問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

まあ、無理矢理感あるけど見逃してね。

では、どうぞ。


第15話 スポンサー

「やっふぉおおおおおおおお! ようやく来おったか小僧どもおおおおおお!」

 

 どこから叫んだのか、和装で白髪の少女が空の彼方から降って来た。

 

 嬉しそうな声を上げ、空中でスーパーアクセルを見せつけつつ荒々しく着地。

 

 ズドォン!! と地響きと土煙を舞い上がらせて登場した、白い髪の和装少女の名は白夜叉。何を隠そう、今回の招待状の送り主である。

 

 そして、そんなド派手な登場をしてもケロリとしている白夜叉の動きが止まる。その視線の先には十六夜に担がれた男の姿。

 

「……十六夜……お主、そんな趣味があった……のか?」

「何を勘違いしてるのか分からんが、取り敢えず違うとだけ言っとくぞ白夜叉」

 

 

 ※

 

 

 白夜叉のド派手な登場の時にも目を覚まさなかった義仁が目を覚ましたのは、白夜叉がパンパンと柏手を打った直後。

 

「…………ん、んん……寝てたのか……」

 

 寝ぼけた頭を起こすため、一度大きく伸びをする。パキパキと軽快な音が鳴ると共に、少しばかり頭も冴えた。そして、今いる場所がノーネームの書庫ではない事に気が付く。

 

「―――ふむ。これでよし。これでお望み通り、北側に着いたぞ」

「「「―――……は?」」」

「……?」

 

 何故か飛鳥、耀、十六夜の三人から押さえつけられているジン。その三人がポカンと口を開け素っ頓狂な声を上げた。980000㎞と言うお馬鹿な距離を一秒程度で移動したと言われた三人がそうなるのも当然だ。しかし、義仁はそれを知らない。

 

「なにがどうなって―――」

 

 兎に角現状の確認と、目の前の少女は誰なのかを問おうと声を出す。が、十六夜達はそんな事には気付かず店外へ走り出してしまった。

 

 そして、今この場には三度目を回しているジンと、義仁からしたら謎の少女、白夜叉。そして、現状を全く理解出来てはいない義仁の三人だけとなった。

 

 白夜叉は手に持った扇を広げ愉快そうに笑う。

 

「カカカッ。訳が分からんと言う顔をしているな。まあ、無理もない。ワシは小僧たちの様子を見てくる。お主はそこで待っておくといい。説明はその時にするとしようか」

「は、はあ」

 

 そのまま白夜叉は十六夜達を追い掛け店外へと向かった。

 

 

 ※

 

 

 時間にして十分が経過しようとした頃。白夜叉と耀が部屋へと戻ってきた。

 

 その後、二人は北側で行われるゲーム〝造物主達の決闘〟について話し合い、耀がそのゲームへと参加することになった。耀の持つ他の種族の力を得る〝生命の目録(ゲノム・ツリー)〟ならば力試しのゲームでも勝ち抜ける。箱庭でも屈指の実力を持つ白夜叉からの太鼓判付きで。

 

 ただ、その場に居合わせた義仁は何が何だかサッパリ。静かに傍観しながら冷えた緑茶を飲む事に努めていた。

 

 そんな義仁に対し、白夜叉から声が掛かる。その手には見慣れた紙の束が持たれていた。タイトルは『魔王の土地』義仁のレポートだ。

 

「して、そこの。これはお主のでよいのか?」

「……そうですが」

「まず、自己紹介からさせてもらおう。ワシは白夜叉。お主たちノーネームの……まあ、支援のような事をしておったものだ」

「ご丁寧にありがとうございます白夜叉さん。私は木島義仁です。それで? そのレポートがどうかなさいましたか?」

 

 明らかに年下に見える少女。しかし、ノーネームの支援を行ってくれている人物がいる。と言うのは黒ウサギ達から聞いていた。十六夜君が和装ロリと言っていたのは事実だったのか……。

 

 白夜叉はレポートの一枚目を捲り、最初の諸元を読み上げた。

 

『魔王の土地……沼、砂漠、水没、荒地。その他にも様々な状態の汚染された土地がある。このレポートでは、このような魔王の手によって汚染された土地を復活させる事を目的とする』

 

 白夜叉は次のページへと移り、また一ページ一ページと読み進めていく。そして、一冊のレポートを読み終えた。

 

 今、白夜叉の手元にあるのは、全てのメモを要約しまとめあげたレポート。内容も箱庭ではさして珍しくない『魔王の土地』に関するもの。と、義仁は勝手に決め付けていた。

 

 しかし、白夜叉の表情は険しい。そして、その口から出てきた声も重苦しいものだった。

 

「本気か?」

「本気ですが……それほど驚くことでもないのでは?」

「魔王に汚染されたは、それ以上の神霊の手によって浄化させねばならない。それが常識だ。少なくとも、人の手だけでどうこうしようなんて考えたヤツをワシは知らん」

 

 義仁からすれば、むしろそれの方が驚きだった。しかし、今考えれば当然なのかもしれない。なにせ、神という存在が本当にいるのだから。箱庭は神の力を借り、恩恵を駆使して土地を開拓してきた。言わば、恩恵とは機械や科学と同じ。

 

 義仁の世界での先人がその体のみで土地を開拓している頃に、箱庭の先人達はブルドーザーやショベルカー等の恩恵と言う機械に乗って開拓してきた。

 

 つまり、箱庭では恩恵なくして土地を開拓することは出来ない。そんな先入観が存在しているのだ。

 

「そんな世界にお主は、真っ向から喧嘩を吹っ掛けている。今まであった常識を覆す、一種の革命を起こそうとしているのだよ。このレポートは」

「だからなんです?」

「―――ほう?」

 

 一瞬、白夜叉の顔が固まった。

 

 そう、義仁からすれば『だからどうした』なのだ。義仁の目的はノーネームの土地を少しでも改善すること。レポートに書かれているような大それた事ではない。最終的にそう出来たらいいなと言う願望が詰まったものがあのレポートなのだ。

 

 土地が改善されれば神様の位を落として依頼できる。そして、位が低い神や、精通はしてはいないが一応浄化が出来る程度の神様は高額ではあるが上位の神様に比べて格段と安い。

 

 つまりは、足掛かりを作れれば良いのだ。

 

「なるほどの……確かに土地を改善できれば掛かる費用も安くはなる。しかし、そうだとしてもどうする? あの土地は時間操作による土地の自壊。ここまで書いているんだ……方法の検討はついているのだろう?」

「まあ、一応は」

 

 白夜叉の目が見開かれた。まさか本当に浄化する方法を発見しているとは思ってもみなかったのだろう。

 

「とはいっても、まだ確証は持てませんし、見つけたのも偶然なのですが」

「よい! 話してみよ!」

 

 先程とは違った食いつき方をし始めた白夜叉に軽い困惑を覚える。

 

「あの土地を入れ換えるのです」

「入れ換える?」

「はい。確かに、あの土地は死んでいるかも知れません。しかし、追加された土は死ななかった。切っ掛けはプランターから零れた培養土でした。プランターから零れた培養土はノーネームの砂地に落ち、色も食感も変わらなかった。つまりは、魔王の呪いのようなものは残ってはいない。そう判断出来ます。では、魔王の土地に別の場所の土を混ぜこみそこで植物を栽培することが出来たとしたら? 後は人の手と、植物の力で緑化。つまりは、土地の浄化へと繋がっていくはずです」

 

 白夜叉は顎に手を当て考え込む。今なお箱庭には汚染された放置されている土地がごまんとある。しかし、義仁の言っている事が実現したら? その土地を有効利用できる可能性が生まれる。つまりは革命が起きる。一般常識を覆す、歴史に名を残す、英雄の出来上がりだ。

 

 サンプルは多い方が良い。フォレス・ガロの土地は未だ鬼化している。そこを利用できるよう買い取ってやればいい。幸いな事に彼処を買おうとしているものはおらず、かつあんなトラが管理していた為か人気がなく安い。

 

 農業に関するものを集めなくてはならないが、神霊を頼ることはしなくて良い。人間の手だけ、恩恵無しに行わくてはならない。費用も手間も省けるのだ。

 

 結論。援助をしてもダメージはさほど大きくはない。むしろ成功した場合の見返りが大きすぎるくらいだ。そして、こんな面白そうな事をやろうとしているのにワシが黙って見ていられるわけがなかろう!!

 

「よし分かった! その挑戦ワシが援助してやろう!」

「……………本当ですか!?」

「ああ! 存分に頼るが良い! さあ、義仁よ! 共に革命を起こすぞ!」

「は、はい! ありがとうございます!」

 

 棚からぼた餅とはまさにこの事。まさかのスポンサーゲットである。

 

「詳しい話や資材の話については今度するとして、この数日は祭りを楽しむと良い。帰ったら忙しかなるからな。今のうちに楽しむがよいさ」

「はい! よろしくお願いします!」

 




お読みいただきありがとうございます。

という訳で、このお話のメインは、おっさんがノーネーム土地を浄化出来るか試していく。というお話です。

誤字脱字報告、感想、アドバイス等があれば、よろしくお願いします。

では、また次回~

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