問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

人狼ゲーム楽しすぎか。

では、どうぞ。


第46話 炎

 芋虫のような下半身に、頭はカタツムリの殻のようなものが横向きに付いている。背中には蚊のような薄い羽、頭には大きな針。大きさは義仁よりも少し小さいくらい。数は5。

 

 義仁の拳が芋虫のような下半身に突き刺さる。確かに化け物は怯んだが、ダメージを負ったようには見えない。むしろ、義仁の右拳は傷が開き薄く巻かれた包帯程度ではどうすることも出来ないほどに出血していた。

 

 けれど、痛みは感じない。

 

 「2人には、触らせねぇぞ」

 

 義仁は再び拳を握る。右拳から血が吹き出した。化け物共の動きは鈍く人間が歩いている程度の速度で近付いてきた。

 

 義仁も近付いてきた化け物を殴るが、化け物は軽く怯むだけ。所詮はなんの力も持たない人間。勝てる筈もなかったのだ。

 

 決着ははやく、時間稼ぎにもならないまま義仁は3匹の化け物に押し潰される。微かに聞こえる呻き声が飛鳥達の耳を燻った。

 

 「義仁さん……」

 

 無意識に義仁へと手を伸ばす飛鳥。飛鳥の力があれば、義仁を強化できる。きっと、義仁でもあの化け物達をどうにかできる程には強化出来るはずだ。だが、そうすれば、巨龍を止める為サラの角を触媒に強化を施しているディーンが間に合うかどうか……。

 

 目の前の仲間を見捨てるか、空で戦う仲間を助ける為に動くか。

 

 義仁へと向けた飛鳥の指が震える。自分の歯と歯がぶつかり、しっかりと噛めない。まだ、彼女には誰かを犠牲にして誰かを選ぶ。その選択は重すぎたのだ。

 

 「だから、こそ……大人の役目……そうだろう? 義仁殿」

 「…………さ、ら?」

 

 飛鳥の手にサラの手が重ねられた。角を失い、力を失った。けれど、その心の強さに曇るものなし。

 

 「飛鳥はディーンの強化を」

 

 フラフラと立ち上がる。しかし、足は産まれたての小鹿の如く震えている。立っているのがやっとにしか見えない。

 

 「はっ……は……義仁殿……まだ、諦めていないんだろう?」

 

 押しつぶそうとしている化け物共の山が少し震えた。

 

 「そうか……済まないが、後は任せるからな」

 

 瞬間、化け物共の山が大きく燃える。そして、立ち上がる男が1人。そして、倒れる女が1人。

 

 「……さら? サラ!」

 

 飛鳥が慌ててサラへと駆け寄る。まだ生きてはいるが、先程のような活力なんてものは見受けられない。

 

 「……君も、俺に頼んで逝ってしまうのか」

 

 さっきの怒号でもなく、何時ものような優しそうな声でもない。悲しみや悔しさが入り交じった小さな声。

 

 「また、訳の分からん奴に……奪われてしまうのか……」

 

 炎に包まれながら、平然と声を出す。熱い? むしろ、心地よい。誰かに包まれているかのような温もりと安心を感じる。

 

 「守ろうとしたのに、守られてるなんて……笑えるよな……」

 

 零れる涙は蒸発し、涙の後すら残さない。

 

 「クソっ……クソっ……」

 

 顔を上げる。化け物がいた。化け物が義仁を敵と認識したのか、さっきの鈍重な動きではなく俊敏に動き出す。人間には捕えられないであろうその速度。今は片目でも十二分に追うことが出来た。

 

 1匹が飛鳥の方へと飛んでいく。踏み込み、駆ける。体は悲鳴を上げてるが、そんなものは気にしない。飛鳥の元へ化け物が辿り着くよりも早く飛鳥の前に立ち、化け物を真正面から叩き潰した。緑色の液体を撒き散らしながら絶命する化け物。

 

 1匹はやれた。だが、それだけで息が上がる。脳が無茶苦茶な筋肉の利用に拒否反応を起こし、動きが止まる。

 

 その隙を縫われ化け物の巨大な針が迫る。咄嗟に反応しその頭を押さえ付けるように力を加えるものの、その巨大な針は義仁の脇腹を貫通した。

 

 「うぐっ……」

 

 痛みを感じにくくなっているのが幸いし、意識が飛ぶような事はないが、体に異物が入り込んでいると言う事実に吐き気を覚える。

 

 「あぁぁァアアア!!!」

 

 そのまま拳を振り下ろした。死なば諸共。その覚悟で。叩き潰される勢いに針は耐えきれず、半ばから折れ、化け物は緑色の液体を撒き散らしながら絶命。それと同時に義仁を覆う炎がゆっくりと霧散していく。

 

 足から力が抜け、地面へと身を投げ出す。視界に写るのは、いっぱいに広がる緑と赤。そして、巨大な影が2つぶつかる姿。

 

 しかし、それよりも……そんな事よりも……目の前でいい笑顔をしたまま目を閉じている愛した人の姿。

 

 「……ご、めん……まもれ……な、く……―――

 

 大きく血を吐き出し、義仁がそれ以上言葉を紡ぐことはなかった。

 




お読みいただきありがとうございます。

まあ、オッサンはこの程度です。
強化を施されても、この程度が精一杯なわけです。

では、また次回。

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