問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

先週は投稿できなくてすまない……

では、どうぞ。


第17話 自己満足

 耀は勝ち、無事ギフトゲームの決勝へと駒を進めた。その日はそれで祭りはお開き。ジンと北側のフロアマスターであるサンドラの再開。それに牙を見せ獰猛に食らいついたサンドラの兄マンドラが剣を抜きジンに襲い掛かる。それを阻止する十六夜。

 

 双方の仲は険悪なまま白夜叉が間を保ち、話を進める。その話の内容は―――

 

「負けちゃったか」

 

 耀が両手を上げ降参の意思を示した。相手はカボチャのお化けと一人の少女。義仁はよく分からないが、あのカボチャのお化けに耀は勝てないと判断したのだろう。

 

 そして、耀と対戦者が固く手を握り合い、会場から出ようとした時、それはどこからとも無く降り注いできた。

 

『黒い羊皮紙』

 

 それはノーネームの土地を破壊した存在

 それは敵に回してはいけない存在

 それは箱庭の災厄

 

 ―――魔王襲来の兆しあり

 

 魔王のゲームが始まった。

 

 

 ※

 

『ギフトゲーム名〝The PIED PIPER of HAMELIN〟

  ・プレイヤー一覧

  ・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ。

  ・プレイヤー側

  ・ホスト指定ゲームマスター

  ・太陽の運行者・星霊 白夜叉。

  ・ホストマスター側 勝利条件

  ・全プレイヤーの屈服 及び殺害。

  ・プレイヤー側 勝利条件

  一、ゲームマスターを打倒

  二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。

 

  宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

  〝グリムグリモワール・ハーメルン〟印 』

 

 ※

 

 手の中には黒い羊皮紙。話に聞いていた魔王。魔王が現れた。

 

 義仁の頭の中はどうすればいいのか、何が起こっているのかを把握することでいっぱいいっぱいだった。

 

 手元のギアスロールを食い入るように見つめ、頭に入ってこない内容を何度も読み直す。

 

 そして、決まって目に止まるのは一つの文。

 

 ・全プレイヤーの屈服及び、殺害

 

『殺害』

 人を殺すこと。命あるものを殺すこと。

 

 死なない、最低限命を保証する先程のゲームとは訳が違う。

 

 殺せるのだ、誰かを。

 殺されるのだ、自分が。

 殺されるのだ、大事な誰かが。

 

 一瞬の静寂。たった数秒の沈黙がコロシアムを包み、そして、誰かが叫ぶ。助けてくれと言わんばかりに。

 

「ま、魔王が……………魔王が現れたぞォォォォォ!!」

 

 そして、逃げ惑う足音が地鳴りとなって鳴り響く。どこに逃げればいいのかも分からずに、逃げ惑う。

 

 義仁は走った。コロシアムから抜け出すために。自分が生き残るために。

 

 走った、走った走った走った

 

 前を走る人たちの後ろをついていく形で。そして、前を走る人が投げ飛ばされた。そこには、白い巨人。建物はその剛腕で凪払われる。

 

 義仁は物陰に隠れ息を潜める。両手を口に当て、必死に。

 

 視界が揺れる、苦しい、苦しい、怖い、死にたくない、助けて、嫌だ、嫌だ

 

 心を恐怖が支配していく。汗と涙と鼻水がまぜこぜになり気持ち悪い。しかし、それすらも気にならない。足が震え、手が震え、歯と歯がぶつかりガチガチガチツとなり続ける。

 

 落ち着け、落ち着け、落ち着いてくれよォ!!

 死にたくない! 死にたくない!

 

 必死の思いで心を落ち着かせようとする。

 

 ふぅーふぅー……。息を吐き、グッと息を詰める。何で読んだか、戦場での息の整え方だかなんだか。兎に角、死にたくない。その一心で実行した。

 

 そして、心音が幾分か落ち着いた時、見た。見てしまった。

 

 すぐ近く、巨人のすぐ近くの物陰に、自分と同じく恐怖に震える少年が居たのを。

 

 少年の頭上に今にも落ちてきそうな瓦礫の山があって、そこに方向転換をした巨人の肩がぶつかったのを。

 

 そこからは条件反射だった。

 

 この世界に来て、変に自信がついたからか、私は気が付けば壁を乗り越え走り出していた。

 

 足は震えず、一直線に少年の元へと駆けてゆく。

 

 飛び出した

 手を伸ばす

 その肩を掴んだ

 頭を抱える

 瓦礫が落ちてきた

 足にぶつかる

 ごキリッと音が鳴った

 それと同時に地面へと叩きつけられた

 

「グッ……ぅぅぅう」

 

 うめき声が聞こえる。別の誰かのうめき声。腕の中には一人の少年。ひとまず目の前の危険からは救えたようだ。義仁は安堵のため息を漏らす。

 

「君、大丈夫か?」

「あ……し、足、が」

「足?」

 

 少年の足を見る。左足の脛辺りが青白くなっていた。折れている。

 

「少し待ってなさい。応急手当ぐらいならできる」

 

 義仁は上を見上げる。天井には自分たちが落ちてきたであろう大きな穴。手が届きそうにはないし、手が届いたとしても、義仁も足首を痛めてしまっているようで、どちらにせよそこからの脱出は今のところ難しそうだ。と、判断し辺りを見渡す。部屋には大きな樽が並び、瓦礫がぶつかって割れたであろう樽からは赤い液体が漏れ出していた。

 

「ここは……ワインの貯蔵庫か? それよりも使えそうなものを」

 

 瓦礫の山をひっくり返し、手頃な木の板を二つ見つけ出す。その板で少年の左足を挟み込み、自分の来ている上着で固定する。

 

「ないよりはマシだろう。私は出口を探してくるから、ここで待ってなさい」

 

 義仁の言葉に少年は頷いた。だから、義仁は安心して出口を探しに行った。

 

 あの子を助けるんだ

 

 そんな自己満足に囚われながら。




お読みいただきありがとうございます。

急ですが魔王のゲームです。
そして、義人の今回の目的(?)はこの少年を守ることです。

誤字脱字報告、感想、アドバイス等があればよろしくお願いします。

ではまた次回~

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