問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

22 / 121
投稿です。

さて、今回もなんだ。
更にいえばクッソ短い。

では、どうぞ。


第22話 共感

 十六夜は椅子に座り、腕を組む。その対面には眼を赤く腫らした少女。隣を見ればベッドの上で目を瞑り、規則正しく腹が上下している義仁の姿。

 

 十六夜は一つ溜息を吐き乱雑に頭を掻いた。その行動に少女はビクリッと震える。それもその筈、目の前のちょいワル風の少年こと、十六夜は魔王と素手で殺り合える程の実力者。これと言った強みを持たない少女からしたらその一挙動一挙動が死に直結する。ただ、一々過剰に反応される十六夜からしてみれば鬱陶しいことこの上ないのだが。

 

 んでだ。と、十六夜は少女からの話を纏め再度少女へと確認する。

 

「ようするに、オッサンが居なければ弟は助かったかも

  しれない。のもしもの話がオッサンのせいで弟が死んだになって殺したくなった……と。そう言う事でいいんだな? キリノ」

「はい……」

 

 十六夜は項垂れる少女、キリノを見やる。正直、十六夜はキリノの心情が分からないでもなかった。それもその筈、十六夜も過去に自身の肉親とも言える人を亡くしているからだ。

 

 しかし、キリノに多少なりとも共感出来るとはいえ這いそうですかと殺すのを態々見逃すことも出来ない。未遂に終わったとはいえ、またその手を義仁に向けないと言う保証はない。まずはキリノが義仁を殺したい等と思わせないように意識をすり替えなければならない。ならば、共感させればいい。ある程度落ち着いているキリノに加え何の因果かこの部屋には似た者同士しかいないのだから。

 

「キリノ、俺もお前の気持ちが分からんでもない。俺も家族を亡くした。それはこのオッサンも同じだ。詳しくは知らねえがな」

「この人も……?」

「ああ、なんでも事故で妻と娘を亡くしたとかなんとか」

「え……」

「俺はお前の気持ちがわからんでもない。大切な誰かを亡くした。それが他殺に近いものなら俺自身何を仕出かすかわからん。だが、今の第三者としてならキリノがこれから後悔していくのが手に取るように分かる」

 

 だから、と。十六夜はキリノに一つの提案をした。

 

「だから、逆にオッサンには生きてもらってよその弟が見てきたものを見せ付けてやるのもおもしれぇじゃねぇのか? ただ殺すよりも、勝手に死なれるよりもそっちの方が良いと思うんだが、どうだ?」

「そっちの方が…………良い、かもです」

 

 十六夜は心の中でガッツポーズを取った。

 

「なら、オッサンにその旨を書いた手紙でも書いときな、俺に渡してくれたら後で渡しといてやるよ」

「はい。そうします。ありがとうございました十六夜さん」

「はいよ。いいからちゃちゃっと書いてこい。もう少ししたら祭典も再開するだろうからな。遅れないようにしとけよ」

 

 キリノは最後にもう一度十六夜へとお礼を言った後部屋を後にした。そして、部屋に残ったのは疲れた様子で背もたれに寄りかかる十六夜と、規則正しい寝息を立てる義仁の二人。

 

「このオッサンは……呑気に寝やがって…………」

 

 相手が怪我人で寝ている事が当たり前だとわかっていても悪態の一つも付きたくなるもの。

 

 なんにしても、下手に癇癪でも起こされないで本当に良かった……。と安堵する十六夜であった。

 




お読みいただきありがとうございます。

就活の履歴書書きや、バイトの店内新聞書き等に追われ手がつけられなかった。
決してネロ祭でシェヘラザード(不夜城のキャスター)縛りで時間が取られた訳ではないのです。



一回スランプに陥るとなかなか抜け出せないよね…………



では、また次回〜

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。