問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ? 作:ちゃるもん
漸くあの子に出番が!
……あるといいなぁ(遠い目)
ではどうぞ。
避難所にも伝わる轟音。それが一体どれだけ時間が過ぎたのか……。
気が滅入りそうな真っ暗な空間にぽつんと数本の蝋燭が置いてある。唯一の救いは、それなりに広さはある事ぐらいか。
ママ……ぼく達死んじゃうの……?
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
どうして、あの人が……
だいじょうだいじょうぶだいじょうぶだいじょうぶ
しかし、その広さ故か、小さな声も大きく響いてしまう。
そして、シン……と、静かになった。
巨人が暴れる轟音も、巨人に立ち向かう雄叫びも、負傷者に声を掛ける呼び声も
全てが止まった。
そして、声が聞こえた。
こんな密閉されたら部屋にまで届く大きな、大きな声が。
『………い…さは! われ………りであ…!』
それは最初聞き取りづらいもので、なんて言っているかも分からなかった。だが、それでも、その言葉は弱り、死に掛けていた者達の心にも強く響く、とても力強くかつ暖かいもので
『………いくさは! われ………りである!』
部屋全体が段々と暖まり、何時しかそれは声となる。
まさか
本当に
言葉は声となり部屋に響く。それが伝播し部屋中がざわざわと騒がしくなる。そして、3度目の放送。
『此度の戦は! 我らの勝利である!』
――――――――!!
部屋が震えるほどの叫び声。泣きながら笑うもの。大切な人を失いながらも笑ってみせるもの。子を抱き母を抱き互いの温もりを噛み締めるもの。それぞれが喜色の色を見せる。
部屋から喜びの色を残したまま、避難者達は避難所から出ていく。どうやら、この後炊き出しがあるらしい。
しかし、義仁は動かなかった。1人ぽつんと部屋の隅に座り、何もしないまま。蝋燭の火は消され、部屋は真っ暗。外からは喜びの声が聞こえ、本当に戦いが終わったのを教えてくれる。
「私は……何が出来るのだろう」
ぽつんと呟かれた言葉。それは、喜色にも憂色にも染まっていない。ただ、純粋な疑問だった。
義仁自身、自分が戦闘で役に立てるとは思っていない。せいぜい邪魔をしなかったで済めば良い方だろう。事実、今までがそうだったのだから。
リリを救った時は侵入者にやられ瀕死の状態。
北側では勝手に1人になった上に、ひとりの男の子を死へと追いやった
ここがノーネーム本拠ならば、研究を進められていた事だろう。だが、今はノーネーム本拠ではない。南の収穫祭は中止となり、戦場と化した。
ジンくんを助けたのだって、あれが十六夜君だったらもっと上手くやれていた事だろう。ジンくんに心配させることもなく、より早くジンくんを避難させ、そして、巨人達を倒していた。
私は役に立っているのだろうか。
恩が返せる程度には、彼等の役に立っているのだろうか。
私は……
「あ、いた」
「あれがそうなの?」
部屋に光が差し込む。その先に立っていたのは二人の少女。1人は義仁もよく知る春日部耀。
そして、もう1人は、白黒のまだら模様のワンピースを着た少女。彼女の名はペスト。黒死病、ペストと呼ばれる病魔の化身。かつて、北側を襲撃した魔王。
そして、義仁の視力を奪った張本人。
義仁は二人を見上げる。
ペストはその顔を見た。
白目に黒目の右目と、ほんのり黒く変色した左目。ペストは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、顔を背けた。
「君は……」
「ッ……ペストよ」
「……君が、北側を襲った魔王?」
「ええ、そうよ。なに? 文句があるなら言ってみなさい」
「文句……? どうして?」
「……なんなのよ、どいつもこいつも……私が馬鹿みたいじゃない」
ペストの呟きは、暗い部屋に呑まれて消えた。
お読み頂きありがとうございます。
次回は耀とペストととの会話になります。
いやーホンワカしてますねー(白目)
では、また次回〜