恩人を斬る(後編)
「ロ、ローグが・・・」
ピエールはローグがやられて呆然としていた、囚人兵がやられるのは想定していたがローグがやられてしまうのは全く想定していなかった、ボルスはローグよりも弱かったはずであった、それがボルスがローグを倒してしまった、ピエールの戦術は完全に崩壊してしまったのであった。
「ピエールさん!!」
ダンは急いでピエールの元へ駆け寄ろうとした、もう勝敗は決しており、ピエールを連れてこの場から逃げなくてはならなかった、だが、ダンの行く手をエスデスが阻んだ。
「逃がさんぞ!」
エスデス・・・革命軍において最強、最悪として認知されており、ダンもエスデスの強さは認知していたはずだった、だが、今目の前にいるエスデスは最強すら生温かった、これは人間なのか?そう思えるほどエスデスの強さは段違いだった。
「突破させてもらいます!」
エスデスを突破しなければピエールさんの元に駆けつけない、ダンは腹をくくった。
「何故あんな俗物に尽くす?」
エスデスから見ればピエールという男はとても英傑とは言えなかった、少なくともこの男の方が強かった。
「確かに、そう見られても仕方ありません」
ダンはピエールとの最初の出会いを思い出していた。
ピエールはとある山奥に来ていた、噂で屈強で醜い顔の山男がいると噂になっていたから、すると突然森から大男が現れた。
おぬしが噂の山男か?
はい・・・
噂通り強そうじゃわい
どうも・・・
どうした元気がないな?
私が怖くないのですか?
怖い?
私の顔がです・・・
そうかの?
みんなが私の顔を見て怖がるんです・・・
顔がそんなに気になるか?わがはいなどヤギそのものだぞ
ヤギの方が全然いいです・・・
ハッキリと言うな、でも気にいったぞい、おぬし、わがはいと来ないか?
そう言ってくれてうれしいです、でも、あなたに迷惑が・・・
わがはいはそんなもの気にしないのじゃが・・・ならばこれをやろう
何ですか、これ?
これは帝具バルザックじゃ
帝具?
まあ、要するにすごいものというわけだ、仮面の帝具じゃし、おぬしには好都合じゃろう
こんなすごいものを私に・・・
とりあえずかぶってみろ
私はこの人と歩んで行きたい
かぶったな、どうじゃ?
はい、力がみなぎります
うまく適合できたな
はい、これからもよろしくお願いします!
おう、よろしく頼む
「醜い私をあの人は受け入れてくれた、たとえすべての人があの人を忌み嫌おうとも私はあの人の側にいます!!」
ダンの嘘偽りのないまことの叫びだった。
「まさに愚直そのものだな」
そう言ったがエスデスはこういうのを嫌いではなかった。
「お前、名は?」
「ダンです」
「そうか・・・戦士としてその名を覚えておいてやろう」
「どうも」
ダンは軽く礼を言うと猛ダッシュでエスデスに向かって行った。
「来い!」
エスデスはあえて氷の矢を使わなかった、ダンと力勝負をしたかったのである。
「うおおお!!」
ダンは左の拳でエスデスを粉砕しようとした、だが、エスデスはあっさり受け止めた、そして、左手を凍りつかせてコナゴナに砕いた、だが、ダンは激痛に臆することなく右の拳を繰り出した。
「まだまだぁ!!」
エスデスは氷の壁を作り出した、ダンの拳は勢いよく氷の壁を砕いていく、だが、氷の壁も次々再生していった、それでもダンの拳は勢いが衰えなかった、そしてついにエスデスの顔面に届いたかと思ったが、あと数ミリのところで拳は止まった。
「なかなかだったぞ」
「・・・どうも」
その瞬間、エスデスの足元から氷の槍が現れ、ダンの腹を貫いた、大量の血が飛び散っていく、薄れゆく意識の中でダンは・・・
ピエールさん、あなたと出会えて本当によかった・・・
ダンの死の瞬間、仮面の帝具バルザックもコナゴナに砕け散った、ダンは轟音とともに地に倒れた、エスデスはダンの顔を見てつぶやいた。
「どれだけ醜い顔かと思えば・・・たいしたことないではないか」
エスデスにとっては上辺などどうでもよかったのである。
「ダン・・・」
ピエールはダンの死にア然としていたが・・・
「どうせ死ぬならエスデスと相打ちになればよかったのに、この役立たずが!」
「てめえ、命を懸けて戦った仲間になんて言いぐさだ!!」
ウェイブは敵とはいえ命を懸けて戦った人間が侮辱されるのを我慢できなかったのである。
「わがはいが醜い化け物でしかなかったあやつに役割を与えたのだ、むしろ感謝すべきじゃろう」
「このクズが!!」
あいつには悪いがついていく人間を間違えた、ウェイブはそう思わずにはいられなかった、だがピエールは鼻で笑った。
「フン、お前も醜いものは目を背けるクチじゃろう」
「!?」
その瞬間、ウェイブの脳裏に自分がボルスの異形の姿を見て思わずドアを閉めてしまった過去が浮かんだ。
違う、俺は・・・ウェイブに罪悪感がのしかかり動揺が生まれた、ピエールはその隙を見逃さなかった、ウェイブの顔に紙吹雪を浴びせた、ウェイブの顔に紙が張り付いていく、ウェイブは視界を閉ざされて動きが鈍った、ピエールはその隙に紙飛行機を折って飛び去った。
「ま、待て!」
むろんピエールは待たなかった、 くそ、俺は何をやってるんだ・・・ウェイブは自分の間抜けさを悔いた。
「このまま逃げきってやる、そして捲土重来の機会をまつ!」
ピエールは逃げきったと確信したまさにその時。
バキ!!
突然鈍い音が鳴り響いた、それは凍りづけになったスライムに亀裂がはいった、そしてそのまま崩れ落ちた、その中から全裸のセリューが現れた。
「逃がさんぞ、ハレンチ極まりない悪め、コロ、六番!!」
「キュ!!」
コロはセリューの義手にかぶりついた、そして、その中から巨大な爆弾みたいな物が現れた、これは変成弾道弾、スタイリッシュが作った武装兵器十王の裁きの一つである。
どうやってあんなデカイ物中に入れたんだ!?ウェイブはそう思ったがツッコミを入れなかった。
「私を恥ずかしめたその罪、爆炎と共に悔い改めろ!!」
六番は勢いよく発射された、飛び去ったピエール目掛けて、ピエールは一気に絶望に突き落とされた。
わ、わがはいはまだ終わるわけには・・・権力をこの手に・・・
ドオオオン!!
ピエールに六番が直撃し大爆発が起こった、ピエールは紙の帝具とともに木っ端みじんになった、消し炭がパラパラ落ちてきている。
「見たか、正義の力を!!」
セリューはガッツポーズを勇ましく行った、そして誇らしげにウェイブ達の方を向いた、するとウェイブは背を向き、ボルスは手で目を覆い隠し、ランは目をつむっている。
「どうしたんですか皆さん、悪を成敗した私の勇姿をよく見てください」
セリューは両手を上げてアピールしている。
「んなこと言われてもよ・・・」
「セリューさん・・・」
「今のあなたのその姿を見ろと言うのですか?」
三人は気まずそうにしている、セリューはその意味がわからなかった、セリューは自分の姿を確認するとセリューは自分が今全裸だということを思い出した。
「わ、私、裸でした、すっかり忘れてました、見ないでくださーい!!」
セリューは慌てて胸と股間を手で隠した、セリューの顔は見事に真っ赤だった。
「どっちなんだよ・・・」
「セリューさん・・・」
「もっと恥じらいを・・・」
三人は対応に困っていた、ついさっきまで死闘を繰り広げていた雰囲気は完全に消えていた。
「コロ、スペアの服を早く!!」
「キュキュキュー!!」
コロは慌ててスペアの服を取り出した、エスデスは何事もなかったように落ち着いている。
「お前達、ご苦労だった、この戦いで反乱軍は多くの帝具を失った、これからの戦いは有利になるだろう」
三つの帝具を破壊し、三つの帝具を奪取した、まさに大勝利であった。
「あと、ウェイブ、お前は帝都に戻ったら鞭打ちと毒草の全身パックだ」
仕置きが増えてる!ウェイブは心の中で叫んだがこの戦いの自分の失態を考えたら当然だった。
「では、引き上げるぞ」
「了解!」
エスデスの号令とともにイェーガーズ一同は帝都に引き上げていく、ウェイブはへこんでいた、仕置きが憂鬱というのもあるが見た目で人を判断した自分自身に嫌悪していた、するとボルスはウェイブに声をかけてきた。
「気にしないでください、私は慣れっこですから」
ボルスはウェイブを励ました、ウェイブはボルスはなんて心の広い人だと、自分は心の狭い人間だと落ち込みかけたが落ち込んだらまた気を使わせてしまうと思い胸を張ることにした。
次は下手を踏まねえ!
ウェイブは心の中で誓った、その後エスデスの仕置きでウェイブはそのことをすっかり消えてしまっていた。
オリジナルキャラクターを混ぜての戦いを書きましたが自分のイメージ通りになかなか書けませんでした、やはり戦闘シーンは書くのは難しいです、革命軍編はまだまだ続きますので応援お願いします。