問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

いやー……、まさか予定していなかった事を中心に話を再構築しなくちゃいけなくなるとは……。

まあ、収穫祭までの流れは決まったので、大丈夫でしょう。

では、どうぞ。


第33話 アンダーウッド

 黒ウサギとジンそれに耀と飛鳥。そして、義仁。彼等は今東の大地を離れ、南のアンダーウッドへと訪れていた。

 

 七七五九一七五外門〝アンダーウッドの大瀑布〟フィル・ボルグの丘陵。

 

「わ、……!」

「きゃ……!」

 

 ビュゥ、と丘陵に吹き込んだ冷たい風に悲鳴を上げる耀と飛鳥。

 

 多分に水を含んだ風に驚きながらも、吹き抜けた先の風景に息を呑んだ。

 

「す……凄い! なんて巨大な水樹……!?」

 

 丘陵に立つ外門を出た耀達は、すぐに眼下を覗き込む。彼女達の瞳に飛び込んだのは、樹の根が網目模様に張り巡らされた地下都市と、清凉とした飛沫の舞う水舞台だった。

 

 遠目でも確認できる程に巨軀の水樹は、トリトニスの滝に通づる河川を跨ぐ形で聳え、数多に枝分かれした太い幹から滝のような水を放出している。

 

 水を生む大樹。〝ノーネーム〟の水樹は此処で生まれた苗木なのだ。

 

「飛鳥、下! 水樹から流れた滝の先に、水晶の水路がある!」

 

 耀は今まで出したことが無い様な歓声で飛鳥の袖を引く。

 

 巨軀の水樹から溢れた水は幹を通して都市へと落下し、水晶で彩られた水路を通過して街中を勢いよく駆け廻っている。大樹の根は地下都市を覆うように網目模様で伸びており、その隙間を縫うようにして作られた翠色の水晶で出来ている。

 

 皆が皆それぞれはしゃいでいる中、義仁は少し離れたところでそんな光景を眺めていた。そんな義仁に一人の女性が近付いてきた。

 

 腰まで伸びた赤髪は炎を連想させ、健康的な褐色の肌を大胆に露出している。その衣装は踊り子と見間違えるほどに軽装だ。

 

 強い意志を感じさせる瞳の頭上には、二本の角が猛々しく並び立っていた。

 

 なんの迷いもなくこちらに近付いて、そして義仁の前で止まった。この女性がサラ=ドルトレイクなのだろうと義仁は決定づける。

 

「貴方が〝ノーネーム〟所属の木島義仁殿で間違いなかっただろうか?」

「そうです。では、貴女がサラ=ドルトレイクさんでしょうか?」

「ああ。私が一本角頭首サラ=ドルトレイク。此度はアンダーウッドまで足を運んでいただいたこと、感謝している」

「いえ、こちらこそ。招待していただきありがとうございます。改めて、木島義仁と申します。以後、お見知りおきを」

 

 ひと通りの挨拶を済ませ、二人は握手を交わした。

 

 お互いの挨拶が終わった頃を見計らって、ジンが二人の間に入ってきた。

 

「お久しぶりです。サラ様」

「おお、久しいなジン。会える日を待っていた」

「いえ、こちらこそお会いできて光栄です。そして、この度は〝ノーネーム〟をアンダーウッドの収穫祭に招いて頂きありがとうございます」

「私も、今話題の下層のコミュニティを招くことが出来て鼻高々といったところだ」

 

 ジンとサラも挨拶を済ませ握手を交わす。

 

「さて、こんな所で話をするのも皆の迷惑となるだろう。君達の連れは空から飛んで行く気のようだが、私達もそうするか?」

 

 そう言いながらサラは耀達を指差す。そこには、嬉々としてグリフォンの背に跨る耀の姿があった。

 

 しかし、黒ウサギと飛鳥が乗った時点で背中にはもう乗れそうもない。

 

「そう、ですね。ですが、後三人も乗れるでしょうか」

「なに、二人程度であれば私が担いで行こう。それで、良いかな?」

 

 ひょいと、自分より背の高い義仁を軽く抱く。いわゆるお姫様抱っこ状態だ。そして、ジンの体を持ち上げ、義仁の上に。

 

「これでどうだ?」

「……恥ずかしいのを除けば、問題ないです」

「まあ、いいんじゃないでしょうか? まさか、この年でお姫様抱っこなんでされるなんてなぁ」

 

 ならば良しと、サラの背中から燃え盛る炎の翼があらわれる。その状態でサラは耀達へと近づき、

 

「君達の仲間は頂いていくよ。アンダーウッドのより大きな成長のためにね」

 

 なんて、茶目っ気ある笑顔でそう言って除け一気に上昇した。

 

 ジンがぎゃあぎゃあとサラに対して文句を言っている。後ろから慌てて追いかけてきた黒ウサギ達の叫び声も聞こえる。そして、それを全て跳ね返すように笑うサラ。

 

 肌の色も髪の色も何もかも違う。けれど、その姿は何処か、少し男勝りな妻の横顔にとてもよく似ていた。

 




お読み頂きありがとうございます。

サラ様は男勝りで誰かをからかうのが好きなお方と勝手な偏見からこうなりまひた。

義仁がサラに何故呼ばれたのかは次回あたりにでも書きますので、もう少し待っていてもらえると幸いです。

では、また次回〜

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