問題児たちと一緒にただのオッサンも来るそうですよ? 作:ちゃるもん
い つ も の
見切り発車はあれほどやめろと……
では、どうぞ。
〝ノーネーム〟が到着する前に義仁が目を覚ます。自分が寝ているベッドを包むように炎の壁があることに若干の戸惑いを見せた。
はて、自分は何をしていたのだったか。部屋から根け出そうとしたところまでの記憶はあれど、そこから先は思い出せない。と言うよりは思い出してはいけない気がする。
思い出そうとするたび、嫌な痛みが頭を襲う。
まあ、大方抜け出した後頭でもぶつけたのだろうと、無理やり自身を納得させる。
「一日の間に二回も気を失うなんて……って思ったけど、こっちに来てからはそう珍しいことじゃなかった」
しょんぼりと肩を落とすように呟きながら、べっどから起き上がる。
その時に袖を引っ張られていた事に漸く気が付いた。安心しきった顔で涎を垂らしながら小さな寝息を立てている少女。サンドラだ。
「……皆の助言通り、もう会うつもりはなかったんだけどな」
サンドラの頭をそっと撫でる。手の平に伝わる温もりが夢ではないことを嫌でも思い知らされる。
「ごめんね」
サンドラの安心しきった寝顔。話を聞く限り、サンドラが奪われるのは必然。あの蛟劉ですら匙を投げたのだから、それは覆しようがないのだろう。
「どうして、私はこんな小さな子一人守れないんだろうね……? こんなに近くにあるのに、いつも、いつも手が届かない。指を咥えて見ていることしかできない」
義仁の頬に涙が伝う。それを慌てて腕で拭う。泣く資格なんてないのだからと言わんばかりにサンドラに微笑みかける。
一人で全てを、なんて贅沢は言わない。だけれど、この世界、箱庭に来てリリを助けられた。多分、あれが自信へとつながった。当時は自信ではなくて目的みたいになってたけど。けれど、蓋を開けてみれば助けるどころか、変に希望を見せただけだった。上げて落とす。まさにそれだ。それに加えて、私自身の治療。きっと、この命を救う為に、多くの命が散ったに違いない。
そもそも、誰かを救いたい、守りたいと言う考え自体が烏滸がましいかったのだろう。妻と娘を見殺しにした私には……きっと……。
「だめだな、どうしても悪い考えばかりに気が行ってしまう」
「そう思考できるようになったのなら、少しは成長できたんじゃない?」
炎の壁越しに少しくぐもった声が聞こえた。声の方向を向くと、真紅のドレスを身に纏った久遠飛鳥が居た。
「にしても、この壁邪魔ね。サラから貰った不死鳥の恩恵ってやつ? どうにかならないの?」
「不死鳥の恩恵かは分からないけど、少なくとも私の意志で出している物ではないかな。いらっしゃい飛鳥ちゃん。珍しいね君から私のところに来るなんて」
「他の皆が明日の準備で忙しいから私が代表して。何時もなら断ってたけど、たまにはね。それに、最近の義仁さんは人に見えるようになってきたも」
「そ、そんなに酷かったかい?」
「ええ、そりゃあもう」
そういうと、彼女はサンドラをいちべつしにやつきながら椅子に腰を下ろした。
お読みいただきありがとうございます。
まあ、頑張ってみるようん(´・ω・`)
では、また次回〜