問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です!!

本来なら箱庭についての説明からノーネーム本拠へと続きますが、ここでは、ノーネーム本拠移動後、箱庭やその他諸々の説明となっております。
ご了承ください。

では、どうぞ!!


第2話 コミュニティ

「……う……う~ん……」

 

 飛鳥の暴走から数分がすぎた頃。黒ウサギが目を覚ました。

 

「あ……あれ……?ここは…………あっ!!4人目!!」

 

 ガバッ!!と、勢いよく起き上がる黒ウサギ。未だボヤける視界を、必死に凝らしながら辺りを見渡す。すると、焚き火の近くで仰向けになっている男を発見した。その事に一先ず安心する黒ウサギに十六夜から声が掛かる。

 

「よお、お目覚めか? お前には聞きたいことが山のようにあるが……取り敢えずは落ち着けるところに案内してくれ」

「そうですね。取り敢えず私達のコミュニティへと案内します。今では寂れたところではありますが、治療器具は豊富です。そちらでこの箱庭についてもお話させていただきます。急ぎましょう」

「分かった。俺はこのオッサンを運ぶから、そっちの猫と女は任せた」

 

 十六夜は規則正しい寝息を立てる男を背中に背負い、焚き火を足でかき消した。

 

「よし、それじゃあ案内は任せた」

「任されました。それでは、付いてきてください」

 

 黒ウサギは少女を抱え歩き始めた。

 

  ※

 

 場所は箱庭に二一○五三八○外門。ペリドット通り・噴水広場前。

 そこに一人黄昏ている少年がいた。

 

「黒ウサギ……遅いな……もう皆帰ったし……もしかして、協力を得られなかった?」

 

 少年独り言が閑散としている通りに響く。

 

(協力を得られなかったら、僕達は箱庭を捨てて外に移住するしかないのかな……)

 

 少年の小さな手のひらが固く握られる。ギュッと瞑られた瞳は少し潤んでいた。

 

「だ、駄目だ。僕がこんなんじゃ。僕は新しいリーダーなんだから」

 

 目を擦り、自分の置ける立場を理由に無理矢理自身を奮い起こす。

 

「ジン坊ちゃーン!!」

 

 はっと顔を上げる。そこには切羽詰まった表情で走ってくる黒ウサギ達の姿。

 

「な、なにがあったの黒ウサギ!?」

「説明は後ほど、今はコミュニティへと急ぎましょう」

「わ、分かった」

 

 ダボダボのローブに跳ねた髪の毛が特徴的な少年、ジン坊ちゃんと呼ばれた少年が今度は先導する形で黒ウサギ一行は箱庭の世界へと足を踏み入れた。

 

  ※

 

 黒ウサギが溺れていた男をベットへと寝かせた。その周囲には点滴のようなスタンドや、包帯等といった医療器具が揃えられていた。

 

「よし、これでもう大丈夫です」

 

 黒ウサギの手には赤く染みた包帯やブレザーが握られている。

 

「リリ、少しの間任せても大丈夫ですか?」

 

 黒ウサギは汚れ物をリリと呼ばれたきつね耳の少女に手渡しながら尋ねる。それに対しリリは緊張した顔で、

 

「は、はい!!任せてください!!」

「頼みましたよ?」

 

 黒ウサギはリリの優しく撫でる。リリは気持ち良さそうに目を細め、看護の準備を進めるために部屋を去っていった。

 

「で?説明はしてくれるんだろ?外の有様も込みで」

「はい。取り敢えず此処ではアレなので、客間で話をしましょう」

 

 黒ウサギは部屋の扉を開き、外に出るように促す。

 十六夜たちはそれに頷き後を追う。

 

「……えっと……どう言う状況?」

「いいから行くぞ、猫娘」

 

  ※

 

 軽く100人は入れるので無いかと思われる大きな部屋。赤を基調とした部屋の壁には装飾用の剣や槍。絵画が飾ってある。しかし、剣を飾る為の起き台は所々不自然に空きがある。更には、絵画飾られていない額縁も目に付いた。

 

「なあ、ここ限定で大災害が連続で起きたのか?」

「あれは……戦いの名残です」

「ただの戦いでこんな惨状なるのか……それで?それは何百年前の話なんだ?」

「わずか三年前の出来事です」

 

 窓の外に広がる景色は、活気賑わう通りでも、自然豊かな森の中でも、美しい湖や海が見れるわけでもない。ただ、一面の砂が地面を覆い尽くしてい。所々に見える風化した建物。砂漠とはまた違った、不気味さを漂わせら外の景色。

 

 五人と一匹の間に沈黙が生まれる。そこに黒ウサギの明るい声が響く。しかし、無理をしているのは誰の目からでも明らかだった。

 

「そ、それじゃあ!!この箱庭について説明させてもらいますね!!あんまり暗い話ばかりだと面白くもありませんし!!いいですか?いいですね!?例えNOと言われても言わせていただきます!!」

 

 黒ウサギは両手を広げて、

 

「ようこそ、箱庭の世界へ!!我々は御三人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼンさせていただこうとかと召喚いたしました!!」

「ギフトゲーム?」

「そうです!!既に気づいていらっしゃるでしょうが、御三人様は皆、普通の人間ではありません!!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその〝恩恵〟を用いて競いあう為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強力な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!!」

 

 両手を広げて箱庭をアピールする黒ウサギ。飛鳥は質問するために挙手した。

 

「まず初歩的な質問からしていい?貴女の言う〝我々〟とは貴女を含めた誰かなの?」

「YES!!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活をするにあたって、数多とある〝コミュニティ〟に必ず属していただきます」

「なるほどな」

「そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの〝主催者(ホスト)〟が提示した商品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております」

「……〝主催者〟ってだれ?」

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試す試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として、前者は自由参加が多いですが〝主催者〟が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは多いです。〝主催者〟次第ですが、新たな〝恩恵(ギフト)〟を手にすることも夢ではありません。後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらはすべて〝主催者〟のコミュニティに寄贈されるシステムです」

「後者は結構俗物ね……チップには何を?」

「それも様々ですね。金品・土地・権利・名誉・人間……そしてギフトを掛け合うことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑む事も可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然、ご自身の才能も失われることでしょう」

 

 黒ウサギは愛嬌たっぷりの笑顔に黒い影を見せる。

 それは挑発と言ったものではなく、不安の様なものに感じられた。

 そして、十六夜の一言により、その表情は悲痛なものと変わった。

 

「だとすれば、あのオッサンは自身の命を掛けて〝恩恵〟とやらを取りにいかねぇとならねぇわけだ。まあ、あのオッサンが恩恵を持っていないとも限らないし、この世界に留まるかも分からない。だが、アンタらの様子を見るに意図して呼ばれた訳じゃないんだろ?あのオッサンは」

「……はい。私たちがお呼びしたのは貴方がた三名。そちらの猫さんのように、小動物で、その方と関わりの深い存在が一緒に紛れてくることは稀にあります。ですが……」

「誰とも関わりを持たず、ましてや小動物ですらない人間が召喚された。前代未聞……という訳だ」

「少なくとも、黒ウサギの知る中では……それに、正規の方法で召喚された存在には箱庭からの加護が付与されます。その加護が付与されている状態では致命傷どころか傷一つ負わせることは叶いません。叶わないはずなんです!!」

「だが、現に一人こうして致命傷を負っている。つまりは、アンタらに何かしらの不手際があった訳だ。もしかしたら、俺達もあのオッサンと同じ状況になっていた可能性もある。そうだろ?」

「それは……ッ」

「まあ、そのことに対して俺は無事だし、これからどうするかはあのオッサンと、アンタら次第だからな。これ以上とやかく言うつもりは無い。そこの二人はしらんがな」

 

 十六夜は顎をクイッと動かし、飛鳥と猫を抱えた少女に話を振る。

 

「こればっかりは私たち部外者の新参者が口を出せないし、私もこうして生きてるから言及は辞めておくわ」

「……よく分かんないけど、私もそうしとく」

「よかったな」

「あ、ありがとうございます」

 

 黒ウサギは頭を下げる。

 

「それじゃあ、話を戻して……ゲームそのものはどうやったら始められるのかしら」

「それは、コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければ大丈夫です。商店街でも、商店が小さなゲームを行っていますので、よかったら参加してみてくださいな。あ、勿論この世界でも強盗や窃盗は禁止です。ギフトを用いた犯罪などもってのほかです」

 

 なら、と猫を抱えた少女が口を開く

 

「……ギフトゲームを用いてこんな惨状を作るのは犯罪には入らないの?」

「時と場合によります。不法侵入をしてギフトゲームも行わず、無理矢理暴れ始めればそれは勿論犯罪です。仮にギフトゲームを開催しようとしても、参加者側が了承しなければ相手は帰るしかありません。しかし、それが両者同意の上で、どちらかの敷地内であれば問題はありません。ですが、前者の方法で、ギフトゲームを提示し、相手の了承を得ることもなく強制的にゲームに参加させる事のできる存在がいます。そして、その存在が我々のコミュニティを破滅に追いやった存在……〝魔王〟と呼ばれる者達です。彼等は〝主催者権限(ホストマスター)〟と言う箱庭における特権階級を持つ修羅神仏で、彼らにギフトゲームを挑まれたら最後、誰も断ることは出来ません。私達は〝主催者権限〟を持つ魔王にギフトゲームへと強制参加させられ、、コミュニティは壊滅……地位も名誉も、我らを我らと主張するための旗も名前も……全てを奪われました。かつて居た多くの仲間は散り散りに、何処に居るのかさえ……生きているのかすらも分からない状態。今、このコミュニティにいるのは一二○人の子供達と、このコミュニティ現リーダーであるジン=ラッセル。それと、この黒ウサギのみ。そして、ギフトゲームに参加できるほどのギフトを持つのは私とジン坊ちゃんだけなのです」

 

 黒ウサギは、三人の顔を真っ直ぐと見る事が出来ず軽く顔を逸らしている。ジンに至っては俯き、肩を震わせていた。

 

「……貴女達の現状、そして、この後何が言いたいのかも確信できた。だから、ジン=ラッセル。貴方の口から聞きたいのだけれど?」

 

 飛鳥の言葉にビクリと跳ねるジン。その視線は泳いでいるが、何度かの深呼吸とともに、その口を開いた。その声は震え、掠れているものの……確かにその場の全員の耳へと届く。

 

「……ぼ、僕は……弱いです。このコミュニティを、復興させる程の力も無ければ、コミュニティの皆を養う事も出来ていません。でも、ですが!!もう一度、コミュニティの名と、旗員を取り戻したいです!!コミュニティの再建し、それ等を堂々と掲げたい!!だから、お願いします!!あなた方の力を貸してください!!」

「……そうだなぁ」

 

 深く頭を下げ懇願するジン。しかし必死のお願いに十六夜は気の無い声で返す。

 

「……俺は別に良いんだが、ここに入ればその魔王とやらと戦えそうだし。楽しそうだ」

「私はここでいいわよ?下手に贅沢な所よりもよっぽど楽しそうだわ」

「私も」

「満場一致だな。俺は逆廻十六夜。改めてよろしく頼むぜ」

「私は久遠飛鳥よ。そちらの、猫を抱きかかえている貴女は?」

「春日部耀。よろしく」

 

 物凄い勢いでこの壊滅したコミュニティに属することを決定した三人。それに対し、事が簡単に進み過ぎている事に呆気に取られるジンと黒ウサギ。

 

「おい、アンタらもさっさと自己紹介頼むぜ?これからは仲間なんだ」

「あ、は、はい!!改めて、ノーネームのリーダージン=ラッセルです!!これからよろしくお願いします!!」

「同じくノーネーム所属、黒ウサギと申します。よろしくお願いしますね!!十六夜さん、飛鳥さん、耀さん!!」

 

 

 

 

「あっ、ところでお風呂とか大丈夫なの?そと砂漠みたいだけど……」

 

 

 

 

 その言葉に、ジンと黒ウサギはサッと顔を逸らしたのだった。

 

 




お読みいただきありがとうございます。

第1話から沢山の指摘を頂き、敷居が高く感じております。ただ、挫けず頑張ります。

誤字脱字報告、感想、アドバイスがあれば、よろしくお願いします。

ここ違うんじゃね?等の間違い等があれば、宜しければご指摘お願いします。

では、また次回。

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