記憶を斬る(後編)
エア達はバック達の死を確認して心から安堵していた、もう自分達は狙われることはないと思っていたから、その時は・・・
「これからどうしよう」
「それが問題です」
「とにかく腹ごしらえしてから考えようよ」
三人はパンが入った袋を抱えて歩き出した、このパンは腕輪でパン屋に暗示をかけて捨てるパンをもらったのである、売り物のパンは気が引けたから。
三人は公園でパンを食べている、公園には三人以外誰もいない。
「それにしてもこのパンおいしいのに捨てるなんてもったいない」
「帝都だからですね」
「切ないね・・・」
三人は故郷の村を思い出した、食べ物がなく飢えに苦しむことは珍しいことではなかったから。
「どうにかならないのかな・・・」
「私達の腕輪だけでは・・・」
「きっと私達にもできることはあるよ」
三人が話をしていると後ろから人が近づいてきた。
「やあ」
三人が振り向くとそこにはラバックがいた。
「ラ、ラバックさん・・・」
エアは思わず慌てた、こんなに早く会うことになるとは思っていなかったから。
「すいません、お金はまだ・・・」
ナイトレイドの依頼料は立て替えてもらっただけでお金を貯めて払わないといけないのであった。
「いや、金のことはいいんだ」
エア達はその言葉を意味をいまひとつ理解できなかった、お金を払わなくてもいいのは助かるけど何故私達に会いにきたのだろう?
「単刀直入に聞く・・・俺に何をした?」
三人は絶句した、まさか腕輪を使って操ったなんて言えるわけないから・・・
「はっきり言わせてもらう、君達、帝具を使って俺を操ったんだろう」
帝具?もしかしてこの腕輪のこと?
「君達の腕輪帝具なんだろう?」
まずい、ラバックさん怒ってる、それは当然よね・・・
「何のことかわかりません」
「いいや、その腕輪は帝具だ、間違いない」
ルナは何とかごまかそうとしたがラバックには通じなかった。
「何であんたにそんなことわかるんだよ?」
「俺も帝具使いだからさ」
ラバックは手の甲を三人にみせた、何か糸のような物が見える。
「それが帝具ですか?」
「ああ、クローステールっていうんだ」
どんな能力なんだろう、三人は気になったが今はそれどころではない。
「とにかく俺と一緒にアジトまで来てもらう」
「そ、それは・・・困ります」
「そうはいかない俺にも都合がある」
・・・そうはいかないんだよな、依頼料立て替えのことがナジェンダさんに気づかれてこの娘達を連れていかないと粛清されてしまうかもしれないんだ、悪いが無理矢理連れていく。
「力ずくでいかせてもらう」
ラバックは帝具を構えて臨戦態勢をとった、ラバックは本気である。
どうしよう・・・このままじゃ、捕まっちゃう、そうだ腕輪で眠らせて・・・ダメ、私達が逃げたらこの人どうなるか・・・
そうだこれなら・・・
エアはある暗示を思いつき実行に移った。
「私達と一緒に帝都から逃げて!」
その瞬間、ラバックは目をつぶった、腕輪から光が輝き、ラバックを照らした。
「・・・」
ラバックは無言で立ち尽くしている、そしてラバックは口を開いた。
「・・・わかった、君達と一緒に帝都から逃げるよ」
ラバックは笑顔で返答した、正直うまくいくかは微妙だったけど。
「じゃあ、急いで逃げましょう」
「ちょっと待った!」
三人が逃げようとした矢先どこからか声がした、振り向くと一人の女性がいた、その人はとても露出の高い衣装を着ていた、そしてとても胸が大きく、それに何より頭に動物の耳がついていて、しっぽも付いていた。
「だ、誰ですか?」
「そいつの仲間だよ」
やっぱり・・・この人も殺し屋、この人強そう、今、腕輪はファルのしか使えないし、どうしよう・・・
「ボスの予想通りやっぱり帝具が絡んでいたか、でなきゃこんなことになってないからな」
女は指を鳴らしながらゆっくり近づいて来る、やる気満々であった。
「お前ら好き勝手やってくれたな、私はガキでも容赦しないぞ」
女の迫力に三人はたじたじだった、まさに絶体絶命である、だがその時。
「待った姐さん、俺はその娘達と一緒に帝都から逃げなきゃならないんだ、それを阻むのなら姐さんでもガチでやらせてもらうぜ!」
ラバックが女の前に立ち塞がった、女の表情は一瞬で険しくなった。
「・・・お前、本気か?」
「うん、倍本気」
ラバのこの表情・・・本気だ・・・だが・・・
レオーネ、お前も帝都に行け
私も!?
帝具が関わっているのなら何が起こるかわからんからな
わかった
おそらく操作能力を持った帝具だ用心しろ
ああ、わかった
勝手なマネをしたらどうなるか・・・殺し屋の掟を教えてやれ!
了解!
・・・任務を投げ出すわけにはいかない・・・死んでも恨むなよ、ラバ!!
女は拳を構えて臨戦態勢をとった、ラバックも同じく構えた、今まさにナイトレイド同士の帝具戦が開始されようとしていた。
ラバックは両手を前にかざした。
「来るか!」
女に緊張が走る、ラバックの力を熟知しているから。
ババババババババ!!
ラバックは糸を編み上げて長い棒を造り出した。
「束なれ俺の糸!!そしてっ!!」
ラバックは棒を頭上に持ち上げてぐるぐる回転させた。
「高まれ遠心力っ!!」
女はラバックを注意深く観察している、そして女は口を開いた。
「隙だらけだぞラバ」
「そんなことねえさ」
女はキョトンとした、腑に落ちなかったから。
おかしい・・・ラバがそのことに気づかないわけがない・・・あんな派手で目立つだけの技・・・ん、目立つ!?
女はラバックの後ろを方を見た、するとエア達の姿はなかった。
あっ、いない、いつの間に・・・そうか、ラバが私の目を引き付けている間にあいつらを逃がす気か・・・
女はラバックに一杯食わされて歯ぎしりをした。
まずい、人混みの中に紛れたら捕まえられなくなる・・・女の顔に焦りの色が浮かんだ。
「どけ、ラバ、お前に構っている暇はない!!」
女はエア達を追うべく駆け出した、すると後ろからラバックが女を取り押さえた、そしてラバックは女の胸を揉みはじめた。
もにもにもにもに
「な、何をする!?」
「行かせないよ、姐さん」
「てめっ、どこ触ってる!!」
女は顔を赤くしてラバックを睨みつけるもラバックは動じない、そしてもみ合っている内に女の衣装がズレ落ちて巨乳が丸出しになった。
「い、いい加減にしろ!!」
女のアッパーがラバックを空高く吹っ飛ばした、そして地面に落ちていった。
「いけねっ、本気で殴っちゃった・・・生きてるかな?」
女が駆け寄るとラバックは気絶してるが生きていた。
「ラバはしぶといから大丈夫だろう・・・にしても」
女の表情がみるみる内に険しくなっていく。
「あのガキども・・・獅子を怒らせるとどうなるか・・・みせてやる!!」
女の目は怒れる獣そのものであった。
一方、エア達は全速力で走っていた、ファルは疲労しているエアを支えながら必死に走っている。
「大丈夫かな?ラバックさん」
「わかりません・・・でもラバックさんは逃げるように私達に合図しましたから」
「とにかく遠くへ逃げよう」
必死に走る三人の前に突然人影が現れた、あの女である、女はエア達に向かって駆け出した。
あの女の人が向かって来る・・・どうしよう・・・エアが戸惑っているとファルが前へ出た、そして腕輪を構えて。
「眠れ!」
腕輪が光り輝き、女を照らした、ファルはしてやったりの顔である。
どんな殺し屋でも眠らせればどうってことは・・・だが女はファルの思惑に反して眠らなかった。
何で?と思った瞬間、ルナとファルは女に首を掴まれた。
「・・・」
首を絞められ二人はしゃべることができない、エアはただうろたえるしかなかった。
一体どうして・・・ファルが疑念に思う中、女の耳から血が出ているのを見た、まさかこいつ耳を潰して・・・
「そうだよ、帝具を防ぐためにあらかじめ鼓膜を潰しておいたんだ、お前らの帝具、声で操るんだろう」
それだけのために鼓膜を・・・こいつ頭おかしいんじゃないか・・・ファルはそう思わずにはいられなかった、その瞬間、耳の中からシュウウウという音がした。
「今のは!?」
「私の鼓膜が治癒されたんだよ」
女はご丁寧に説明した。
「痛くないんですか?」
「痛いに決まってるんだろ」
「何でそこまで・・・」
「任務を果たすためだよ」
エアは女の迫力に圧倒されている。
「ナメたマネをされたままじゃ示しがつかないからな、私達の稼業は一度ナメられたら終わりだからな」
「・・・」
「それにラバの粛清もかかってるからな」
「た、立て替えで?」
「そうだ、このことが帝都に知れ渡れば殺し屋稼業は廃業になりかねん」
「は、廃業!?」
「依頼人全てが後払い要求してくるだろう、そうなれば依頼料の踏み倒しし放題だ」
呆然としているエアの後ろから人がやってきた。
「姐さん・・・その娘達を放すんだ・・・一緒に帝都から逃げなきゃならないんだ・・・」
ラバックがフラフラになりながらも駆けつけた。
・・・おもいっきり殴ったのにまだ解けないのか・・・あらためてこの帝具のすごさを思い知ったのであった。
「今すぐラバの洗脳を解け」
「えっ!?そんなこと言われても・・・」
「やらないとこの二人を殺す!!」
エアは必死に考えた、だが、解き方なんて知らない、だけど二人を助けるためになにかをしなくてはならなかった。
「あの・・・もういいんです・・・逃げなくていいんです」
エアにはそれしかできなかった、その瞬間ラバックの様子が変わった。
「そうか、わかった」
ラバックはあっさり承諾した、それを見て女は・・・こんな簡単に解けるのか?ただあっけにとられていた。
「とにかくお前ら私達と共に来てもらうぞ」
エア達は同意するしかなかった。
エア達は帝都にあるナイトレイドの地下アジトにいた、女に今までのいきさつを説明した。
「ふうん・・・骨董屋で見つけたのか、私のと似てるな」
「レオーネさんのもですか?」
この女の名前はレオーネ、ベルトの帝具を所有している殺し屋である。
「ああ、私のは闇市で買ったんだよ、波長が合わなければただのベルトだからな」
「すごい偶然ですね」
「お前らの帝具も相当変わってるぞ、何しろ一種の帝具で三人同時に適合するんだからな」
「俺もまさか君達が帝具の所有者だとは思わなかったよ」
「まあ、依頼の交渉する際も油断は禁物ってことだ、ラバ、お前、この帝具を持って先にアジトへ戻れ」
「えっ?姐さんは戻らないの?」
「私は少し休んでからいくよ」
「この娘達は?」
「私と一緒の方が都合いいだろ」
「わかった、先に行ってるよ」
ラバは一人でアジトに帰還した、そしてナジェンダに事の一部始終を報告した。
「こんな帝具があるとはな・・・まあ、帝国が所有していなかったのは幸いだ、もし帝国に使用されていたら我々は窮地に陥っていた」
この腕輪を使えばアジトの位置を簡単に自白され、大軍で包囲されていただろう。
「ラバ、お前、レオーネとその少女達を連れて来い」
「わかった」
ラバは再び帝都へ向かった、そしてレオーネとエア達を連れてアジトに帰還したのは16時間後だった。
「・・・ずいぶん早い帰還だな」
「いやあ、それほどでも」
ナジェンダは皮肉を言ったつもりだった、レオーネは動じていない。
「姐さん泥酔しててさ、俺が起こそうとしたらボディブロー繰り出してきたんだよ、それで失神しちゃってさ」
「・・・とにかくその話は後だ」
ナジェンダはエア達の方を向き鋭い眼光を放った。
「ずいぶん好き勝手やってくれたな、子供でも容赦しないぞ」
ナジェンダの迫力にエアとルナは怯んだがファルは怯まなかった。
「あんた達人々を救おうとしている革命軍なんだろ!?」
「な、なぜそれを・・・レオーネから聞いたんだな」
「はい、酔って色々教えてくれました」
エアは少し気まずそうであった。
「・・・まさか、私達の帝具のこともか?」
「・・・はい」
「・・・お前今後酒禁止だ」
ナジェンダは心底あきれていた、レオーネはその瞬間血相を変えた。
「お願いだからそれだけは勘弁して!!」
「ダメだ」
「私の生きがいを取らないで、どんなお仕置きでも受けるから!!」
「ダメだ」
「酒がなくなったら私は抜け殻になっちゃうよ、ナイトレイドにとっても痛手だよ!!」
「ダメだ」
「アカメ、一生のお願いだからとりなして!!」
「お前の一生のお願いは何度目だ?」
「今回が本当に一生のお願いだから、お願い!!」
「・・・わかった」
そう言っているがまた同じことを繰り返すんだろうな・・・そう思いつつアカメはナジェンダをとりなした。
「ボス、なんとか大目に見てくれないか」
「・・・全くしょうがないな、アカメに免じて今回は大目に見てやる」
「ボス、アカメ、ありがとう!!」
レオーネは大はしゃぎで喜んでいる、その光景を見てエア達はナイトレイドが凶悪な殺し屋集団というイメージはなかった、そしてエア達はある決意をしていた。
「あの・・・私達を革命軍に入れてくれませんか!?」
「何だと!?」
ナジェンダ達はエア達の行動を全く予想していなかった。
「私達の帝具なら少しはお手伝いできるかもしれないと思いまして」
「これは遊びじゃないぞ」
「わかってます、私達の村もひどいことになっていますから、なんとかしたいんです」
「下手をすれば死ぬぞ」
「わかってます」
「覚悟の上だよ」
ルナとファルも同じ気持ちだった、ナジェンダは三人の決意は本物と見た。
「・・・とにかく一度本部に報告しなければならん、私の一存では決められんからな」
「はい」
「最後に言っておく、一度入れば後戻りできんぞ」
「はい!」
三人の目は覚悟に満ちていた、ナジェンダはそれを察した。
「本部に報告書を出す、お前達のことも書いておく」
「ありがとうございます」
するとラバックがエア達の元へ詰め寄ってきた。
「ラバックさん、あの・・・色々すいませんでした」
「それはいい、俺がヘマしたんだからな、けど・・・」
ラバはエアの顔面へ寸止めのパンチを繰り出した。
「・・・」
エアはビックリして放心状態である。
「俺を帝都から逃がそうとしたことは許せねえな」
「で、でも、そうしないとラバックさん粛清されちゃうから・・・」
「そうなったら甘んじて受けるさ、その覚悟でここにいるんだからな」
ラバはエアをキッと睨みつけた、その瞬間エアの鼓動が早くなった。
・・・な、何?ラバックさんの顔を見た瞬間ドキドキしてきた、これって何?
エアはこの気持ちが何なのかその時はわからなかった。
「ラバ、かっこつけてるけど私にしたこと覚えてるよな」
今度はレオーネがラバに詰め寄ってきた、ラバは気まずそうである。
「ボスに黙っててやるから有り金よこせ」
「そ、そんな!?」
「いいのかな、あのことボスに知られても」
「わかったよ、わかった!」
ラバは泣く泣く有り金を渡すことになってしまった、その後レオーネはその金をばくちで全部すったのであった。
現在
そういやあの娘達あの後本部に行ったけどどうなったのかな・・・その瞬間、ラバの帝具に反応があった。
「糸に反応あり」
一同に緊張が走った。
「敵襲か!?」
「いや・・・この糸の反応は味方だ、あの糸は侵入者では反応できない位置にあるから」
味方、つまり革命軍の人ってことよね・・・一体誰なんだろう、サヨはそう思わずにはいられなかった。
今回で五十話に達しました、初投稿から半年ちょっと経ちました、あいからわず下手くそな文章ですが、次は百話を目指して頑張ります、いつになるかわかりませんが、これからもよろしくお願いします。