問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ? 作:ちゃるもん
ダークソウルリマスター楽しいです。
決してリマスターをやっていて構想をねり忘れていたとかではありません。
では、どうぞ。
「それで……って聞くのも野暮だが。その後どうしたんだ?」
まあ、聞かなくても分かりきった事なんだけどな……。十六夜は心の中で呟く。
ただ、同じ屋根の下に住むと言う、寮の様なものでさえあれだけ強い家族愛を見いだせる。見出してしまう人間が、本当に愛した者達が消えればどうなるかなんて……予想できないわけがない。
「最初は首を吊ろうとしたかな。ロープなんて無かったし……確か……コードを何重かにしてやったなぁ。けど、結局首を吊るのは出来なかった。
一時は仕事も行かなくてね。と言うよりは休んどけって言われた。
2回目は……飛び降りだったかな。住んでたところがマンションだったしね。けど、結局足を前に出すことは出来なかった。
その次は餓死。山の中に入って、これなら逝ける、今から逝くからなんて思ったよ。けど、気が付けば我が家に帰ってきてた。
死のうとする時、毎回妻と娘が私の前に出てくるんだ」
「…………幻覚か」
言うか悩んだが、十六夜はその言葉を放つ。それに対し義仁は反応を強くは示さなかった。無反応か、反発してくるか……そう踏んでいた為その返答は予想の斜め上を行く。
「そうだね」
あまりにもあっさりとした回答。
義仁が見たと言う妻と娘。恐らくそれが義仁が死ぬことすら出来ないでいる原因だろう。
だから、十六夜はこの回答に違和感を覚えた。ここまで自らを責める人間がみる幻覚が、まともなものなのだろうか? かつてあった過去を思い出すわけではない。自らがトラウマとする存在を幻視する。
おぞましいものを見ているのだろうと、勝手に予想つけた。きっと、なぜ1人楽になろうとしているんだ? とでも言いたげなモノを見たのだろうと。
だから、十六夜はさらに踏み込む。
「やけにあっさりしてるな」
「と言うよりは、怖いんだ。死ぬのも勿論だけど、このまま死ねば、家族に愛想尽かされるんじゃないか、尽かされているんじゃないか。って」
「それは……なんというか、どうしようもない事だろう? 確認のしようがないし、なにより自己満足と言えど、家族に会いたい。そう思えば……言っちゃあ悪いがな」
「そうなのかもね。でも、私には出来なかった。だって、私が死のうとすると……妻も娘も悲しそうに笑うんだ。そして、諦めたら嬉しそうに微笑むんだ。どうすれば、最愛の者達を裏切ることが出来る。
今でも、2人に会いくて……側に行きたくて……自殺を図ろうとしたさ。この世界でも。君たちを理由に何度も……何度も……。けど、実行もできなかったし、計画すらも立てれなかった。けど、けど、2人はそれを嬉しそうに微笑むんだ。だから、これでいいって心は整理を付けたつもりになってしまう。
リリちゃんを助けたのも、ジンくんの力になったのも、ロオタスくんを助けたのだって……それこそ、ノーネームの力になろうとしたのすら……私が……女々しい臆病な人殺しだからじゃないか。
何かを理由にしないと、私は生きていけない。その為の勇気も気力もわかない。ノーネームのみんなを家族として見ないと、誰かを支える理由がないと僕はただの動くことすらしない亡者に成り果てる。そんな姿妻と娘には見せたくない。私は2人の誇りでありたい。
だけど、それの隣に直ぐにでも2人に会いたい欲求が俺にはある。もう、板挟みなんだよ僕は。何をするにしても。
いっその事、魔王に殺されれば良かった。そんなことすら、沢山の人が死んでる中で思ってしまうほどに、俺は私の心が嫌いになってしまっているんだ。それ以上に妻と娘を愛しているんだ。
だから、私は何とかしてこのまま誰かを支える柱になって行くと思う。
こんな話しか出来なくてごめんね」
静かに、ただ静かに押し寄せる波が引いていった。
笑顔という物が人によっては暴力となり得ることは知っている。理解している。
その優しさが、その慈しむ心が最後の一歩を踏み出させる事も。
愛とは均等になって漸く花を咲かせる。重すぎるだけの愛はやがて黒く霞、軽すぎる愛は軽率に人を傷つける。
だが、笑顔が、優しさが、慈しむ心が、重すぎる愛と、軽すぎる愛、均等に取れていたはずの愛すらも、この男には……なまくらの刃となって襲っていた。
動くに動くとことも出来ず、その手に握られた空の水筒。もっと、持ってきておくべきだったか。と、後悔しながら窓の外を眺める。
そこには、中途半端に欠けた月が、雲に腰掛けるようにして空に浮かんでいた。
お読みいただきありがとうございます。
ま、そんなとこです。
毎度思いますが、上手く説明するって難しいですよね。軽く混乱してる感じを加えようとすると尚更。
次回は……原作に入る予定ではあります。原作取り出してないのでまだ分かりませんが。一応引き伸ばし回の可能性もありますのであしからず。
では、また次回〜