問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

おしゃけおいしいのぉぉ!!!

はい、すいません。
お酒飲み言ってました。ワインのおいしいれす。

では、どうぞ。


第118話 愚か

 予想はあたっていた。と、言うべきなのだろうか。全身の毛が逆立つような悪寒。その場に張り付けられるような重圧。

 今までとは違うナニカ。明らかにレベルが違うその存在感。勝てる勝てないではない。逆らってはいけない、目を合わせてはいけない。否、出会ってしまった時点で全てを諦めなければならない。

 

 避難所内の空気が凍り付く。酷い者は過呼吸になっているほど。

 

 そんな中、義仁は外の様子を見るため避難所の入り口へと竦む足を動かした。

 外の景色はさほど変わらず、荒れ果てた街並みが広がっていた。ただ、そんな荒れ果てた街並みの上空を悠々と飛ぶその姿。

 

 頭部は蛇のそれ。だが、顎から頭蓋を貫通するように悔いが撃ち込まれている。それが三つ。背中に一枚の「Aksara」、「悪」の旗を、双肩にボルトで縫い留めて靡かせている。

 

 三つの頭。その一つがゆっくりと義仁たちの方向を見た。それは路傍の石をふと思い立って眺めてみた程度のもの。だというのに魂ごと引き抜かれたかのような虚無。

 

 あ、死んだ

 

 声に出したか、それとも心の中で呟いただけか。それは分からない。ただ、一つ言えることは

 

「こっちを見やがれクソトカゲぇええええ!!!!」

 

 一人の勇敢な少年の手により、避難所からトカゲの注意はそれたということ。

 ドッと汗が噴き出る。文字通り生きた心地がしなかった。

 

 三頭龍は十六夜の拳を受け止めることもせずその身で受けた。〝ノーネーム〟随一の実力の持ち主。明らかな格上とはいえクリーンヒットしているのだから、一たまりもないだろう。

 

 なんてことはなく、無造作に握られた拳が十六夜を吹き飛ばした。貫通した家屋が十を超えたところでその勢いは衰えた。

 

 蛟劉に敗れたところを見ているとはいえ、その圧倒的な力を目の当たりにした義仁。彼の中で十六夜や蛟劉といった存在は一種の崇拝する存在。絶対に届くことのない高みに鎮座する絶対強者。

 

 だから、彼等の足元にも及ばない義仁が何かをしようとしてもむしろ邪魔になるだけ。だが、それでもどうにかできないかと考える、考えてしまうのが木島義仁という人間だった。

 

 そして、奇しくも彼の首元には授けられた恩恵。所持者の再生能力を高める。義仁の火傷もほんの僅かな時間で完治させて見せたその首飾り。十六夜にどれほどの効果が出るのかなんてわからない。

 

「ないよりは、マシ、だよね」

 

 未だ震える体に活を入れ、立ち上がる。震える足を殴って鎮め、走り出す。目指すは十六夜が吹き飛んだ方向。その胸に灯る仄かな明かりを届けるべく彼は愚直に、愚かな選択を取り始めたのだ。




お読みいただきありがとうございます。

おっさんがクズになってる気が……。
そ、そんなことないよね!!
大丈夫だよね!!

では、また次回~

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