第四話
ナイトレイドを斬る
4月21日
帝都から北に10キロの位置にあるナイトレイドのアジトがある、少し離れた崖に人影がある、その人影のすぐそばにお墓があった。
「あれから一月か、早いものね、今でもひょっこりあなたが現れるような気がするのよ」
サヨは幼なじみであるタツミの墓参りをしていた。
「本当にこの一ヶ月色々なことがあったわ」
3月30日
「全く、来る日も来る日も雑用かよ」
イエヤスはぼやいていた。
「ぼやかない、どこの世界も新入りはこんなものよ」
「まあな、にしても、いてて」
イエヤスの頭はこぶだらけであった。
「本当こぶだらけね」
「寝坊したら頭に石が落ちて来る仕掛けをするなんて容赦ないぜ」
「首が落ちるよりはましでしょう」
「まあな、でもあれからけっこう日が過ぎたな」
「うん」
二人は最初にアジトに来た頃を思い出していた。
3月22日
サヨ達はレオーネの誘いでナイトレイドのアジトに来ていた。
「話はレオーネから聞いている、災難だったな」
彼女がナイトレイドのボスナジェンダである。
「災難?」
サヨはムッとした。
「おい!あんた、そんな言葉で片付けないでほしいな!」
イエヤスは怒鳴った。
「そうだったな、お前達にとってはそれで片付けられる問題ではなかったな、それについては詫びを言っておく、だが、今の帝都ではあのようなことは日常茶飯事なのだよ」
「な、なんでそんなことに・・・」
「賄賂だよ」
「わ、賄賂!?あんなひどいことが賄賂なんかで・・・」
サヨは納得できなかった。
「今の帝都ではまかり通るのだよ」
「・・・」
帝都の腐敗ぶりにサヨは絶句した。
「気持ちはわかるが落ち込んでいても何も始まらんぞ」
ナジェンダはビシッと言った。
「あの、いくつか質問してもいいですか?」
サヨは質問した。
「かまわんぞ」
「殺し屋ってどれだけ稼げるんですか?」
サヨはハッキリ言った。
「そうだな、きっちり仕事をしていれば故郷の村くらい救えるだろう、(いきなり金の話か、まあ、ストレートでいいがな)」
ナジェンダは少し笑みを浮かべた。
「元将軍のあなたがなぜ殺し屋集団のボスを?」
「それについては少し長い話になるぞ」
「はい、構いません」
「では・・・」
ナジェンダは語り始めた、そして。
「民を救う革命軍、そしてその要がナイトレイド・・・すげえぜ、ナイトレイドの殺しは帝都のゴミを始末する正義ってことだな」
イエヤスは浮かれて叫んでいると、ナイトレイドの一同は大笑いした。
「な、なんだよ」
「私達が正義なわけないじゃないですか」
紫の髪の女性は微笑みながら言った、彼女の名前はシェーレである。
「そうよ、ナイトレイドに正義はないわよ、だってナイトレイドのやってることって所詮殺しなんだし」
サヨは淡々と言った。
「え、だってよ・・・」
イエヤスはうろたえているが、サヨはお構いなしに。
「今年の税は去年よりも上がるでしょうか?」
「ああ、間違いなく上がるな」
「そうですか・・・私、ナイトレイドに入ります」
その返答を聞いてサヨは即決した。
「おい、何言ってるんだよ?ナイトレイドは正義じゃないってお前も言っただろ」
イエヤスは慌てて言った。
「帝都はすごく不景気なのよ、まともにやっていたらもっと多くの村人が飢え死にしてしまうわ」
サヨはスバッと言った。
「けどよお」
イエヤスは迷っている。
「ねえ、私達何しに帝都へやってきたの?」
「そりゃあ、兵士になって出世して稼ぐために」
「どうやって出世するの?」
「そりゃあ、敵の大将の首をとるとか・・・!?」
イエヤスはハッと気づいた。
「そうよ、私達人殺しをしに帝都にやってきたのよ」
「けどよ、殺し屋だぜ?」
「なによ、兵士の殺しは良くて殺し屋の殺しはダメっておかしいでしょう、どっちの殺しも悪よ」
「・・・」
イエヤスは無言だった。
「私、村の人と約束したの、絶対救うって、救えるのなら私は千人だって殺してみせるわ」
サヨから凄みがてでいた。
「気が乗らないのなら、私一人がなるから、別にいいですよね?」
「ああ、かまわんぞ」
「・・・ああ!!わかったよ、俺もなるよ、尻込みしていたらタツミに笑われちまう」
イエヤスは腹をくくった。
「話は決まったか?」
「はい、私達ナイトレイドに入ります」
「言っておくが革命が成功しても大手を振って村に帰れんかもしれんぞ」
「構いません」
サヨは力強く言った。
「共に歩むか、修羅の道を」
ナジェンダはフッと笑った。
「だが、新入りのお前達にいきなり殺しの仕事を任せるわけにはいかないからな、しばらくは雑用をやってもらうぞ」
「わかりました」
「この話はこれぐらいにしておこう、皆休んでいいぞ」
「了解」
「ところで、レオーネ」
「?」
レオーネは何、と思った。
「お前、今回の仕事で作戦時間オーバーしたそうだな」
「ヤバ!!そーだった」
レオーネはそのことを思い出し、全力で逃げだした。
ドウ!!
ナジェンダは義手を飛ばしてレオーネの首を掴んだ。
「にゃあああ!!」
「お前は何か興味を持つとすぐ時間を忘れる、悪い癖だぞレオーネ」
「ゴメン、ボス、次は気をつける」
レオーネは必死に謝ったが。
「そのセリフ前も聞いたな、よし、私が気合いを入れてやろう」
「ひいい!!アカメ、助けて」
レオーネはアカメに助けを求めたが。
「諦めろ、ボスはとめられん」
アカメはそっけなかった。
「そんなあ!!」
レオーネは大泣きした。
「じゃあ、ボスお休み」
マインはさっさと自分の部屋に行った。
「薄情者ー!!」
「ナジェンダさんが姐さんにお仕置きか・・・ニシシシシシシ」
緑色の髪の少年はニヤニヤしている。
「ラバ、てめぇ!!」
レオーネは激怒した。
「心配するな、じきにすむ」
「ひいい!!そのキリキリ怖いー!!」
レオーネは泣きながら引きずられていく。
「・・・なあ、さっきまでのシリアスどこ行ったんだ」
「うん、私達、ここでやっていけるのかな?」
二人はかなり不安になった。