問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ? 作:ちゃるもん
まあ、結局ただの愉快犯っていうね。
では、どうぞ。
「分かってた。分かってたんだ。サンドラちゃんが眠っている間に別の誰かに預ければ良かったってことぐらい。
けど、しょうがないじゃないか。あんなに穏やかな寝顔をしていたら……裏切るなんて」
「けど、結局見捨てたんでしょう?」
くすくすと小ばかにする声。黒い靄とともに現れた小さな少女。黒と白の斑模様が特徴的なワンピースに身を包んだ少女、ペスト。
「ちが……」
「違う? あの子の手を振り払ってたじゃない」
ずいっと、ペストが義仁の顔を覗き込む。事実を突きつけられ反論できない義仁。彼女の涙を拭えなかった、彼女の手を取れなかった。
あの日、目の前で息絶えていくわが子を見捨てた時と同じ。
「あの子、泣いてたわ。あの子、震えてたわ。貴方が手を伸ばしてたら、助かっていたかもしれないわね~」
「でも、十六夜君たちが関わるなって」
「人の言葉を鵜呑みにして小さな女の子を見捨てたのは気持ちい? 楽しかった? 楽しかったわよね~、気持ちよかったわよね~。大義名分を持っているんですもの」
「違う!」
振り払う。けれどペストは霧散しまた纏わりついてくる。
「助けて、きっとこの人ならまた助けてくれる。きっとそう思っていたわ。あら? まるで誰かの最後みたいじゃないかしら?」
「やめろ、やめろ!」
「黒い車輪が身体をメキャメキャって……ふふ、パパ、たすけてだって。聞こえてた?」
「やめてくれ」
聞きたくないと耳を塞ぐ。しかし、ぽかんと抉れた眼球が逃がさないと、許さない、助けてくれなかった、なんでなんでなんでなんで
自分だけが助かって
自分だけが日常を取り戻して
自分だけが笑ってて
赤黒いナニカの口がグパッっと開き
パパが死ねばよかったのに
「ヤメロ」
純白のベットにぼとっぼとっ血が滴る。赤く汚れたベットの上には愛している妻の姿。
ぐにゃりぐちゅりとその顔がゆがみ、赤黒い塊へと変貌する。
どうして
赤黒いミートボールのようなモノから音が漏れた。
口があったであろう所が上下に裂け、目があった位置はスプーンで抉り取ったかごとく真っ黒な闇を覗かせていた。
どうして
再び音が聞こえた。間違いなく目の前のミートボールからだ。
避けた口からずるりと何かが這って出てくる、我が子だった。見た目は肉塊。目の前にいるミートボールと同じ。
どうして
三度目。後ずさりするも、足を掴まれる。体を這い登ってくる二つの重さ。
べたりべたりと体につく血の跡が自身の罪の重さを表しているのかと錯覚させる。
タスケてくレナカったの?
耳の奥にこびり付くその言葉。
なぜかその言葉に安堵し、身をゆだねてしまいと思ってしまった。
二人の重みに抵抗することなく身を沈めていく。きっとこれが、本当に欲していた物なのかもしれない。
そんなことを考えながら……。
お読みいただきありがとうございます。
もうそろそろおわりそうかなーっと。
変に長くなっちゃてるし、サクッと終わらせたいところ(できるとは言ってない)
では、また次回~