問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

漸く白夜叉様との絡み。
そして、相変わらず白夜叉様の口調が掴めないのであった。

では、どうぞ。


第31話 亡者

「なるほどのぅ……。して、どうじゃ? 上手くは行きそうか?」

 

 8畳間の部屋に対面して座るのは木島義仁と、ノーネームを支援する東側の〝階層支配者〟であり〝星霊〟である白夜叉。

 

 義仁は業務的と言うべきか、淡々と質疑応答を繰り返しているのに対し、白夜叉は獰猛で楽しげな笑を浮かべながら渡されたレポートを手に質疑応答を繰り返す。

 

 これが、そもそも誰かの気配なんてものを察知出来もしないほどの弱い人間だからこうして居られるが、もしこれが多少なりとも戦いなれしていた者であれば恐怖して逃げ出していても可笑しくはないだろう。

 

 常日頃その力の一端も感じさせないほどに抑えることが出来る白夜叉の存在は大きく、その分恐怖の対象でもあるのだ。

 

 そんな者が今、獰猛な笑を浮かべながらほんのりとその力の一端を漏れ出させ一人の男と対峙している。

 

 傍から見れば、あの男はなんなんだ。どうしたらそこまで白夜叉様を焚き付けられるんだ!? などと勘違いされるかもしれない。いや、された。無表情で有名な女性店員に。

 

 そんな勘違いをされながらも二人は話を進めていく。内容は、義仁の研究である『魔王の土地の浄化』。魔王の力により汚染された土地を恩恵も何も使わず、人の手〝のみ〟で浄化しよう。と言うもの。

 

「今土地の入れ替えが終わりました。今回用意したのは1m×1mの広さ。深さも1mの土地を五つつ。

 一つ目はそのまま汚染された土地。

 二つ目は丸ごと培養土と入れ替え、地面と壁面に木の板を挟み汚染された土とは混ざらないようにしています。

 三つ目は二つ目から木の板を外したもの。

 四つ目は汚染された土と培養土を混ぜこみ、木の板で隔離したもの。

 五つ目は四つ目から木の板を外したもの」

「ふむ。培養土と一緒に木の板をと言われたのはその為じゃったか。その口ぶりだとまだ作物は育ててはおらんのか?」

「はい。ただ、一つ目、二つ目、四つ目をプランターで

 再現したときには二つ目では無事発芽。四つ目では二つ目の一週間後に弱々しいものですが発芽しました。一つ目では発芽せず、種子を確認してみた所ほんのり黒くなっていました。その事については先程お渡ししたレポートの三枚目に書いています」

 

 義仁がそう言うと、白夜叉は義仁から受け取ったレポートを1ページ進めた。

 そこに乗っているのは手書きで描かれた発芽状況の絵と、それに関する説明がビッシリと書き綴られていた。

 

「結果は出ている。後は現場で……。と言ったところか。育てる植物は決まっておるのか?」

「はい。今回は荒地でも育つジャガイモを考えています」

「じゃが、それだけではつまらんだろう。それに、得られる情報も少ない」

「……欲を言えばサボテンなどの乾燥にも強い植物を試してみたいところです」

 

 サボテン。暑さにも寒さにも強い植物。なんとなくのイメージで砂漠にある植物。あからさまに乾燥にも強いであろうサボテンは、取り敢えずで試すのにはうってつけの植物であった。が、東側でサボテンは売られてすらいなく、知名度すら低い。お店に行っても、酷い時にはサボテンとはなんだ? とすら聞き返されるレベルであった。

 

「サボテンか……確かに東側では珍しい植物じゃな。まず売られていると言うのは無いじゃろう

 ふむ……後2ヶ月もすれば南のアンダーウッドで収穫祭が行われる。そこは大きな植物の物品販売の市にもなる。そこでなら、東側では手に入らないサボテンも手に入るじゃろう。なんなら、私からサボテンを仕入れるよう根回しをしておいても良い。まあ、必ず手に入るとは言い難いがの。試さんよりかはマシじゃろうて」

「それでは、お願いしても宜しいですか?」

「ああ。任された」

 

 白夜叉は煙管を一吹きさせ、先程まで出していた気配をその身に閉じ込める。

 そして、さて……。と話を再開させたが、何か言い淀み、うーんうーんと唸る。

 

「さて……。取り敢えず今後の方針はこれで良いじゃろう。にしても……むう……。言っていいものか」

「……どうかされましたか?」

 

 流石に無視もできず、義仁は白夜叉に問う。白夜叉は意を決してずっと感じていたモノを義仁に言った。そして、目の前にいる男が既に壊れているものだと確信してしまった。

 

「なんというかのぅ……。お主は会う度に人間ではなくなっていっているように感じてしまってな。いや、お主が大変なのは分かっておるがどうしても気になっての」

「……ある意味、私は既に死んでいるのかも知れませんね。正しく私は亡者なのでしょう」

 

 それだけなら、私は失礼しますね。と、義仁は出ていった。

 

 白夜叉は煙管を咥える。

 

「自覚している者も、自覚していない者に負けず劣らずめんどくさいのぅ。しかも、それがこれから箱庭の常識を覆すかもしれない存在ときた。

 歴史を動かすのは変人しかおらんのだろうか?

 

 なんにせよ、無理だけはするなよ。義仁。まあ、言っても無駄なんじゃろうがな」

 

 はぁ……。と、白夜叉は大きく溜息を付いたのだった。

 




お読み頂きありがとうございます。

自覚している奴と自覚していない奴
自覚してない奴はウザかったりだけど、自覚している奴はめんどくさかったりする。

それが、個性に転じる場合もありますが。

では、また次回〜

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