問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

まあ、あれですよ、クオリティはお察しですよ。

では、どうぞ。


第117話 胸騒ぎ

 壁が迫る。義仁一人であれば、目の前の少年一人を見捨てれば、この手を振り払ってしまえば逃げ出すことは容易い。だが、それでいいのか。本当に、それでいいのか。

 

「大丈夫……一緒に、いるからね……」

 

 きっとその判断自体は間違っている。けれど、この行動は正しかった。でなければ、

 

「何をぼさっとしている!!」

 

 こんな地獄の中で、助けなんてこようはずもないのだから。

 倒れてくる民家の壁を受け止め、押し退けた。

 

「ただでさえ〝ノーネーム〟には貸しがあるのだ。貴様が死んだら余計に面倒になるだろうが」

 

 焦りからか色々と本音が漏れているが、助けられた事に違いはない。また、今義仁が直面している問題を解決できるだけの力を持っているということも。

 

「マンドラさん!!」

「な、なんだ急に大きな声を出して。いいから避難所まで走るぞ。走れるな?」

「違う!! 違うんです!! この瓦礫の中に男の子が!!」

「チッ そう言うことか。なぜこんなところにとは思ったが……。 退いていろ」

 

 瓦礫の山から退く。マンドラは義仁よりも太い程度のその腕で瓦礫を軽々と退かしていった。二個、三個と崩れないように退かしていき、最後の瓦礫を退かしたそこには微かながらも片手で大丈夫だと主張してくる一人の少年に姿があった。

 

「大丈夫キノ君!!」

 

 瓦礫が退かされるや否やキノの元へ走り寄る義仁。親指の立てられたその手を両手で包む。確かに伝わるその温もりに安堵のため息を吐くと、マンドラから声がかかった。

 

「急がぬか馬鹿者。何時ここも敵の攻撃が届くか分からんのだぞ」

「す、すいません」

 

 マンドラの声に返事を返し、キノの体を持ち上げる。どうやら瓦礫の下敷きになっていたらしく両足首が青白くなっていた。折れているのは一目瞭然。

 

「出血していないのが幸いだったか。兎に角避難所までは案内する。これ以上無茶な行動はするなよ」

 

 マンドラに釘を刺され、その後についていく。崩れてくる瓦礫はマンドラの腕に阻まれ義仁たちに降りかかることはなく、行く手を阻む炎の壁はマンドラの一振りで掻き消された。必死に走り回ったことが嘘かのように余裕をもって避難所まで逃げ戻ることができた。

 

 避難所に戻りすぐにキノを医務室まで運び込む。見た目に反しそこまで酷い骨折ではないと説明を受けた。後から来た両親に状況説明をし、命に別条がないことを伝える。父親は義仁に深く頭を下げ、母親は無事だった息子を力強く抱きしめていた。二人とも、実の息子の前で隠すことなく涙を流していた。

 

 安堵する暇なんてなかった。

 

 一際大きな揺れ。次いで何かの叫び声のようなもの。天井の照明がゆらゆらと揺れ、避難所内も今の揺れは何だと騒がしくなっていた。

 

「私は外の様子を見てくる。外に出るんじゃないぞ」

 

 マンドラは走って外に向かっていった。

 明らかに違う、地の底から響いてきた揺れ。妙な胸騒ぎ。確実に良い方向にだけは向っていない。それだけは確信できた。




お読みいただきありがとうございます。

いつも通り助けられましたね!!
さっすがおっさん!!

では、また次回~

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