問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ?   作:ちゃるもん

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投稿です。

もうほのぼの書いてればいいんじゃないかな……(迷走)

では、どうぞ。


第110話 近所の頼れるお兄さん

 飛鳥と会話を続けていると、サンドラがゆっくりと起き上がった。閉じた瞼を眠たげに擦り、ゆっくりとその瞼を開けていく。その瞼から覗く瞳は義仁を認識するとふにゃりと重力に従った。

 安心しきったその顔、枕として使われている手の平の上にはサンドラの口から零れる涎が溜まっていた。

 

 うれしい気持ちも大いにあるが、流石に涎は不愉快に思わざるを得ない。せめてタオルか何かで拭ければよいのだが、あいにく手元にはなく、飛鳥が渡そうにも炎の壁が邪魔をしている。

 少し可哀想だけど、義仁はサンドラの体を揺さぶった。

 

「ん、んん……あ、あれ、私」

「おはようサンドラちゃん。ごめんね寝てたのに」

「あ、いえ……こちらこそすいません」

 

 まだ微妙に寝ぼけているのか返事に覇気がない。つい頬が緩んでしまう。

 

「サンドラちゃん大丈夫?」

「だいじょうぶです」

「明らかに大丈夫じゃないわね。この壁さえどうにかしてもらえればいいのだけど……どうしましょう」

「はい……」

 

 飛鳥の声に反応してかサンドラが炎の壁に手を伸ばす。すると、義仁たちを覆っていた炎の壁はゆっくりと消えていった。

 

「確りしてるのか寝ぼけているのかがよく分からないわねこの子……。まあいいわ。これで移動できるわけだし、医務室に向かいましょ。ほら、サンドラも行くわよ」

 

 飛鳥はサンドラの手を取った。眠り眼のままサンドラは飛鳥に誘導されていく。義仁もその後ろを付いていく。

 

「やっぱり、まだ子供……。ジン君もそうだけど、この世界は子供に厳しすぎる」

「それは義仁さんや私たち、子供は権力を持たない事が常識だっただけの話よ。

 箱庭では、子供が権力を持ち組織のトップに座るのが普通ではないにしろあり得る世界なだけ。文化の違い。ただそれだけ。割り切りなさい」

「……そうだね」

「一児の父として許せない?」

「許せないってよりはやるせない、かな。一人じゃ何もできないってのは散々思い知らされたし」

「そうね。一人じゃ何もできない。それは誰だって一緒。私や春日部さん。十六夜君もね。誰かが魔王の呪いや、部下をせき止めてくれているから魔王との勝負に集中できる。〝アンダーウッド〟でもそうだったでしょう? 

 貴方が蚊の化け物を引き付けてくれていたから私とサラ、〝アンダーウッド〟は助かった。違う?」

「それは、うん。散々言われつづけてたらね。実感がわかないけど」

「それよくサラの前で言わなかったわね……言ってたら多分殴られてたわよ。

 まあ、なんて言うのかしら。貴方はそう、近所の頼れるお兄さんというものなのよ。この間読んだ本にそんなのが書いてあったし多分間違ってないと思うわ」

 

 少し自慢げに笑う飛鳥につられてつい笑顔がこぼれる。何はともあれ、医務室のすぐ隣の部屋へとたどり着いた。

 

「それじゃあ、私は戻るから、何かあったら読んで頂戴。それじゃあまた明日」

「また明日。おやすみ」

「サンドラは置いていくから、ゆっくり休ませてあげなさい」

 

 飛鳥は返答を聞かず部屋を出て行ってしまった。

 

「どうせなら連れて行ってほしいんだけど……、できれば話を……」

 

 漏れた言葉は飛鳥へ届かず、残されたサンドラをベットに運び、自身はソファへと身を沈めた。




お読みいただきありがとうございます。

書くだけ書いて投稿忘れるとこだったセフセフ

では、また次回〜

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