サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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革命軍幹部から処刑宣告されてしまったナジェンダ、どうなってしまうのかご覧あれ。


第六十八話

   本部を斬る(後編)

 

 

ナジェンダが処刑を言い渡されて皆ア然としていた、サヨも頭が真っ白になっている。

 

 

そ、そんな・・・ボスが打ち首・・・全くのお咎めなしになるとは思ってなかったけど・・・こんなのって・・・

 

 

「待ってください、ナジェンダさんの処刑考え直してください!!」

 

ラバが真っ先に弁護した、さすがラバ、私なんか混乱してうろたえるだけだったのに。

 

 

「待てだと?私を誰だと思っている、私はお前達の最高指揮官で革命軍の幹部だぞ」

 

「わかっています、だけどあえて申し上げます、あの一件はナジェンダさんに落ち度はありませんでした、俺達が駆けつける前にエスデスが現れた時点でもうどうにもなりませんでした!!」

 

ラバは額に汗を流しながら弁護している、ナジェンダを処刑させないよう必死であった。

 

「つまり、我々本部に責任があると?」

 

「・・・はい、恐れながら」

 

この時ラバは死を覚悟していた、エヴァを激怒させればラバも処刑されてしまうからである、むろん覚悟の上である。

 

 

「いい度胸だな・・・まあ、帝具を持ち出された時私は本部にいなかったからな、責任はないわけではない」

 

「では・・・」

 

ラバは処刑を取り消してくれると少し期待した、だが・・・

 

 

「だからといって帝具6つの損失の失態を帳消しにしろというのは虫が良すぎるぞ」

 

「それは・・・」

 

ラバは言葉が詰まった、痛いところをつかれたからである。

 

 

・・・どうする、このままじゃナジェンダさんが処刑されてしまう・・・どうすれば・・・

 

 

「だったら私達が新しい帝具を持ってきますよ!!」

 

サヨはこの状況を見かねて思わず叫んでしまった、だがもう後に引けない。

 

「帝具を補充すればボスの罪状も帳消しになりますよね」

 

「お前、自分が何を言っているのかわかっているのか?」

 

 

わかっているわよ・・・それがどれだけ難しいのか・・・でもボスをみすみす処刑させるわけにはいかない。

 

「わかっています、でも他に私達ができることはそれしかないから」

 

「サヨ、控えろ」

 

ナジェンダはキッとサヨを睨みつけて下がらせようとした、だがサヨは下がるつもりはなかった。

 

 

・・・ボスはなんで落ち着いているの?このままじゃ処刑されてしまうのに・・・

 

 

「落ち着け、私を即座に処刑するつもりなら全員を本部に呼びださないだろう」

 

 

それってどういうこと?それってまさか!?

 

 

「気づいたか私のもくろみに」

 

「ああ、私がどう動くか観察していたんだろう?」

 

「そうだ、もしお前が取り乱して命ごいをしていたらこの場で私がお前の首を切り落としていたぞ」

 

 

そうだったの!?じゃあボスの処刑も冗談・・・サヨの安心した顔を見てエヴァはニヤリと笑った。

 

「いや、処刑は本当だぞ」

 

「そんな!!」

 

何よそれ・・・それじゃあ事態はたいして好転してないじゃない・・・

 

 

「猶予はどれくらいある?」

 

ナジェンダは落ち着いてエヴァに質問した、この事態を予想していたようである。

 

 

「西の異民族との同盟が再度結成するまでだな」

 

 

西の異民族との同盟を組めるまで?同盟は組んでほしいけどそうなったらボスの命が・・・

 

 

「同盟を組めるめどは立っているのか?」

 

「あいにくまったくない、お前にとってはいいニュースだがな」

 

・・・そうなんだ、本来喜んではいけないんだけど・・・複雑な気分ね・・・

 

 

「いいニュースなわけないだろ、一刻も早く同盟を組まないと手遅れになってしまうぞ」

 

「お前の命を奪うことになってもか?」

 

「革命軍に入った時から覚悟はできている、私の命は二の次だ」

 

 

ボス・・・本当にすごい・・・何がなんでもボスの命を助けないと・・・

 

 

「いい覚悟だ、これからも命を懸けて戦い続けろ、役立たずのアカメのようになりたくなかったらな」

 

 

役立たず!?この人アカメのことを役立たずって言ったの!?

 

 

「なんだ?文句があるのか?」

 

 

「役立たずってそんな言い方ないでしょ・・アカメだって・・・」

 

アカメは民の幸せのために戦って死んだのにあんまりよ・・・

 

 

「それがどうした、あいつは死んでもう戦えないのだぞ、役立たずそのものではないか」

 

薄情な物言いにサヨはさらに頭に血が昇った。

 

 

「あなたにアカメの何がわかるの!!」

 

アカメを侮辱されてサヨは黙ってることはできなかった、相手が幹部でも。

 

 

「知るか、あんな役立たずのクズのことなど」

 

クズ!?そりゃあ私達は人々から忌み嫌われている殺し屋だけど・・・言ってはならないことだけど私達はあなたの命令で汚れ仕事をしてきたのよ!

 

 

「私の替わりに汚れ仕事をしてあげたって言いたいのか?」

 

「・・・」

 

サヨは図星をつかれて言葉が詰まった。

 

「笑わせるな、その程度でいい気になるなよ、私はお前よりも遥かに多くの汚れ仕事をしてきたのだぞ」

 

 

多くの?どういうこと?

 

「革命軍がこの数年で飛躍的に大きくなったのは知っているな」

 

「ええ」

 

「どうやって大きくしていったと思う」

 

「それは・・・」

 

それは多くの支援してくれる人が集まったから・・・

 

 

「金だよ、組織を大きくするには膨大な金がいるのだよ」

 

・・・それはそうだけどこの人何が言いたいの?

 

 

「私がその膨大な金を集めてやったのだ、帝国の役人や貴族から金を奪ったり金の密輸とかしてな」

 

この人そんなことを・・・確かに軍隊には金がかかるけど・・・

 

 

「強盗する際には盗賊を装ってそいつらの家族を皆殺しにする必要があったがな足がつかないように」

 

「皆殺し!?そこまですることは・・」

 

せせら笑っているエヴァを見てサヨはひどい嫌悪感を感じた、なんでこんな人が幹部を?

 

 

「・・・お前プライムと同じ事を言うのだな、何を甘えたことを言っている、私達は帝国と戦争をするのだぞ、そうなれば何千、何万の人間を殺すことになるのだぞ」

 

 

「でもそれは・・・」

 

サヨは戦争だからと言おうとしたがエヴァの言っている事も否定できなかったのである。

 

「いいかよく聞け戦場での殺しも強盗での殺しも暗殺での殺しも同じだ、同じ悪なのだよ、しょせん我々革命軍は殺しという悪を行う集団でしかないのだよ、革命は達成してこそ革命なのだよ、失敗すればただの犯罪でしかないのだよ、どんな汚い事をしてでも勝たなくてはならないのだ」

 

 

サヨはエヴァの迫力に何も言い返す事ができなかった、戦争はきれいごとだけでは勝てない、確かにその通りなのだが何か釈然としないものがあった。

 

 

「ところでお前は村を救うために殺し屋になったのだったな」

 

「は、はい」

 

「ならばこれからもバンバン殺してしっかり稼げ、救うことは救ったという結果がすべてだ、きれいごとにこだわって救えなかったなどは論外だからな」

 

 

・・・そうね、私も村を救うために殺し屋になることにためらいはなかった・・・タツミの分までがんばるときめたんだから・・・

 

 

「言われなくてもわかってます」

 

「ならば良い、もうお前達には用はない、下がれ」

 

エヴァに指示されて一同は次々と退出していった、そんななかサヨは。

 

 

「あなたは何故革命軍に?」

 

正直この人が民のために戦うとは思えなかったのである。

 

 

「それはな・・・帝国に復讐するためだよ、それ以外は二の次だ」

 

やっぱり・・・だと思った。

 

「私はな帝国の名のある軍人の家の者なのだよ、5,6年程前政敵の謀によって家は取りつぶされてな、その報復のために革命軍に入ったのだよ」

 

 

「民を救う気持ちはないのですか?」

 

「まあ、結果を出した奴は相応に報いるがな、失敗した奴は容赦なく切り捨てるぞ、その行動を薄情と思うなよ、成功した者だけを報いるのは当然のことだろ?それが健全というものだ」

 

 

 

この人から健全なんて言葉が出るなんてはっきり言って意外・・・

 

「ちなみにきれいごとばかり言ってろくな結果を出さなかった奴はほとんど生きてはいないがな」

 

 

 

この人もしかして・・・まあこの人に慈悲を求めるなんて無理があるわね、文句を言うだけ無駄ね・・・

 

 

「それでは失礼します」

 

「ああ・・・そうだナジェンダお前に言っておく事がある」

 

「なんだ?」

 

「スサノオの奥の手出し惜しみするなよ」

 

「わかってるさ」

 

 

奥の手?そういえばスーさんの奥の手って聞いてなかったような・・・

 

 

ナイトレイドのメンバーは全員退出してそのまま兵舎に向かって行ったのであった。

 

 

 

 

「今頃皆さんエヴァさんにしぼられているんでしょうね」

 

「そうだな」

 

 

ムディとナックルは任務のため本部を後にしていた、周りは人っ子一人もいなかった。

 

 

「今でもあの時の事を思い出すとゾッとしますね」

 

「ああ、俺もあの女とはあまり関わりたくないな」

 

「あなたにしては弱気ですね、気持ちはわかりますが」

 

「弱気ではないぞ雑魚主人と一緒にするな」

 

「・・・まあとにかく先を急ぎましょう」

 

「俺が急いだらあっという間に雑魚主人など置いてけぼりにしてしまうぞ」

 

 

・・・いつもながらこの男口が悪いですね・・・まあ、慣れましたが・・・それにしてもあの女はなかなか興がありますね、あの女なら帝都に屍の山を築いてくれるかもしれません。

 

 

ムディの暗い笑い声が辺り一面に鳴り響くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




革命軍の暗部を自分なりに考えて書いてみました、どうでしたか、後、最後に少しムディとナックルを登場させました、今月号では二人共えらいことになっていました、来月号が楽しみです、あとムディの声は封神演義の申公豹を、ナックルの声はハイキューの影山をイメージしてください。

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