問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

なんだかんだで二週間開けたのって初めてな気がする。どうもちゃるもんです。
東方祭で風を貰ったのか、はたまた15連勤に心が折れたのか知りませんが頭痛がひどく先週はそれどころじゃなかった。

ユルシテ……ユルシテ……

では、どうぞ。


第116話 ランプの光

 本来あったはずの煌びやかな街並みは姿を消し、瓦礫と炎が街を覆っていた。瓦礫に足を潰されたのだろうか、這いずりながらも逃げ出そうとする上半身トカゲの戦士。それを抱え上げ共に逃げ出す。

 

 瓦礫を押しのけ、焼け爛れる手の平をサラから貰った不死鳥の恩恵で無理やり直しながら少年を探す。

 

「男で、少し長めの黒髪に赤い瞳。耳は横に長く尖ってる、けど、その両耳の先が抉れている。名前はキトくん。どっちの方角から来たのかだけでも聞いておくべきだった」

 

 戻ろうと思えば戻れなくもない距離だが、既に後ろは炎の壁に遮られていた。

 歯がゆい思いを残したまま兎に角探すしかないと足を進ませる。腹の底から声を出す。熱い空気が喉の奥に潜り込みむせ返る。

 

 時折大きく揺れる地面に足を取られ、倒れ掛かってくる瓦礫を何とか避ける。空から降りかかってくる火の粉は義仁の体力を確実に奪っていた。

 

 足場の悪い街道、躓きこけた。その先には戦闘に巻き込まれたのだろうか、瓦礫の下、血溜まりの中で助けを求めるかのように手を伸ばす若い女性の姿。確認なんて必要ない。間違いなく死んでいる。

 その女性だけではない。瓦礫に押しつぶされたもの、焼け焦げたもの、四肢を失ったもの……。数え上げればきりがない。

 

 こんな中でたった一人の少年を見つけ出せるのか。目の前の絶望を前に義仁の足が竦む。荒くなる呼吸を誤魔化しながら少年の名前を呼び続ける。

 

 〝サラマンドラ〟本拠からは離れ、街の中心近く。街を照らす巨大なランプの下。空では今だ戦闘している影が見え、街のあちこちからは悲鳴や狂騒が聞こえ続いている。周りの音に掠れた声は掻き消されていく。

 

 だが、だが、確かに聞こえた。耳には届いていなかったかもしれない。だが、義仁には確かに届いていた。

 

 瓦礫の隙間。小さな隙間から助けを呼ぶ声が。

 

「誰かそこにいるのかい!?」

 

 もう叫ぶ気力も残っていないのだろうか、カンカンと甲高い音が隙間から響いてきた。

 

「すぐ助けるからね!!」

 

 瓦礫を押し除けて行く。しかし、瓦礫は義仁の身の丈はどはある。一人で持てるようなものではなかった。だが、何もしないわけにもいかない。

 

「動かせそうな瓦礫から退かしていくしかない!! とにかく急がないと」

 

 瓦礫を動かす。小さな隙間を少しずつ広げていく。他の瓦礫が崩れ落ちなように注意を払いながら。神経がゴリゴリとすり減っていくのを感じ、どうにか腕を通せる程度には隙間を広げることができた。

 そこから中の様子を見る。そこには、仰向けに蹲った一人の少年の姿。

 

 黒髪、耳は横長、先が抉れている。

 

「キト君!!」

 

 その声に少年がゆっくりと顔を上げた。

 

「大丈夫!! もう少しの辛抱だからね!!」

 

 そして、ランプの光が何かに遮られた。

 反射的に後ろを振り返る。それは、ひと際大きい瓦礫。否、壁が義仁を押し潰さんとしていた。




お読みいただきありがとうございます。

まあ、うん。いつものパターンだよね。うん。
病み上がりなんだ許してやってくれ。

では、また次回~

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