軍医を斬る
7月26日
カプリコーンの全滅から数日がたった、その間暗殺の依頼もなく、鍛練の日々が続いていた、今日も鍛練かと思いきや予想もしていないことが起ころうとしていた。
「健康診断!?」
「ああ、本部から軍医が来ることになっている、それが今日だ」
「別にどこも悪くないけど」
イエヤスが脳天気にしているとナジェンダが活を入れた。
「楽観視するな、絶対大丈夫という保障はないのだ、殺し屋は体が資本だ、いざという時病になったらどうする!」
「は、はい」
ナジェンダの迫力にイエヤスはたじたじしている、確かに体に異常があったら任務もできないのだからちゃんと健康診断しておくべきである。
「その軍医の人どんな人ですか?」
「まあ、見てのお楽しみだ」
どんな人だろう・・・あれ?マインの様子が・・・どこかおかしいのかな?
「ナジェンダさん、糸に反応が!」
「そうか、もうじき会えるぞ」
いよいよか・・・楽しみね、サヨがワクワクしていると会議室のドアが開いた、そしてその軍医が入ってきた。
「やあ、皆の衆、元気にしとったか、ウチが来たからにはどんな病気も治したるで!」
サヨの予想に反してその軍医は女の子だった、背丈はマインと同じくらいで紫色の髪でツインテール、衣装は白のノースリーブシャツで青のミニスカート、黒のネクタイ、黒のニーソックス、はっきり言って年頃の女の子にしか見えない、しかも変わったなまりであった。
「あんたらが新しく入ったサヨとイエヤスか?」
「は、はい」
「そうか、ウチの名はシヴァや、よろしゅうたのむわ」(シヴァの声は植田佳奈さんをイメージしてください)
イメージしていた軍医とは全然違うわね・・・特にこのなまりは。
「ウチのなまり気になるか?まあ、この辺にはないなまりやからな、遥か西の地方のなまりやからな」
「西?」
「ああ、ウチは西の異民族とのハーフやからな」
異民族とのハーフ?それってマインと同じ?
「ウチとマインは幼なじみやからな」
「そうなの?じゃああなたも迫害を・・・」
マインは異民族とのハーフというだけで酷いいじめを受けてきた、シヴァもきっと・・・サヨの予想に反して。
「ウチは大丈夫やったで、とっさに危険を察知して回避してきたからな、マインは鈍臭かったから回避でけへんかったけど」
「う、うるさいわね、余計なこと言わなくていいわよ!!」
マインは真っ赤になってシヴァに文句を言っている、付き合いは長いのだろう。
「マインは相変わらずどこか抜けとるな」
マインは今にもシヴァにかみ付きそうな雰囲気であった、シヴァはこの状況を楽しんでいるようである。
この人本当に軍医なのかな・・・サヨはシヴァを見て不安を感じていた、シヴァはサヨを見てサヨの心中を察した。
「あんた、ウチがホンマモンの軍医かどうか疑っとるやろ?」
「そ、そんなことは・・・」
サヨは図星をつかれて慌てた、だがシヴァは怒ったそぶりを見せなかった。
「まあ、しゃあないな、どれ、少しウチの力みせたるわ」
シヴァは手に持っていたカバンから手袋を取り出しそのまま手にはめた、そしてサヨの背中をマッサージし始めた。
「な、何!?すごく気持ちいい・・・そんなに力をいれてるようには見えないのに・・・」
サヨはあまりの気持ちよさに床に座りこんだ、サヨの息が荒かった。
「あんた、がむしゃらに鍛練しすぎやで、たまには休まんと伸べへんで」
・・・確かに少しでもアカメに近づこうとがむしゃらに鍛練してきたけど、この娘の言う通りなのかな?
「休むのも鍛練の一つやで」
サヨは休息の大切さを改めて認識したのであった。
「それにしてもその手袋、普通の手袋じゃないような・・・」
「そうや、この手袋は手先を数十倍器用にするんや」
「それってまさか?」
「そのまさかや、これは医療器具の帝具ユグドラシルや」
シヴァはカバンの中からいろいろな医療器具を取り出した、見たことがない道具もたくさんあった、これが全部帝具であることは驚きであった。
「医療器具の帝具か、そんなのまであるんだな」
イエヤスはシヴァの帝具に心から驚いていた、するとシヴァはどや顔で。
「そりゃそうやろ、戦にはケガや病気はつきものやで、あって当然やろ」
確かに・・・医療専門の帝具はあって当然よね・・・あれ!?他にも医療専門の帝具ってあるのかな、もしイェーガーズにそういう帝具使いがいたらまずいんじゃ・・・
「どうした、サヨ」
「ううん、何でもない・・(そういう帝具使いがイェーガーズにいなければいいけど)」
サヨは心から医療専門の帝具使いがイェーガーズにいないことを祈ったのであった。
「じゃあ、早速診察始めるで」
シヴァの健康診断が開始された、サヨとイエヤス以外は以前に診察を受けたことがありスムーズに進んでいた、二人にとっては健康診断自体生まれて初めての体験だった、数時間の診察が終わろうとしていた。
「さて、診断の結果皆特に目立ったケガや病気はなかったで」
皆悪い結果がなくてよかった・・・サヨは笑顔で安堵した。
「ただ、数人虫歯の治療せんとあかんけどな・・・まずはマインや」
「うそ!?」
「うそやない、奥歯に一本あったで」
マインは信じられないという顔をしている、そういえばマイン甘い物を食べた後歯を磨かなかったっけ。
「ちなみにチェルシーは虫歯なかったで」
マインはさらに信じられないという顔をした、チェルシーはいっつも飴を舐めていたのに。
「私はマインと違ってちゃんとしていたわよ」
チェルシーはマインを鼻で笑っている、見事などや顔である、マインの悔し顔も相当なものである。
「次にイエヤス、あんたは二本あったで」
「マジ!?」
「まあ、あんたは歯磨き真面目にするタイプやないな」
イエヤスは何も言えなかった、まさにそのとうりだから。
「ぷぷぷ、二人ともだっさ」
レオーネは二人の様を見て吹き出していた、だがシヴァはあきれた表情でレオーネを見ている。
「・・・レオーネ、笑っとる場合ちゃうで、あんたが一番酷いんやで」
「うそ!?」
「うそやない、あんたしょっちゅう酒飲んで歯磨かずに寝とるやろ」
「ま、まあ・・・」
レオーネは言葉が詰まった、心当たりがありすぎたから。
「このままほっといたら歯槽膿漏になるで」
「うそー!!?」
レオーネは大ショックだった、この若さで歯槽膿漏だなんて・・・ちなみにこれはシヴァのうそだがこのくらい言わないとレオーネは危機感を持たないとシヴァは思ったからである。
「レオーネ、この際だ徹底的に治療しておけ、シヴァ遠慮はいらんぞ」
「もちろんや」
それからすぐに三人の歯の治療が行われた、マインとイエヤスの治療はすぐ終わったが、レオーネの治療は少々てこずった、レオーネが逃げだそうとしたからである、スサノオがレオーネを取り押さえて治療が行われた、凄まじい治療にレオーネは悲鳴を上げて失神した。
「これで健康診断は完了や、皆、お疲れさん」
シヴァの顔には達成感があった、診察した者に病気がないのは医者として喜ばしいからである。
「遠路はるばるすまなかったな」
「別にたいしたことあらへん、それよりも・・・アカメ、残念やったな」
「気にするな、いつか誰かが死ぬことは覚悟していた、あいつもその覚悟はしていた」
「そうやな・・・」
シヴァはアカメのことを思い出していた、アカメからあることを頼まれていたからである。
この薬を分析してくれ
ああ、わかった
もし、薬を無効化できたらクロメはこれ以上体を蝕まれることはないだろう・・・
けどええか、無効化できてもクロメは元の体に戻すことはでけへんで
わかってる
それにクロメはあんたを受け入れるともかぎらんで
ああ、それもわかってる、その時は私がクロメを・・・
そうか・・・わかった、ウチもできる限りのことはするわ
感謝する
・・・無効化のめどつきかけとったけど無意味になってもうたかな・・・
シヴァは心の中でつぶやいた、アカメが聞いたら喜んだだろう・・・
「じゃあ、ウチは本部に戻るで、健康には気いつけなあかんで、そや、マイン、チチおっきくするマッサージ教えとくわ」
「結構よ!!余計なお世話よ!!」
「はは、じゃあ、さいなら」
シヴァはマインをからかって本部へ戻って行った、シヴァがいなくなったらアジトが静かになった。
「にぎやかな人でしたね」
「ああ、あれでも腕は確かだ」
「これからは人一倍健康に気をつけます」
「その意気だ殺し屋は体が資本だからな、特にレオーネ、お前は10倍気をつけろ」
「ど、努力します・・・」
正直レオーネが規則正しい生活送れるとは思えない、今夜も大酒飲んで夜更かししそう・・・
サヨの予想どうりレオーネは大酒飲んで酔い潰れたのであった。
今回は医療器具のオリジナル帝具を出しました、パーフェクターは医療に詳しくない人間が適合したら医療が使えない事態になるので医療専門の帝具があると自分なりに思いました、あと、異民族のハーフがマイン一人だけとは思えないので登場させました、これからも応援お願いします。