問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ? 作:ちゃるもん
ちゃうねん……
書きたいのがこんがらがってん……
では、どうぞ。
生き生きしていた。この世界に訪れてから初めて。ぱっと見ただけでは至って問題ないように見える。だが、それにしてはあまりにも希薄だった。
なにが原因で立ち直れたのか、それを知るものは義仁とペストを除いて居なかった。そして、知りたいと思うものも一部、〝ノーネーム〟の面々を除いて、居なかった。
サンドラが連れ去られた後、義仁のメディカルチェックを担当した者がいた。
よく言えば前向きになった。悪く言えばタガが外れた。何時自殺を図ってもおかしくはない状態。家族が死んだトラウマが何らかの要因で悪い方向に呼び戻されたみたいだと。
配膳や掃除、掃除の手伝いをしている。その顔にはまごうことなき笑顔が浮かんでおり、その周りで同じ仕事をしている〝サラマンドラ〟の者たちにも笑顔が浮かんでいた。その中には、彼を治療した者も含まれている。
誰一人として、義仁が笑顔になった事に触れようとしない。触れてはいけない。触れてはいけないナニカとして扱っていた。下手に手を出さなければ有益だと分かれば、笑顔にもなる。だれも望んで知人の自殺跡なんて見たくはない。だから、笑顔になるのだ。
ジンは気が気ではなかった。義仁がああなってしまった原因に心当たりがありすぎたからだ。
部屋に戻り怒鳴り散らしたい気持ちを抑え従者を呼ぶ。にじみ出る殺意は齢十程度のものとは思えないほどにドス黒い。そんなジンの様子が面白いのか従者であるペストはいやらしい笑顔を浮かべながら現れた。
「あらあらどうしたの? そんなに殺気だって、まるで大切なものが壊れちゃった子供みたい」
くすくすと嘲笑う。
馬鹿にされている事も腹に立ったが、それ以上に一切悪びれず隠す気もないその姿により一層殺意を覚えた。
「なぜ、約束を違えた。僕が協力しなくても良いということか?」
何時もの口調がどんなものだったかが思い出せない。それだけ激怒していた。
「別に破ってはないでしょ? むしろきっちり守ったじゃない。私がしたのはその後ですもの。能力を封じ込めていなかった自分の落ち度でしょ。私に当たらないでくれるかしら」
「確かに、それは僕の落ち度だ。だが、だからと言って義仁さんに手を出す必要はなかったはず」
「嫌いなものが苦しむ姿って気持ちいいじゃない?」
ああ、そうだ……こいつは魔王だった。なぜそんな当たり前のことを忘れていたのだろう。
「そう、それと。何か勘違いしてるみたいだけど、私は別にこのうるさい奴らから絶対解放されたいとか、解放してあげたいって思ってるわけじゃないの。できればいいなってだけ。わかる?」
本当に、なぜ忘れていたのだろう。此奴は魔王で、快楽主義のクソ野郎だってことを。
自分の愚かさと無力さを噛みしめ、精一杯の抵抗だと言わんばかりにペストの力を封じようとしたとき北側全体が揺れるほどの大きな地震が発生した。否、引き起こされた。
戦争の火蓋が切って落とされたのだ。
お読みいただきありがとうございます。
ま、まあ引き伸ばし回みたいなものだから……(震え声)
次回か次々回で一気に話し飛ぶと思いますん。
では、また次回~