劇団を斬る(後編)
マインとチェルシーは表情には出していないが内心では動揺していた。
なんでこの二人がここに!?
目の前に現れたのはイェーガーズのクロメとセリューであった、特にセリューは仲間であったアカメを殺した敵でもあるのだ。
心情としてはアカメの敵を取りたい気持ちがなかったわけではなかったが今手元には帝具がなく丸腰なのである、勝ち目などゼロであった、かといって今逃げ出せば怪しまれてしまうだけである、そう思案していると双子が話しかけてきた。
「あの黒髪の奴クロメですわよね?」
「ええ、そうよ」
「あの時よりも腕上がってますわよね」
かつて双子はオールベルグのアジトで捕らえられたクロメを見たことがあるのである。
「ねえあなた達、アジトでクロメと対面とかしてないわよね?」
もし双子がクロメと対面していたらそれこそ一巻の終わりである。
「心配ないですわよ、クロメの世話は主にユリリさんが行っていましたから」
それって単にめんどくさいからやらなかっただけでは・・・とチェルシーは思ったがあえて言わなかった。
「とにかくクロメと対面してもとりあえず大丈夫ね、言っておくけど余計なこと言わないでね」
「心配ありませんわよ」
「私達をなんだと思っているんですの?」
・・・はっきり言ってあなた達の頭そんなに賢くないでしょう、チェルシーはそれを双子に言うつもりはなかった。
クロメとセリューを連れてきた劇団員が話しかけてきた。
「お前よく四人も連れてくることができたな」
「私だってやるときはやるんですよ」
「まあ俺がスカウトした娘達の方がかわいいだろ?」
その一言に双子は食いついてしまった、むきになり男の劇団員に詰め寄る。
「それは聞き捨てできませんわね」
「私達の方がかわいいですわよ!!」
勝手な行動をした双子を止めるべくマインは両者の間に入って行った。
「アンタ達そんなのどうだっていいでしょ!!」
「どうでもよくありませんわよ!!」
「女の子として無視できませんわよ!!あなたはたいしたことないからどうでもいいですけど」
「はぁ!?アタシがたいしたことない!!アンタ達ごときが調子にのらないで!!」
「何言ってますの!?私達の可愛さがわからないなんてあなたこそどうかしてますわよ!!」
チェルシーは苦笑いしながら思った、マインと双子精神レベル同じだわ・・・どうやってこの三人をなだめよう、下手を打てばさらに大騒ぎになる、するとそこにセリューが入ってきた。
「けんかはいけませんよ」
セリューは親切で止めようとしたのであるがはっきり言って迷惑である。
「あなたは!?」
「私はセリューです」
セリュー・・・双子はその名前を知っていた、親愛なるメラルドを殺した憎きアカメを殺した相手、自分達で殺すはずだったアカメを奪った人間、直接恨みはないが複雑な遺恨を感じずにはいられなかった、双子は無意識にセリューを睨みつけていた。
「どうしたのですか?怖い顔をして・・・」
まずい!!マインはどうにかこの場を切り抜ける策を思案したがとっさには思いつかない、するとチェルシーが助け舟を出したのであった。
「ゴメンなさいね、この娘達虫歯で機嫌悪いのよ」
「そうだったのですか?」
「何を言ってますの!?」
空気が読めない双子にチェルシーは内心で舌打ちした、それでも怪しまれないようにさらに畳み掛けた。
「この娘達甘いもの食べても歯磨きしないから困っているのよね」
「だから私達は・・・」
「いいからこっちへ来なさい!!」
マインは双子の腕を掴みセリュー達の側から離れた、側にいれば双子がボロを出しそうだからである。
全く・・・とんだお荷物寄越してくれたわね、マインはいらつかずにはいられなかった。
「虫歯ですか大変ですね、クロメさんも気をつけないと」
「大丈夫だよ、ちゃんと手入れしてるから」
「さすがですね」
クロメはそのことよりも彼女達のことが気になっていた、彼女達の動きは一般人と比べて明らかに無駄がなかったのである、クロメは一つ試してみることにした。
「ねえ、あなた達名前は何?」
「えッ!?アタシ達の名前?」
マインは偽名をとっさに思いつこうとしたがいざとなったらなかなか思いつかないものである、ぐずぐずしていたら怪しまる、マインが焦り出したその時。
「私の名前はリネットよ、ピンクの髪の娘はナノハ、双子の娘達はネイとメイよ」
クロメは注意深く観察したがリネットに不自然な様子は全く見られなかった。
「そうなんだ(・・・私の気のせいだったかな)」
クロメは首を傾げてそのままお菓子を口にした。
一方マインはチェルシーの機転の良さに関心しつつも複雑な気持ちであった、よくとっさに自然に嘘をつけるものだと。
セリューも別のことで悩んでいた。
「それにしてもクロメさんエキストラの一件どうするのですか?隊長の断りがなく引き受けるわけにはいきませんし」
「大丈夫だよ私劇場に来るとは言ったけどエキストラ引き受けるとは言ってないし」
「えッ!?じゃあなんで来たのですか?」
「お菓子ご馳走してくれると言ったから」
「クロメさん・・・」
クロメにその気がないのはよかったがクロメの食い意地にはセリューはやや呆れていた。
「まあ頃合いを見て丁寧にお断りしましょう」
するとその瞬間セリューの背中に何かぶつかった、セリューが後ろを振り向くと女性がいた。
「す、すいません!!」
「気にしないでください大丈夫ですから」
女性は深々と頭を下げるとその場を去って行った、セリュー達は女性に違和感を感じていた。
「今の人殴られた跡がありましたね」
「うん」
セリューは劇団員に尋ねてみた、すると今の女性は劇団員ではないのである、夕べ劇場の前で倒れていたのである、ケガの手当てをしたあと警備隊に連絡しようとしたら女性は慌てて拒んだのである、それでしばらく劇場においておくことになったのである。
「クロメさんどう思いますか?」
「彼氏に暴行されたけどおおごとにはしたくないってところじゃないかな」
このような悪行見逃しては正義の名が廃る、セリューは絶対に助けると意気込むのであった。
マイン達とセリュー達はしばらく劇団の稽古を見学していた、両者はエキストラの件を断るつもりだがなかなかタイミングをつかめずにいた、そんな中チェルシーはクロメに近づいて行った、狙いはクロメではなくクロメが食べてるお菓子であった、以前クロメがオールベルグに捕まった時にドーピング入りのお菓子の存在をメラルドから聞いたのである。
このお菓子もドーピングが入っているはず、これを確保できればシヴァに渡してドーピングの成分を分析できるかも・・・
チェルシーは隙を見てこっそり袋からお菓子をくすねようとした、お菓子をつまんだ瞬間腕に激痛が走った、クロメがチェルシーの腕をすごい力で握りしめていたからである、チェルシーの顔は激痛で歪んでいた。
「何してるの?」
クロメはすごい形相でチェルシーを睨みつけている、チェルシーは心底からゾッとした。
「どうしたんですか?」
セリューが慌てて駆けつけて来た。
「この人が私のお菓子くすねようとしたのよ」
「本当ですか?」
「う、うん、おいしそうだったから一口もらおうと」
「くすねようとしたのはいけませんがクロメさんも少し行き過ぎでは?」
「このお菓子は普通の人は食べたらダメなの、何故ダメなのかは言えないけど」
ダメとはどういうことだろう?セリューは疑問に思ったが問いただすのは控えることにした。
「とにかく今後は軽はずみなまねはやめてください」
「うん、ゴメンねもうしないから」
「ううん、私もやりすぎた」
互いに謝罪してこの騒ぎは収まった、チェルシーはマイン達のところに戻った。
「アンタ大胆なまねするわね、大事になったらどうするのよ」
「うん、我ながら大胆だと思う」
いくらクロメのドーピングの秘密を掴むチャンスとはいえ以前の自分ならこんな大胆なことはしなかっただろう、ナイトレイドに入って変わってしまったのだろうか?
「さて、頃合いを見てこの場を去るわ・・・」
突然入口のドアが激しい音を鳴らして開き複数の男達が入って来た、チェルシーとマインはその男達を見てとても驚いた、なぜならその男達の中にある男がいたからである、その男とは今夜の仕事の標的となっているイヲカルだったからである。
少し更新が遅れてしまいました、上手に文章を創ろうとしたのですが全然だめでした、これからも下手な文章になってしまうと思いますがよろしくお願いします。