工兵を斬る
「すごい・・・」
サヨは岩山を利用して造られた砦を見て驚いていた、岩山をくり抜いただけの単純な砦だがちゃんと人が生活できるのである、その砦は複数存在した。
「これってすごくない、岩山をくり抜いて砦を造るなんて・・・なんて安上がりな!!」
「驚くのそこかよ・・・」
イエヤスはあきれつつも岩山でできた砦に興味を持っていた。
「それにしても誰がこの砦造ったのかな?」
「ああ、それなら向こうの岩山にいるよ」
ラバが指さした方向に岩山で工事をしている集団がいた、新たな砦を建設中であった、サヨとイエヤスはそこに向かっていった、すると見たことがない道具で岩山を掘っていた。
ドドドドドドドド!!
あっという間に岩山が掘られていった、それはツルハシでもスコップでもなかった、(この工具は大きなドリルです)
「すごいですね、あっという間に・・・」
「おう、すごいだろ、俺にかかればこんなもんだ!!」
「ちょっと浮かれないで、こないだみたいに調子に乗って岩山崩したらやり直しなんだから」
「大丈夫だって心配するな、サン」
「もう・・・」
サンという女性があきれていると三人の男が現れた、三人も見たことがない道具を持っている、特に真ん中の人は左腕が義手であった。
「サイードに何言っても無駄だぞ、そいつは馬鹿だからな」
「本当にそうだ、リーダーの俺の指示をろくに聞かないんだからな」
「とにかくさっさと片付けてメシにするか、あらよっと」
スキンヘッドの男は大型の磁石を構えた、すると鉄の鎖が巻き付いた石材が空中に浮かんだ、そしてそのまま山頂に搬送された。
「この工具は臣具なんですよね?」
帝具ではないことは明らかだった、そこまでのものではないから。
「ああ、そうだ、俺の臣具も見せてやろう」
自分をリーダーだと言った男が義手を真上に構えた、すると突然義手から火柱が上がった。(これはガスバーナーをイメージしてください)
「びっくりした!!」
「そうだろう、これは鉄だって切断できるんだぜ」
リーダーの男は鼻高々であった、だが周りの仲間はひややかであった。
「そんなんでいい気になるなんておめでたいな」
「まあ、グラールはそういう奴だからな」
「それはどういう意味だ!?」
「お前がちっちゃい奴だってことだよ」
突然上から中年の男が降りてきた、サヨ達は驚いた、突然降りてきたことに驚いたのではなく彼の足に驚いたのである、彼の足は太ももの部分から切断され代わりに大きなバネが付いていたのである。
「ちっちゃいとはどういう意味だ!?」
「言葉どうりの意味だよお前はちっちゃい男なんだよ」
「喧嘩売ってんのか!?」
「やるか!?」
グラール達はサヨ達をほっぽらかして喧嘩を開始した、サヨはア然としている。
「ほっといていいのかな・・・」
「構わないわよ、いつものことだし、それにもうすぐ終わるから」
すると突然どこからともなくロープが投げ込まれ瞬く間にグラール達を縛り上げた。
「おい、マクレーン、何しやがる」
「それはこっちのセリフだ仕事は山ほどあるんだぞ」
そう言われると何も言い返せずにだんまりした、正直大人気なかった、よくこの人がリーダーを務められていると思う。
「アンタ、あいからわずヘッポコね」
「なんだと!?」
マインの言葉にグラールは怒り心頭している。
「お前、誰が新しいアジト造ったと思っている!?」
「アンタ一人で造ったんじゃないでしょ、偉そうにしないでよ」
「ぐっ・・・」
完全にマインにおされている、マインに口で勝てる人なんてそういないけど。
「そもそも誰のおかげで温泉に入れると思っているんだ、温泉見つけるの大変だったんだぞ!!」
「ちょっと、温泉は私が発見したんだけど」
サンが間に入ってきた、グラールが自分の功績を横取りしてムッとしている。
「工兵チームの一員の功績はリーダーである俺の功績でもあるだろ」
「何馬鹿言ってるの?」
サンはグラールを睨みつけた、するとグラールは怯んだ、でも彼は虚栄をまだ張り続けている。
「まったく・・・」
サンはグラールの幼稚さに呆れている、いつものことではあるが・・・
「大変ですね」
「まだいい方よもうすぐもっとめんどくさくなるから」
「それってどういう意味・・・」
すると突然別の方向から誰かが叫びながらこっちに近づいて来る。
「ナジェンダさーん、お久しぶりです!!」
かなりテンションが高い人ね・・・めんどくさくなるってどういうことだろう。
「私はナジェンダさんに会えるのを楽しみにしておりました」
「それはどうも・・・」
ボスが困惑している・・・ボスとどういう関係なのかな?
「あのボス、この人は・・・」
サヨはナジェンダに聞いてみた、すると男の方が説明し始めた、とんでもないことを。
「私は以前ナジェンダさんにプロポーズをしたことがあるのです」
一瞬時が止まった、そして時が動き出す。
「えええええ!!?」
私とイエヤス、レオーネ、マイン、チェル、シェーレは驚いた、ブラートは少し驚いている、スーさんはまったく驚いていない、そしてラバはあまりの衝撃に開いた口がふさがらなかった。
「どういうことですかボス!?」
「それはな・・・」
ボスの説明によると彼の名前はハウル、帝国の王族だった人でボスが将軍だった頃彼にプロポーズされたのである、ボスはきっぱり断ったのだが彼は諦められなかったのである、ボスが帝国を抜けて革命軍に加入したことを知ると王族の身分を捨てて革命軍にやって来たのである。
「思いきったことしますね・・・」
「別にたいしたことありませんよ、ナジェンダさんと共にいられるのなら」
この人本当にボスのこと好きなんだ・・・ラバも裕福な生活を捨ててボスの後をついてきたんだし、二人共すごいわね。
「でもあなた兵隊なんて勤まるの?」
「いいえ、私は武芸はまったくダメです、けれど工芸の才に秀でていましたから工兵になりました」
「そうなんですか?」
「はい、会議室のナジェンダの椅子は魂を込めて造りました」
なるほど・・・どうりでボスの椅子すごく豪華だと思ったらそういうことだったのね、アジトの装飾もこの人が造ったのね、ボスの気を少しでも引くために・・・ラバさっきからすごい形相でハウルさんを睨んでる、まあ、気持ちわかるけど・・・
「ところで皆さん本部に行くのですね?」
「ああ、召集がかかったからな」
「お気をつけてください、あの方の機嫌ずっと悪いですから」
「あいつはたいていそんなものだ」
あの方?いったい誰なんだろう・・・その時のサヨはあまり深く考えていなかった、その時は・・・私達は本部に向けて再び歩きだそうとした、その時ハウルさんが。
「ナジェンダさん、この戦いが終わったら私と結婚してください」
再び私達は絶叫した、このタイミングで言うかな・・・まあ、いまだにボスに告白していないラバよりはいいかな・・・
「前も言ったが私にはやるべきことがある、受けるわけにはいかない」
「わかっています、返事はいつでも構いません、待っていますから」
「失礼する・・・」
ボスは後ろを振り向かずそのまま前に進んだ、どんな心境何だろう・・・ラバの心境も穏やかではないだろう・・・
ちくしょう・・・あの野郎、なんて図々しい・・・俺が言いたくても言えないことを・・・ぐずぐずしてるひまはないな、けどなかなか踏ん切りがつかないんだよな・・・
そうラバが思っていることなどナジェンダはつゆしらずであった。
「もうすぐ本部に到着するぞ」
いよいよ本部か・・・どんな人がいるのかな・・・サヨは複雑な気持ちで足を運ぶのであった。
今回はアジトを造った工兵チームが登場しました、全員が臣具使いで8人います、この8人のうちオリジナルキャラはリーダーの一人だけです、後は原作でモブとかで登場しています、どこで登場したかはいずれ説明します、次回は本部が舞台となります、お楽しみにしてください。