問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

ジンくんのパッパとマッマってどうなったの?
教えてエラい人!!

一応、今のところは死んだ体でいきます。

では、どうぞ。


第29話 支える者 支えられる者

「…………どうしたんだい。ジンくん」

 

 優しい声色で義仁は呼び掛ける。服をつまんだその手に、自分の手を乗せる。その手は氷のように冷たく、そして震えていた。

 

 義仁振り向かない。

 

「大丈夫かい。ジンくん」

 

 服をつまんだその手は服を掴み、義仁の手を握り返した。強く握り締めたかと思えばその力はぱっと抜け、そしてまた握り締められる。

 

 その手を離さなければならない。離したくない。

 

 心の揺らめきが如実に感じ取れた。

 

「いいんだ。いいんだよ。君はまだ子供なんだから、大人を頼ってもいいんだよ」

 

 それは当たり前だったこと。それは、かつてのあの温もりと同じ。父と、母と、同じ温もり。忘れていた。いや、思い出さないようにしていた。あの、温もりと同じ。

 

 

 辛い時は母に縋り、泣き止むまでずっと一緒にいてくれて頭を撫でてくれた。

 

 悔しい事は父が一緒に見返してやろうと支えてくれた。

 

 怖い時は、二人が一緒に寝てくれた。

 

 二人が一緒なら、怖い夢もオバケも怖くなかった。

 

 

 だけど、あの日、魔王が来て、父さんも母さんもいなくなった。ノーネームの全部が僕にのしかかった。子供ながらに夢を見て、沢山の人に迷惑を掛けて、沢山の人に期待されて、それなのに、僕は弱くてちっぽけで、いつか全部が僕を見捨てるんじゃないかって怖くて……

 

「こわ…………くて…………。見捨てられないかが、ずっと、ずっと怖くて」

「うん……。怖かったんだね」

「頑張ったんだ……見捨てられないようにって……」

「うん……。ジンくんは頑張ったんだ。今まで、ずっと。頑張ったんだよね」

 

 そう……頑張ったんだ。みんなを救うために。ノーネームを復興するために。毎日仕事をして、空いた時間は勉強して、体術を覚えようともした。みんなの期待に応える為に休む時間なんて存在しない。僕は強くならなきゃいけないんだ。

 

 ダムが決壊するがのごとく、今まで独りで溜め込んできた感情が濁流となって流れていく。

 

「でも……だけど!! それだけじゃ僕は弱いままだ!! もうどうしていいかもわからなくて!! 頑張ったんだ!!

 悩んで悩んで!! ゲームの謎を解いて!!

 でも!! でも!! 僕が弱いから!! 僕がもっと早く謎を解けなかったから!! 沢山の人が死んだ!! みんなを傷付けた!!

 僕が!!

 僕が……弱かった、から……」

 

 なのに

 だけど

 それでも

 それだけじゃ

 

 結局は僕の努力不足だったんだ。僕が弱いのは、僕の努力が足りなかったからだ。

 

「ジンくん。君は一人じゃない。心配してくれているみんながいる。けど、君はみんなの期待に応えたい。みんなを頼る事が怖い。そんなことも出来ないのかって切り捨てられるのが怖いから」

 

 義仁の手を握る手が強くなる。

 

「なら、みんなの期待に応えなくてもいいじゃないか。

 僕は僕だ。皆の理想図なんてそれこそ一人一人違うんだから、それに応えることの方が無理なんだ。ジンくんだろうと、黒ウサギちゃんだろうと、白夜叉様だろうとね。

 だから、自分で自分のノルマを決めるんだ。今日はここまで。明日はここまでやるぞって。階段を駆け上がるんじゃなくて、一段一段踏み締めるんだ。

 成長が遅い? 失望した? そんなんで離れていく奴は方って置いていい。君は君だ。自分のペースで進んでいけばいい。

 それでも、辛くて、ノーネームの皆にも頼れないなら、私が愚痴を聞こう。全部受け止めよう。

 一緒に、頑張ろう。ジンくん」

 

 僕は頑張らなくちゃいけない。

 けど、一緒に頑張ろうなんて言われたのは何時ぶりだろうか。

 

 黒ウサギにも言われた気がする。いや、言われていた。レティシアさんにも言われたし、十六夜さんにも、飛鳥さんにも耀にも言われた。リリにだって言われた。それどころか子供たちからも言われた。

 

「僕は、本当の意味で、みんなを仲間だと思っていなかったのかな」

「そうじゃないと思うな。みんなが本当に大事だから、ジンくんはみんなを頼れなかったんだ。けど、まだみんなに頼るのが怖いなら、私を頼ってくれて構わないからね」

「なら、早速頼ってもいいですか?」

「なんだい?」

「最近……怖い夢を見るんです。みんなが、居なくなっていく夢を見るんです。だから、そばに居て欲しい、です」

「分かった」

 

 ジンはふらふらとした足取りでベットへと潜り込む。義仁はそんなジンの傍らに車椅子を寄せ、ジンの手を握る。

 

「おやすみジンくん。良い夢を」

 

 ジンは今までの疲れから、直ぐに寝てしまった。彼は信じる者が出来たのだ。大切なもの、守りたいものではなく、信じる者、支えてくれる者が。ジンには出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、義仁はジンの傍らに居続けた。彼のオネガイを叶えるために。朝日が登り、彼が目を覚ますまで。たった一度も欠伸をせず、ジンが起きるのを待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな、支える側になってしまった彼を、一体何が支えてくれているのだろうか。

 

 




お読み頂きありがとうございます。

支え、支えられる……そんな存在になれましたね(白目)

後数話、白夜叉との絡みを書いてアンダーウッドへと入る予定です。

出来れば耀と飛鳥との絡みも書きたい。

あ、黒ウサギも書かないと。

メインキャラがモブと化している……どうにかしなきゃな……

では、また次回〜

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