サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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第八十三話

   劇団を斬る(中編)

 

 

場所は変わってイェーガーズの本部、ここではイェーガーズのメンバーは日々の任務に勤しんでいた。

 

 

「隊長、書類の整理終わりました」

 

「早いな、さすがランだな」

 

「それほどでも」

 

するとウェイブが入室してきた。

 

「ただいま戻りました」

 

「どうでした?」

 

「それが、その・・・」

 

 

ウェイブは現在帝都で頻繁に起こっている女性の失踪事件の調査をしていた、ウェイブの聞き込みの成果ははいまひとつであった、その理由は聞き込みをした人の大半が知らないの一点張りをしたからである。

 

 

「ここまで目撃者がいないとは思ってなかったぜ」

 

「そうですね」

 

ランはそう言いつつも原因は察していた、おそらく後が怖くて言いたくなかったのであろう、つまり犯人は身分の高い者の犯行である、それも普通の貴族ではないだろう、もしかしたら大臣の親族の可能性がある、そうなれば聞き込みで情報を得るのはほぼ不可能であろう、だが手をこまねくわけにはいかない、早急に手を打たなくてはとランは思考した、するとセリューとクロメがパトロールから帰って来た。

 

 

「隊長、帝都のパトロール完了しました」

 

「ご苦労、確かお前達明日の晩まで非番だったな」

 

「はい」

 

「では明日までゆっくり休め」

 

「でもいいんでしょうか?隊長達忙しいはずですのに・・・」

 

「気にするな、休める時に休むのも重要だぞ」

 

「ではお言葉に甘えます、隊長失礼します」

 

セリューとクロメは敬礼して退室した、エスデスも書類の整理をして退室しようとしていた。

 

 

「では私も失礼するぞ」

 

「軍議ですか?」

 

「そうだ、最近反乱軍に異変があったからな」

 

「確か反乱軍と同盟を結んでいる西の異民族が反乱軍とギクシャクしているとの話ですよね?」

 

「ああ」

 

「しかしなんでギクシャクしたのかな?」

 

「両者は固い絆で結ばれてはいません、利害が一致してるから同盟を組んだにすぎません」

 

 

ランはこのまま両者がギクシャクした関係を続けるとは思えなかった、帝国と戦うためには組むしかないからであるから。

 

 

「ではそろそろ時間だ、行ってくる」

 

「はい」

 

エスデスも退室して行った、部屋にはランとウェイブの二人だけになった。

 

「じゃあ書類のチェックでもするか」

 

「書類は丁寧に扱ってください、書類に何かあったらまた隊長に仕置きされますよ」

 

「わ、わかってるよ」

 

ウェイブは今まで受けた仕置きを思い出して身震いした、もうあんな目に遭うのはまっぴらである。

 

 

「それにしても・・・」

 

帝都の歪みは増していくばかりである、そのためには手柄を立てて権限を手に入れないと何もできない、あの惨劇を繰り返さないためにも・・・

 

「ラン、夕食は簡単なものでいいか?」

 

 

ランが心の中でそう思っているとはウェイブは梅雨知らずであった。

 

「はい、まかせます」

 

ウェイブは相変わらずですね、ランはクスッと微笑むのであった。

 

 

 

一方その頃セリューとクロメは街中を歩いていた。

 

 

「ねえセリュー、ケーキご馳走してくれるって本当?」

 

「はい、この先に美味しいケーキ屋さんがあるんです」

 

 

クロメはケーキをイメージしてよだれを出していた、セリューはそれを見て順調に計画が進んでいることに喜んだ。

 

 

その計画とはクロメと親交を深めるためである、今まで何度も親交を深めようとしたがクロメは必要以上にセリューと関わらないようにしたのである、その理由はわかっていた、それはセリューがクロメの姉であるアカメを殺したからである、賊に成り果てたからといってたった一人の肉親であるからクロメの気持ちも少しはわかるのであった。

 

 

これを機にクロメさんと親睦が深まればいいのですが・・・そうセリューが思案していると後ろから声がした。

 

 

「ねえ君達ちょっといいかな?」

 

後ろを振り向くと20代前半の男性がいた、見るからに一般人だったので二人は武器を構えることはなかった。

 

 

「あなたは誰ですか?」

 

男性の話によると男性はウマトラ劇団の一員で二人をエキストラとしてスカウトしたいということである。

 

 

「申し訳ありませんがお断りさせてもらいます」

 

「そんなこと言わずにさ劇場に来てくれるだけでもいいからさ」

 

「私達は大事な用があるのです」

 

「ちょっとだけでいいからさ、お菓子ご馳走するからさ」

 

お菓子ご馳走・・・その一言にクロメの耳は反応した。

 

 

「本当にちょっとだけだよ」

 

「ありがとう、じゃ行こうか」

 

「ち、ちょっとクロメさん!?私との約束は!?」

 

「大丈夫だよパパッとすませてケーキ屋に行くから」

 

あっさり承諾したクロメにセリューはア然としている。

 

・・・いくらお菓子好きだからといってあっさりしすぎです、私が言うのもなんですが・・・

 

 

クロメのお菓子好きは半端じゃない、セリューは改めて思い知ったのであった。

 

 

「セリュー来ないの?」

 

「待ってください!!」

 

セリューは慌ててクロメの後を追って行った、こうなったら手短にすませよう、この時セリューはこう考えていたがこの後それどころではない事態になったのである。

 

 

 

 

「ここが私達の劇場ですよ」

 

劇団の女性に案内されてマイン達はウマトラ劇団の劇場に到着していた。

 

 

「改めて間近で見ると壮大な建物ね」

 

 

マインとチェルシーは劇場のことは以前から知っていたが遠目でしか見たことがなかったのである。

 

「皆さんこちらへ」

 

女性の案内で劇場の中へ入っていく、すると劇場の舞台では団員が劇の稽古をしていた、その中の一人がマイン達に近づいてきた。

 

 

「その娘達はもしかしてエキストラか?」

 

「はい、私がお願いして来てくれました」

 

「そうか、助かる」

 

 

心なしか稽古している団員の数が少ないような・・・思ってたよりも食中毒で切迫しているようである。

 

 

「ちょっとまさか本気でエキストラ受ける気じゃないわよね?」

 

「もちろんその気はないわよ、ただあの双子がね・・・」

 

 

ここへ来るはめになった原因の双子ミーラとロリスは舞台を見ていた、ただどこか寂しそうであった。

 

 

「どうしたの?」

 

「・・・ちょっと思い出していましたの」

 

「数年前にメラ様とこの劇場へ来たことを」

 

 

かつて双子は仕事でメラルドと帝都へ赴き、仕事をこなしたご褒美に劇場へ連れていってくれたのである、その時の舞台は役者全員が女性であった、双子は生まれて初めて見る芝居に心から感激した、双子はこの幸せな日々がいつまでも続くと思っていた、その時は・・・

 

 

 

「・・・あの幸せな日々をアカメが壊した」

 

「私達の手でアカメを殺したかったのに・・・」

 

 

双子からアカメに対する憎悪があふれ出していた、その憎悪をマインは見逃さなかった。

 

 

「アンタ達自分達だけが不幸だと振る舞うのやめなさい」

 

 

「あなたなんかにに私達の苦しみわかりませんわよ」

 

「余計な口だししないでください」

 

 

双子の言動にマインはイラッとした、これだからガキは嫌いなのよ・・・

 

 

「全くアンタ達を教育した奴全然ダメダメね、甘やかされてバカなガキにしちゃったんだから」

 

 

その瞬間双子の雰囲気が明らかに変わった、マインに対する殺気が満ちていた。

 

 

「・・・それメラ様のこと言っているんじゃないでしょうね?」

 

 

「だとしたら?」

 

「あなた死にたいんですか?」

 

「アンタ達なんかにやられるアタシじゃないわよ」

 

「・・・言ってくれますわね、あなたこそ勘違いしていませんか?」

 

「あなたが強いんじゃなくて帝具が強いだけでしょ?」

 

「・・・言ってくれるじゃないガキ共、アタシをナメるんじゃないわよ!!」

 

 

まさに一触即発とはこのことである、両者が激突しようとしていたまさにその時。

 

 

「ちょっとあなた達何やってるのよ!?」

 

チェルシーが見かねて間に入ってきた、チェルシーがマインをなだめようとするも。

 

 

「アンタは黙ってて、このバカガキに礼儀を教えてあげるんだから!!」

 

「あなたは引っ込んでてください、メラ様を侮辱したこの女に目にもの見せてやります」

 

 

その瞬間チェルシーの雰囲気が変わった、チェルシーは三人を冷たく鋭い眼光で睨みつけた。

 

 

「・・・いい加減にして、さもないと私にも考えがあるから」

 

 

「・・・わかったわよ」

 

「仕方ありませんわね・・・」

 

 

マインと双子はとりあえずいさかいをおさめた、少なからずチェルシーの迫力に圧されたからである。

 

 

「このアタシを怯ませるなんて・・・やるじゃない」

 

普段チェルシーにからかわれているマインは殺し屋チェルシーを初めて目の当たりにして戦慄を感じずにはいられなかったのである。

 

 

「オールベルグで見習いだった頃とは別人ですわね・・・」

 

「全くチェルシーのくせに生意気ですわよ・・・」

 

双子はチェルシーがオールベルグの頃にはなかった凄みを持つようになって軽視できなくなっていた。

 

 

「ふう、全くマインったらガキンチョと同レベルでどうするのよ」

 

チェルシーは呆れつついさかいを回避できたことを安堵した。

 

 

 

「皆さんもうしばらく見物していてください」

 

 

 

団員に勧められてマイン達はしばらく観客席の辺りで舞台を見ていた、無論いつまでも見物しているわけにはいかない。

 

 

「さて、頃合いを見て適当な理由をつけて退散するとしますか」

 

 

そうチェルシーが思案していると後ろのドアが開き三人の人間が入ってきた、マインとチェルシーはその姿を見て絶句した、なぜならその人間はイェーガーズのクロメとセリューだったからであったから。

 

 

この後まさかあのような大騒動が起こるとは誰も想像していなかった。

 

 

 

 

 

 




今まで何度も書き加えてきましたが自分の小説は小説の文章になっているのでしょうか?いろいろな小説を参考にして書いているのですが、これからもこの小説をよろしくお願いします。

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