軍人を斬る
8月1日夜
帝都の城壁の外で二人の人影がある、それはウェイブとセリューであった、二人はナイトレイドの捜索をしていた、手がかりは全く見つからなかった。
「全然あいつら見つからないな」
「一刻も早く奴らを断罪しなくてはなりません」
「それにしても昨日は惜しかったな」
「ウェイブさんだらし無いですよ」
「しょうがねえだろ、奴ら空飛んでいったんだから!」
「言い訳しないでください!」
ウェイブは何も言い返すことはできなかった、理由がどうあれ捕まえることができなかったのは事実であるから。
「しかも、よりによってあのサヨを逃がしてしまうなんて・・・」
セリューは悔しさで歯ぎしりをした、サヨはセリューの師匠であったオーガを殺した敵であるから。
「悪かったよ、だからこうして捜索してるんだろ」
「口よりも足を動かしてください」
ウェイブは少しムッとしたが気を取り直して捜索を再開した、捜索範囲を広げたが人の気配はない。
「どうする、帝都へ戻るか?」
「そうですね・・・」
その時、東の空から轟音とともに何かが近づいてきた、二人は上を見上げると鳥が飛んできたのであった。
「あれは・・・」
ウェイブはその鳥に見覚えがあった、ナイトレイドを逃がした鳥そのものであった、あっという間に二人の頭上を通り去って行った。
「・・・なんですか、あれ?」
さすがのセリューもハヤテ丸を見てたまげていた、生物でないものが空を飛んでいたのだから。
「わからん、だが、見逃すわけにはいかねえ、俺があれを追う、お前はランを連れて来てくれ」
ウェイブはセリューに指示をした、だが、セリューは露骨に不安そうな顔をした。
「ウェイブさんがですか・・・一人で大丈夫ですか?」
「なんだよ俺一人だと不安なのか!?」
セリューの態度にウェイブはムッとしている。
「はい、なんか安心しきれないというか・・・」
「いいから早くランを呼んでこい!」
「・・・わかりました、頼みましたよ」
セリューは渋々指示に従い帝都へ戻った、ウェイブはやれやれの顔をしている。
「さて、急いであれを追いかけないとな」
ウェイブは剣を抜き地に突き刺し咆哮した。
「グランシャリオオオオ!!!」
ウェイブの後ろに危険種が降臨した、そしてウェイブの体に鎧として装着していく。
「よし、行くぜ!!」
ウェイブはハヤテ丸の追跡を開始した、凄まじいスピードであった。
一方、カグラは夜の飛行を楽しんでいた、ハヤテ丸は今グライダーモードでスピードは落ちていた。
「さてと、そろそろ帰ろうかな・・・」
そう思った矢先ハヤテ丸がガクンとした、何かが後ろに乗っかかったようである、カグラが後ろを見ると何者かが脚にぶら下がっている。
「捕まえたぜ!」
それはウェイブであった、ダッシュして追いついたのであった。
「あなた誰?」
「俺はイェーガーズだ!!」
「へえ、あなたがイェーガーズなんだ」
・・・彼強そうだけどどこかぬけてそう・・・面白いことになりそう・・・カグラは面白そうなおもちゃを見つけた子供のような顔をしている。
「あなた名前は!?」
「ウェイブだ!」
「あなたがあの有名な間抜けのウェイブなんだ」
むろんそんな通り名はない、カグラが勝手につけたのである。
「誰が間抜けだ!!」
怒ってる、怒ってる・・・やっぱ面白い・・・予想通りのリアクションでカグラは満足だった。
「何笑ってやがる!」
「面白いから笑っているんだよ」
・・・ふざけた奴だ・・・ナメやがって・・・ウェイブは怒り心頭だった。
「お前、名は?」
「名乗る名前はないよ、私はカグラだよ」
「名乗ってるじゃねえか!!」
ウェイブのいらいらがたまってきているのが手に取るようにわかった、本当に面白いおもちゃだとカグラは思った。
「ところでお前ナイトレイドとどういう関係だ?」
「みだらな関係だよ」
「・・・ふざけるな」
「そんなに怒らないでよジョークだよ」
からかいにぶちギレ寸前のウェイブにカグラは内心笑いが止まらなかった、もっと面白くしようとカグラは思った。
「ナイトレイドは友達だよ」
「お前・・・あいつらが何者か知ってるのか!?」
「殺し屋」
ウェイブはア然とした、殺し屋と友達とあっさり言ってのけるこいつの神経どうなってるんだ・・・
「いいか、あいつらは帝都の治安を乱す大悪党だぞ、金で人殺しをする最低最悪の連中なんだぞ!!」
ウェイブの熱弁にもカグラはへえー、そうなのと言わんばかりの表情であった。
「そんなに殺し屋って嫌い?」
「当たり前だろ、あいつらは存在自体許されない連中なんだぞ!!」
「そんなことないよ、あの人達面白いし」
「なっ、そんな理由で・・・」
「何言ってんの、この世に面白いこと以上に大事なことはないんだよ!」
こいつ・・・ついていけねえ・・・ウェイブは呆れ果てている、カグラはお構いなく話を続ける。
「それに殺し屋は儲かるんだよ」
「何を言って・・・」
「だって、人殺しただけで大金稼げるんだよ、こんなおいしい商売ないよ」
人の命をなんだと・・・こいつ、いかれてるぜ・・・ウェイブは戦慄を感じずにはいられなかった、するとカグラは。
「軍人って給料もらってるよね」
「ああ、そうだ」
「軍人って人殺すことあるよね」
「まあ、任務によればな」
こいつ、何が言いたいんだ・・・ウェイブが眉をひそめているとカグラはすかさず。
「お金もらって人を殺す・・・軍人って殺し屋と同じじゃん」
「はあ!?ふざけるな、同じなわけないだろう!!」
ウェイブは軍人のプライドを著しく傷つけられ激怒した。
「なんで?うり二つじゃん」
「いいか、軍人は人を殺すこともあるがそれは軍の命令に基づいて執行されるんだ、殺し屋なんかと一緒にするんじゃねえ!!」
激怒したウェイブに怯むことなくカグラはさらに問いかけた。
「・・・軍人って上の命令には絶対なんだよね?」
「ああ、それがどうした?」
こいつ何が言いたいんだ?ウェイブが首を傾げていると。
「じゃあ、女の子レイプしろと命令されたらレイプするんだ?」
「はあ!?んなまねするわけねえだろ!!」
「なんで?命令されたらちゃんとレイプしないと」
カグラの支離滅裂な問いにウェイブは混乱し始めた、それでもなんとか冷静を保とうとした。
「ふざけるな、上がそんな命令するわけねえだろ!!」
「じゃあ、もし命令されたらどうするの?」
ウェイブはその状況を想像した、ウェイブの目の前に拘束された全裸の女性が横たわっている。
「ウェイブ、この女を蹂躙しろ!」
「そ、そんなまねできるわけねえじゃねえか・・・」
今までの威勢が完全に消えてウェイブは意気消沈している。
「えっ!?そんなことしたら命令無視になっちゃうよ」
「ち、ちが・・・」
「命令無視する軍人なんて殺し屋以下だよ」
「てめえ!!!」
殺し屋以下・・・その一言でウェイブは完全に逆上し我を忘れた、カグラはハヤテ丸の脚を揺らした、するとその拍子に脚を掴んでいたウェイブの手がズルッと滑った、そしてそのままウェイブの体は落下していく。
「バイバーイ!!」
「てめええええ!!!」
ウェイブは飛び去っていくカグラをただ見ることしかできなかった。
「以上か?」
「はい・・・」
「つまり・・・目の前でまんまと逃げられた、ということだな?」
「本当に申し訳ありません」
ウェイブはパンツ一枚で石抱きの仕置きを受けていた、痛みで大粒の涙をこぼしている。
「・・・全く、お前は腕は立つのにツメが甘いな」
エスデスはウェイブの情けなさに呆れている。
「はい、全くそのとうりでございます・・・」
ウェイブも情けなさで心がいっぱいだった。
「次も失敗すれば私自らお前に罰を与えるぞ、いいな!?」
「肝に銘じます・・・」
ウェイブはエスデスの冷たく鋭い眼光に心からゾッとした、本当にやばい、次しくじれば終わりだと。
「ところでラン、お前はどう思う?」
「はい、おそらくそのハヤテ丸は内乱の際に国外へ流出した帝具の可能性が高いと思います」
「やはりそう思うか」
「私の帝具と違って複数の人間を載せて飛行できるのです、やっかいですね」
「ああ」
ナイトレイドに高速飛行ができる使い手が加わった、それがどれだけやっかいなのか二人にはわかっていた。
「・・・」
ウェイブはカグラの言葉を思い出していた。
軍人って殺し屋と同じじゃん
命令されたら女の子レイプするんだ
命令無視する軍人なんて殺し屋以下だよ
・・・違う、軍人は殺し屋なんかと同じじゃねえし、そんなゲスな真似はしねえ・・・ましてや殺し屋以下などと・・・次は必ず!! ウェイブはカグラにリベンジを誓うのであった。
「反省してください!!」
ガゴッ!!
セリューは石を上乗せした。
「ぐおおおおお!!!」
ウェイブの苦痛の悲鳴が部屋一面に鳴り響いたのであった。
今回の話はウェイブがへこまされたという話でした、もしエスデスに命令されたらウェイブは実行するのでしょうか、それとも命令無視するのでしょうか、どっちに転んでも地獄ですね、これからも応援お願いします。