問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

スランプだと研修旅行だと言い訳しているが、もう一つ言わせて欲しいんだ……。

就職試験で面接がありました。短いのは俺のせいじゃねぇ!

はい。ごめんなさいm(_ _)m

では、どうぞ。


第26話 自分がジブンでいるために

人人人

 

 たった一人の少年を囲み、人々は騒いでいる。

 

 怒っているのか? 否

 非難しているのか? 否

 虐めているのか? 否

 

 どれもちがう。

 人々は一人の少年に期待し、憧れ、持ち上げているのだ。まだ11歳の少年を信じているのだ。

 

 そんな彼を信じているからこそ、人々は一人、また一人と消えていく。赤黒い何かをまき散らしながら。

 

 

 ※

 

 

 まだ齢11歳のジンは働き者だ。あの年にしてノーネームの備蓄管理や金銭状況を把握しコントロールしている。勿論補佐として黒ウサギやレティシアも手伝ってはいるが根本的な管理はジンが行っている。

 

 一人一人の体調管理も行っているし、南側のギフトゲームの開催状況も把握している。仲間が起こした不祥事には自ら頭を下げ謝罪する。子供に頭を下げられ許さない訳にも行かず、今のところ大事には至っていない。

 

 北側の魔王討伐では何万もの命を背負い、数少なくない命を失いながらも指揮官として立派に役目を果たした。

 

 最近ではまた一つ大きく大切な仕事が増えた。目の前には十数枚程度の手紙。サウザンドアイズのような強大なコミュニティからの手紙もあれば、近くの小さな店から来たゲームへの招待状もある。

 

 これらの手紙に全て目を通し、内容を理解し、安全かどうか、利益となるか不利益となるかを考え、ノーネームを離れた場合のことと、離れなかった場合のことを予測し、今後の予定と参照した上でこれにどう対応するのかを決定する。と言う仕事だ。

 

 ジンを慕っている者は多い。彼に期待しているものもとても多い。彼が思っているよりも、その思いは遥かに大きいものだ。不祥事に許されていたのも、それが大きいのかもしれない。

 

 薄暗い部屋の中、ジンは落ち掛けている瞼を必死に持ち上げる。意識は途切れ、また戻る。ここ数日まともに寝られていない。そして、寝たくない。寝たら、また、皆が、消えていく。

 

 ポトリと小さな水滴が手紙に大きな染みを作り出した。

 

 椅子の上で膝を抱え、顔を埋める。どうしても漏れてしまう声を押し殺す。

 

 

 僕は泣けない

 泣いてはいけない

 皆が頑張っていんだ

 僕が弱音をはいてどうする

 期待されているんだ

 ボクは

 期待されている

 だから泣けない

 泣いちゃダメ

 僕は強くなイ

 弱いんだ

 だから

 対面だけでモ

 強くナイと

 いけないンダ

 キタイにこたえられるように

 ナカマが見くびられないヨウニ

 ボクがしっかりシテ

 イナキャだめナンダ

 

 

 ジンは言い聞かせる。押し潰されないように、自分がジブンでいるために。

 

 顔を上げる。

 

 外は暗くなっていた。外は雨が降っていた。

 

 もはや涙は流れない。

 

 

 

 

 

 

 

「ジンくん? 今、大丈夫かい?」

 

 

 

 

 

 

 そのはずだった―――

 




お読み頂きありがとうございます。

オッサンも大概ですが、ジンくんも大概心が壊れる環境にいるんですよね。
本当にキツい時に大丈夫だと、空元気で笑う人ほどヤバイ。

そんな二人がお互いに支え会えるような存在にならんことを……アンバサ

では、また次回〜

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