 

「ああ! 黒ウサギさんの事ですか。箱庭の貴族……でしたっけ? 詳しくはないですが、凄いらしいですね」

「おま……似た境遇かと思ったが、ただの無知やったか。後は本当に一般人みたいやな。そうよ、箱庭の貴族。簡単に言えば……そうやなぁ、ゲームに置ける絶対者……審判とか、裁判長とか、そんな感じやな」

 

 へー、間の向けた返事。そうやでー、間の抜けた返事。おっさん2人が集まるとここまでまったりとした空間が発生するものなのだろうか。見てる人によっては軽い誤解を生みそうである。

 

「蛟劉さんもこのお祭りに参加しに?」

「うーん……お祭り3割、お仕事7割ぐらいかね。うちの門下生……ってほど大層なもんじゃないが、弟子が今日とあるコミュニティと会談をするのよ。その付き添い。後は……もう一波乱ありそうな予感があるぐらいかな」

「お弟子さんですか。武道とかやられてるんですか?」

「まあ、そこそこ。姐さん達には敵わんけど、それなりに強いんやで〜。海千山千の修行は伊達じゃないんよ」

「海千山千? 1000日も山篭りとかするんですか?」

「1000日やのうて、千年よ。ま、実際はちょっと工夫……近道して千年で終わらせたんやけど」

「おー、すっごい年上だ」

「せやろ? ま、そこらはあんま気にせんといてな。気にされても窮屈になるだけやから。風来坊にはキツいしおきや」

 

 あっはっは。

 刻みの良い笑いが船の上を満たしていく。軽口が飛び交い、蛟劉の修行内容を理解した者、蛟劉を知っている者がいれば、義仁が蹴り出されても可笑しくない光景が繰り出されていた。

 

「にしても、2人とも遅いですねぇ。船の上が意外と居心地がいいとは言え……おじさんには腰が……」

「そりゃぁ、ずっと同じ体勢ならそうなるわな。少し立ち上がって体を伸ばしな。その間波は止めといちゃる」

「あ、なんかすいません。では、失礼して……」

 

 よっこらしょ。立ち上がり腕を一気に上へ。体の節々から骨が伸びるポキポキとした音が響く。その間、蛟劉はさりげなく船の下だけの水を塞き止め、固定するという高等テクニックを行っていたが、勿論義仁はそんな感知できないし、説明されてもなんかすごいんだなで終わるのだが。

 

「いやあ、歳をとるとこう言った所がキツイですね。運動不足だし……若輩者が出来るような……ゲーム? ってありますかね。できれば、安全なやつがいいんですけど」

「ああ、それなら丁度いいのが―――」

 

 

 ※

 

 

「凄く、入りづらいですね」

「オッサンどうしで意気投合してるだけの筈なんだがな……」

 

 ただのオッサン2人の世間話。しかしそれは、召喚初日にとある神様をぶっ潰し、最強の1人と歌われる白夜の王に喧嘩をふっかけ、仲間を助けるべくひとつのコミュニティを星から引きずり落とし、魔王に奇襲(正面突破)をしかけ、女性の肢体を堂々と評価するような問題児逆廻十六夜ですら乱入する事を躊躇われるものと化していたのは、話に夢中の2人は知る由もなかった。

 




お読みいただきありがとうございます。

たまにはほっこり(*´ω`*)もいいでしょ?
あと、ゲーム参加は無理やりですが、今回ので参加させます。まあ、予想通り奮闘なんてしませんけどね(盛大なネタバレ)

ISの小説書くのたのちい(*´ω`*)
あれ、設定知らなくてもある程度書けるから、東方と同じ匂いを感じる。

では、また次回〜

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