問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

一気飛ばしてやれ。そう思った。
反省はしている。後悔はしていない。

では、どうぞ。


第44話 魔王ドラキュラ

 巨人族第2陣も無事撃退に成功。第1陣よりも数が少なかったこと、十六夜が最初に殺したのが司令塔だったようで、さして苦労せず撃退することに成功していた。

 それでも、失った命は少なくないのだが。

 

 また、一時の平穏に皆が安堵していた。そして、次襲われるのは何時だろうか。本当にこのまま生き残れるのだろうか? 〝アンダーウッド〟全体をそんな恐怖が包んでいた。

 

 そんな中、義仁は1人レティシアと地下室を訪れていた。特に意味の無い気分転換である。

 

「ふむ……迷ったな」

「迷っちゃったね」

 

 そして、絶賛迷子である。

 

 彼らがいるのは〝アンダーウッド〟の巨大樹。その地下室。

 

 レティシアもサラやジン達に加わり作戦会議に参加しようと来賓室に訪れていたのだが、情報の秘密性の為門前払い。まあ、どちらにせよ、部屋自体に、入れないようにするギフトを掛けられていたので入る事は叶わなかった。

 そこに居合わせたのが義仁。どうせ暇だからとレティシアと共に〝アンダーウッド〟を見て回ろうとなったのだ。

 

 薄暗い木の廊下。聞こえる音は二人の歩く乾いた音だけ。ふと、レティシアが口を開いた。

 

「なあ、義仁殿は……ずっと探し求めていた、助けようとしていた大切な人が、もう既に助けられないと知ったら……どうする」

「また、急な話だね……どうするって……どうも出来ないよ。私には。良い方向に助けられないのなら、祝福するし、悪い方向になら後悔するだけ。だって、私には誰かを守れるような特別な何かはないからね」

「そう、なるか。なら、少しでも、助けられる可能性が残っていたら?」

「血みどろになってでも、この命を投げ売ってでも、助けてみせる。助けられるよう死力を尽くす。と、言葉に出すのは簡単なんだけどね。私には出来なかった。でも、もし、2度目が許されるのなら頑張るんじゃないかな」

「そうか……そうだな。ずっと、下を向いているわけにもいかない。ありがとう義仁殿」

 

 私は正直に答えただけだよ。そう言うと、レティシアはふふと笑った。

 

(十六夜達は確かに私たちの希望ではある。だが、不必要な重圧までかける訳にはいかないな)

 

 決意を胸に、歩を進める。

 ―――不吉な声と音色が響いたのは、その直後だった。

 

 ―――目覚めよ、林檎の如き黄金の囁きよ―――

 

 えっ、と呟いたレティシアの体から力が抜ける。同時に琴線を弾く音色が響き、彼女の意識を混濁させていく。

 何が起こっているのかわからない。飛びそうな意識の中、かろうじて背後を見たレティシアは、クスクスと笑うローブの詩人を目撃する。

 

「―――トロイア作戦大成功……とは行きませんでしたが、お久しぶりですね、〝魔王ドラキュラ〟。巨人族の神格を持つ音色は如何ですか?」

「き…………貴様……何者、」

「あらあら、ほんの数カ月前の出会いも忘れちゃうなん、おっと……なんですか貴方は。口上くらい全部言わせてくださいよ」

 

 詩人の声は途切れ、軽く後ずさる。義仁が詩人に覚束無い足取りながらも組み付いたからだ。

 

「にげ……なさいっ……!!」

「義仁どの」

「邪魔しないでもらっていいですかね?」

 

 詩人は力強くでその拘束を解き、義仁を廊下の壁へと叩きつける。不気味な音のせいで混濁した意識、更に体を打ち付けもう動こうとはしてくれない。それでも、足掻く。2度目ではなくとも、大切な人が今まさに危険な目にあっているのだから。

 

「まったく……〝魔王ドラキュラ〟の復活を邪魔するなんて……無粋な。さあ、お待たせしまし、た!!」

「あガァぁぁぁァ!!?!」

「やめろォ!」

 

 必死に伸ばされた手は、詩人の叩き付けられた足によって砕かれる。義仁の叫びとレティシアの叫びが重なった。

 

「それでは、いきましょう。〝魔王ドラキュラ〟」

 

 詩人はレティシアをその腕に捕らえた。

 

 手を伸ばすその姿。しかし、彼女はその腕を伸ばそうとすることは無かった。

 

 

 

 

『ギフトゲーム名〝SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING〟

 

 ・プレイヤー一覧

  ・獣の帯に巻かれた全ての生命体。

  ※但し獣の帯が消失した場合、無期限でゲームを一時中断とする。

 

 ・プレイヤー敗北条件

  ・なし(死亡も敗北と認めず)

 

 ・プレイヤー側禁止事項

  ・なし

 

 ・プレイヤー側ペナルティ条項

  ・ゲームマスターと交戦した全てのプレイヤーは時間制限を設ける。

  ・時間制限は十日毎にリセットされ繰り返される。

  ・ペナルティは〝串刺し刑〟〝磔刑〟〝焚刑〟からランダムに選出。

  ・解除方法はゲームクリア及び中断された際に適用。

  ※プレイヤーの死亡は解除条件に含まれず、永続的にペナルティが課される。

 

 ・ホストマスター側 勝利条件

  ・なし

 

 ・プレイヤー側 勝利条件

  一、ゲームマスター・〝魔王ドラキュラ〟の殺害。

  二、ゲームマスター・〝レティシア=ドラクレア〟の殺害。

  三、砕かれた星空を集め、獣の帯を玉座に捧げよ。

  四、玉座に正された獣の帯を導に、鎖に繋がれた革命主導者の心臓を撃て。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

〝ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ〟印』

 




お読みいただきありがとうございます。

レティシアとの久しぶりの絡み。しかし、また直ぐにどこかに連れ去られる。

そして、オッサンの手の運命やいかに!!

では、また次回〜

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