サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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第七十三話

   家族を斬る

 

 

私達は誘拐団のアジトへ向かう最中であった、予定よりも遅れたため多少早足で進んでいる、今回の参加メンバー23人ともう一人が・・・もう一人はカグラが連れてきた女盗賊である、アジトに置いていくわけにもいかないので連れてきたのであった。

 

 

「えッ、それじゃああなたが主犯になっちゃうじゃないの!?」

 

「人聞きの悪いこと言わないで、私だって好きでやったんじゃないんだから!」

 

サヨは女盗賊から今までのいきさつを聞いたのであった、彼女の名前はチホシ、彼女の話では盗みに入る家、逃走ルート、盗みを行う所用時間をすべて彼女が調べたのである、殺された二人があまりにずさんで彼女が一人で計画するしかなかったのであった。

 

 

「でも、それだけ計画的だったのになんで捕まったの?」

 

「それは・・・あの二人が欲かいて時間オーバーしちゃったのよ」

 

 

チホシが落ち込んでいるとカーコが話に割り込んできた。

 

「どこにでもいるのよね足を引っ張る馬鹿は」

 

「あなたも足を引っ張られたことあるの?」

 

南の異民族のアサシン・・・決して弱くなかったと思うけど帝具を持ってなかった私達でも対抗できたけど。

 

「そうなのよ、敵の偽情報にひっかかって危うく巻き添えをくらうところだったわ」

 

「それは危なかったわね」

 

 

やっぱりレベルの低い使い手もいるのよね、まあ当然か。

 

「まあ今もなんとか生き残っているし最後まで生き残りたいわね」

 

最後までか・・・今革命軍の状況かなりまずいことになっているし、目の前のミッションをこなすことに集中しないと。

 

 

しばらく歩いているとチホシがサヨに話かけてきた。

 

 

「ねえあなた殺し屋として手配されてる割には威圧感がないというか・・・」

 

「うん、私殺し屋になってまだ五ヶ月くらいしか経ってないから」

 

「そうなんだ、そういえばあなたの手配書が貼られる前別の手配書が一斉に剥がされていた・・・あっ!!」

 

 

チホシはあることを思いついて会話を止めた、剥がされた手配書がアカメだったということを思いだしたからである、アカメは警備隊に葬られたことで手配書が不用になり剥がされたのである、そのことに気がつかなかった自分自身に舌打ちした。

 

 

「ゴメン」

 

「謝ることないわよ、あなたが悪いんじゃないんだし」

 

「そう、これからは気をつける」

 

チホシは悪いことを言ってしまったと申し訳ないという顔をしている、サヨはアカメが死んでしまったのは自分に責任があると思っているのである、チホシを責めるつもりは全くなかった。

 

 

「・・・」

 

サヨはラバがある人物を複雑な表情で見ていることに気づいた、その人物はグラールである。

 

「ラバどうしたの?」

 

ラバが男をじっと見つめているなんてありえなかったのである。

 

「いや、ちょっと・・・」

 

そういえば本部でも彼を見ていたような、彼ラバの知り合いなのかな?

 

「ラバ彼と知り合いなの?」

 

「知り合いというか・・・」

 

ラバはいいたくない様子であった、無理矢理聞くのも悪いからそっとしておこう。

 

「気にしないでラバ」

 

「別に内緒にする話じゃないよ、彼は、グラールは俺の兄貴なんだ」

 

 

「えッ!?そうだったの!?」

 

「ああ、グラールの兄貴は次男なんだよ」

 

 

そうだったんだ、でもふに落ちないことがある。

 

「でもあの人ラバに会った時全然反応なかったけど」

 

ラバは死んだことになっている、もしラバと会えばすごく驚くはずである、なのに全く驚いた様子はなかったのである、ありえないことである。

 

「兄貴は数年前賊に襲われて左腕を失い頭に深い傷を負って大半の記憶を失ったんだ」

 

「そうだったの、どうりで・・・」

 

どうりで何の反応がなかったと思った、でもなんで革命軍にいるのかな?

 

 

「療養も兼ねて革命軍にいるんだよ、でもその条件として親父が革命軍の出資者になっているんだよ」

 

 

その瞬間サヨはある推測が頭に浮かんだ、かなりえげつない推測が・・・

 

 

「もしかしてサヨちゃんエヴァさんが親父を出資者にさせるために兄貴を襲ったのではないのかと思ってないか?」

 

 

サヨはラバにずばり推測を的中させられて驚いた、ラバはいたって平然としている。

 

「確かにあの人ならやりかねないね、目的のためなら手段を選ばない人だから」

 

「な、なんでラバはそんなに落ち着いているの、あの人がお兄さんを襲ったのかもしれないのに」

 

 

「俺にあの人を責める資格はないよ、俺はナジェンダさんと共にいるために家族を捨てたんだから」

 

 

「でもそれとこれは話が違うんじゃ・・・」

 

「違わないよ、俺は自分自身の死を偽装した、それは家族と永遠の別れを意味するからな」

 

 

サヨは何も言えなかった、理由はどうあれ家族を悲しませたことは事実だから。

 

 

「ねえラバ今のお兄さんを見てやっぱりつらい?」

 

「どうかな?今の兄貴は俺の知っている兄貴じゃないからな」

 

 

そういいつつもラバの気持ちは複雑だった、記憶が大半ないとはいえ雰囲気は自分が知っている兄貴のものであったから。

 

 

「あれからずいぶん経ったな・・・」

 

ラバはグラールとの思い出を思い出していた、ナジェンダと初めて会った日のことを・・・

 

 

 

 

 

 

ラバの回想

 

 

 

 

ラバは屋敷のリビングで父親とグラールと一緒にくつろいでいた。

 

 

「なあ兄貴、建築の本なんか読んで楽しいか?」

 

「ああ、なかなか奥深いぜ」

 

「ふうん・・・」

 

さっぱりわからねえな、まあどうでもいいけど

 

 

 

「それよりもお前は何か夢中になるものはないのか?」

 

「別に、俺はなんでもそつなくこなせるから物足りないというか」

 

「そうか、まあそのうち夢中になれるものが見つかるだろうさ」

 

 

そうかな、俺を夢中にさせてくれるものなんてそう・・・あーあ退屈だぜ。

 

するとラバの父親が時計を見て慌てだした。

 

「おっ、もうこんな時間か、こりゃいかん!」

 

「どうした親父?」

 

「今日この町に帝都から将軍が派遣なされるのだ、出迎えをせねば、グラール、ラバ、お前達も来い」

 

「わかった」

 

「はーい」

 

二人は父親と共に屋敷を出て出迎えの準備をした、ラバとグラールは将軍と会うのは初めてであった。

 

 

「なあ、将軍はどんな人なんだ?」

 

「ああ、お越しになられる将軍の名前はナジェンダ、彼女は二十歳で将軍になられたお方だ、美人だという話だ」

 

「美人か、それは楽しみだなラバ」

 

グラールはワクワクしているがラバは冷めた表情だった。

 

 

美人ねえ、二十歳で将軍になった女が美人なわけないだろ、どうせ尾ひれが付いたんだろう、きっとゴリラみたいなマッチョな女だろうさ。

 

そうラバは心の中でつぶやいた、すると一台の馬車がやってきた。

 

 

「お見えになったぞ失礼のないようにな」

 

「ああ」

 

「はーい」

 

馬車はゆっくりと止まり中から人が現れた、その人は美人ではなかった。

 

 

「・・・な、なんだ、美人なんてもんじゃねえぞ、すっげえ美人だ」

 

その将軍はとびきりの美人であった、ラバはカミナリが落ちたような衝撃を感じた。

 

「おい、すっげえ美人だな、おいラバどうした?」

 

「・・・」

 

ラバはナジェンダを見て放心状態であった。

 

「もしかしてほれたか?」

 

「な、な、何言ってるんだよ!?」

 

ラバは顔を真っ赤にして否定したが説得力がなかった。

 

「隠すなって、おい麗しの将軍様がお越しに来るぞ」

 

 

ナジェンダは三人の元に近づき挨拶した。

 

「私がこの街に派遣されたナジェンダだよろしく頼む」

 

「遠路はるばるようこそいらっしゃいました、こちらこそよろしくお願いします」

 

「ところでそこの二人は?」

 

「はい、私の息子です」

 

「そうか、よろしく頼むぞ」

 

 

「俺はグラール、今後ともよろしく」

 

「・・・」

 

ラバはナジェンダに見とれていて話しかけることができなかった。

 

 

「こらラバ、挨拶せんか!!」

 

父親に叱られ慌ててラバは挨拶した。

 

「は、はい、お、ぼ、ぼ、僕はラバックです、よ、よろしくお願いします!!」

 

ラバは緊張でかみかみしまくっていた。

 

 

「そう緊張するな、よろしく頼むぞラバック」

 

「はい!!」

 

ラバは力一杯返事をした、ナジェンダはその仕草に微笑んだ、そしてナジェンダはラバックに握手をした、するとラバの頭から湯気が一気に噴き出しラバは再び放心状態となった。

 

「では屋敷にどうぞ小さいですがパーティーを用意しています」

 

「お心遣い感謝する」

 

ラバの父親はナジェンダを屋敷へ案内していった、ラバとグラールがその場に残された。

 

「おい、大丈夫か?」

 

ラバの耳はグラールの言葉を完全にスルーしていた、相変わらずラバの頭から湯気が噴き出していた。

 

 

・・・あの人の手すっげえ柔らかい、そしてすっげえいいにおいだ・・・ラバはナジェンダと握手した手をくんくん嗅いでいる。

 

 

「お前ここまでめろめろになるとはな、あの人はすげえ美人だからわからんでもないけど」

 

「・・・ああ、これが一目惚れって奴だな」

 

「お前これからどうする、告白でもするか?」

 

「いや、俺はあの人にとってはただの子供でしかない、だからまずあの人の近くに居場所を作る」

 

「作るって?」

 

「そうだな、まずは兵士になってあの人の傍に仕えたい、そしてあの人の信頼を得たい」

 

「おいおい簡単にはいかないぞ」

 

「百も承知さ、だけど俺はもう決めたんだ」

 

 

ラバも自分がここまで情熱的に行動するとは思わなかった、だがもうこころが止まらないのだ。

 

「そうか、なら徹底的にやりな、そしてドンと告白しておもいっきり砕けてこい!!」

 

「砕けたらダメだろ!!」

 

「そうだったな、はははは!!」

 

「兄貴見てろよいつかあの人を落としてやるからな」

 

ラバは自分の人生はようやく始まったような気がしていた、どんな困難が待っていても乗り越える自信に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

現在

 

 

・・・兄貴、今でも俺の恋を応援してくれたこと感謝してるんだぜ、たとえ記憶を失っているとしても、兄貴は自分の道を歩んでくれ、俺は俺の道を歩むからさ。

 

 

もう昔には戻れない、だからこそ自分が熱望する未来を勝ち取らなければならないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はラバとナジェンダの初対面の場面を書きました、話に深みをつけるためラバの次男を設定しました、原作ではラバの兄弟は登場しなかったので登場させました、グラールの声はウェイブの声をイメージしてください、これからも応援お願いします。

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