記憶を斬る(中編)
バックのところへ戻ったエア達はバックの案内でとあるレストランに赴いた、その店で食事をすることになった。
「帝都の食事か、楽しみだね」
ファルはウキウキしている、その隣のエアは落ち込んでいるルナを心配そうに見ている。
「ねえ、ルナ、大丈夫?」
「は、はい・・・」
「ルナの気持ちわかるけど・・・」
「すみません、ご心配をかけて」
ルナは気持ちを切り替えることにした。
いつまでも落ち込んでる訳にはいきません、バックさんがご馳走してくださるのに・・・あれ?
ルナは腕輪を見つめた、すると、いつのまにか腕輪の宝玉が元に戻っていた。
「腕輪の宝玉が元に戻ってます」
ルナは心から喜んだ、それを見てエアとファルも喜んだ。
「よかったじゃん、元に戻って」
「本当によかった、心配したよ」
「はい、ご心配かけました」
「それにしてもなんで黒くなったのかな?」
「それはわかりません・・・」
「いいじゃない、元に戻ったんだし」
三人を見ていたバックが話しかけてきた。
「本当に嬉しそうだね」
「あっ、はい、すみません、騒がしくて」
「それは別にいいけど、その腕輪を見たときは驚いたよ、僕が渡したお金で買える代物じゃないから」
「すごいでしょ、骨董屋で見つけたんだから」
ファルは鼻高々であった。
「僕もいろいろ高価な装飾品見てきたけど、その腕輪かなりの値打ちつくんじゃないかな」
「本当ですか?」
「詳しくわからないけど」
「やっぱりすごいものだったんだ」
エアは腕輪を見て微笑んだ、三人は腕輪を見ていたため気づかなかった、その時のバックの表情は陰湿そのものだったことを。
しばらくして料理が運ばれた、その料理は三人が見たことがないものだった。
「あの・・・本当に食べていいんですか?」
「もちろん」
「すごく高そうです」
エアとルナはすごいご馳走に戸惑っていたが、ファルはすでに食べ始めていた。
「これ、すごくおいしい」
「ファル・・・」
ルナはファルの短絡さに呆れている。
「君達も食べて、食べて」
「は、はい」
バックのすすめでエアとルナも食べ始めた。
「おいしい」
「はい、とても」
三人は料理に舌鼓であった、後ろから物音がしたことに気がつかない程に・・・
「はは、満足してくれてなりよりだよ・・・」
バックの雰囲気は先程と変わっていた、三人はそのことに気づいていない。
「ありがとうございます!」
エアは笑顔で感謝の言葉を伝えた、だが、その瞬間・・・
「じゃあ、メインディッシュといこうか!」
突然無数の男が現れた、三人は身動きができなかった、後ろから男に取り押さえられたから。
「えっ、えっ!?」
エアは何が何やらわからなかった、ルナとファルも同じであった。
「こ、これは・・・」
「な、なんだよこれ・・・」
バックを含むすべての男達はニヤニヤしている。
「バックさん、これってどっきりですか?」
エアは恐る恐る質問した、エア自身もどっきりとは思えなかった。
「どっきりじゃないよ」
どっきりじゃない!?エアが恐怖にかられているとバックの後ろから不気味な中年の男達が現れた。
誰!?と三人が思った瞬間、バックは男達の紹介をした。
彼らはバックの常連客で落札した品物を受け取りに来たと。
「落札!?ふざけるな、私達は物じゃないぞ!!」
ファルは憤慨するもバック達は動じない、するとバックは三人に説明する。
「いいかい、君達イナカモノはこの帝都では家畜又は物なんだよ」
三人はア然とした、いい人だと思っていたバックが悪党だったのだから。
「こ、こんなこと警察が・・・」
ルナの叫びもバックの無情の言葉にかき消される。
「心配ないよ、ちゃんと根回ししてるから、結構かかったけど」
それって賄賂!?警察が!?三人はあまりのことに呆然としている。
「おい、無駄話してないで早くとりかかれ」
男の一人がバックに命じた。
「そうですね、では早速」
バックは手下に合図をするとファルを持ち上げた。
「わ、私をどうする気だ!?」
「前のと同じでいいですか?」
バックはファルを無視して質問した。
「ああ、今回はゆっくりへし折ってくれ、どの辺りで折れるか確かめたい」
ファルの顔は一瞬であおざた、そしてファルは必死に抵抗した、だが無意味だった、男はファルの足を折りにかかった、ファルは苦痛の悲鳴を上げた。
「あああああ!!」
店内にファルの悲鳴が鳴り響いた、男達はニヤニヤ笑っている。
「や、やめて・・・わ、私が何をしたってんだ・・・」
ファルは大粒の涙を流しバックを睨みつけた、するとバックは少しムッとした。
「僕のお金使ったじゃない、これは当然の対価だよ」
「何を言って・・・そっちが勝手にくれたんじゃ・・・」
「盛り上げるためだよ、君達を喜ばせておいて絶望に突き落とす、そのギャップにゾクゾクするのがたまらなく快感なんだよこの人達は」
「ふん、お前も好きなくちだろ」
・・・だ、だめだ・・・こいつら私の話通じてない・・・
ファルはまさに絶望していた、そして、今も絶望は続いている、ファルの足は今にも折れそうである。
・・・こ、こんなのうそだ・・・なんで私がこんな目に・・・
ファルは激痛と悔しさで大粒の涙をボロボロこぼしている。
「やめてください、こんなこと許されるわけが・・・」
ルナはバックに懇願するも、バックは鼻で笑った。
「許されるわけが?まさか神様が許さないとでもいうつもりなのかな・・・この世に神様なんているわけないんだよ!」
バックは先程と違いいらついているように感じる。
・・・そうさ、神様なんていないんだよ・・・僕が奴隷として売り飛ばされた時、神様に必死で祈ったのに僕を助けてくれなかったんだから・・・
「この世の中は金がすべてなんだ、金さえあれば幸せになれるんだ、だから君達をくいものにして金を稼ぐんだ!」
「そんな・・・私達は・・・」
エアは涙目でバックに抵抗するも。
「金は君達なんかよりも尊いんだよ!だから僕のために君達には犠牲になってもらうよ」
バックの迫力にエアはたじたじするしかなかった。
・・・ダメ、この人達に何を言っても・・・このままじゃファルが・・・
エアは絶望を感じるなか左腕の腕輪に何かを感じた。
何?この感じ・・・腕輪が私に語ってくるような・・・自分を使ってこの危機を乗り越えろと・・・
エアはこの腕輪を信じることにした、普通ならとても信じられないが今は賭けるしかなかった。
何・・・私・・・この腕輪の使い方何となくわかる・・・腕輪が教えてくれるみたい・・・
「やめて、ファルにひどいことしないで」
エアはファルの足を折ろうとしている男に大声で叫んだ。
「うるさいぞ、黙ってろ!」
男はエアの方に振り向いて怒鳴った、エアの狙いはそれであった。
エアは腕輪を男に向けて、大声で叫んだ。
「眠って!!」
その瞬間腕輪の宝玉が光り輝いた、男はその光を見た、すると男は崩れるように倒れた、男はいびきをかきながら眠り落ちた、男だけでなくバックとその後ろの男達も眠り落ちた。
「てめえ、何しやがった!?」
エアを取り押さえていた男がエアの首を絞めはじめた、首を絞められエアは苦しんでいる。
「ファル、あなたにも使えるはず、腕輪を構えて!」
男が眠ったことで解放されたファルはわけがわからなかった、そしてすぐさま男達がファルに襲い掛かっていく。
ファルは考えるよりも早く腕輪を構えた、ファルは腕輪がそうさせたのではないかと思った。
何となくだがこの腕輪の使い方わかるような気がする!
「眠れ!!」
ファルの腕輪の宝玉も光り輝き、残りの男達を眠らせた。
「やった・・・」
ファルは全身の力が抜けてしゃがみこんだ、エアも同様である。
「二人共大丈夫ですか!?」
ルナが心配して二人に駆け寄った。
「う、うん・・・何とか・・・」
「力が抜けた・・・」
二人共疲労困憊であった、やはりこの腕輪の影響だろう。
「とにかくここから逃げましょう、走れますか?」
「うん・・・やってみる」
「やるしかないよ」
二人は強引に立ち上がり、走り出した、あてはなかったがとにかくがむしゃらに走った、そして公園の茂みに入りこんだ。
「とりあえずここなら一安心だね・・・」
「うん・・・」
エアとファルは息を激しく切らしている、もう一歩も歩けなかった。
「それにしても帝都がこんな恐ろしいところだったとは・・・」
ルナは恐怖で体が震えていた。
「うん・・・」
「何が夢の都だよ、地獄じゃないか!」
エアとファルも大ショックである、まさに天国から地獄であったから。
「二人共まだ安心できません、彼らが目を覚ましたらすぐ追ってきます」
「うん、そうだね・・・早く警察へ・・・」
「それはダメです」
「なんでだよ!?」
「根回ししてあるって言ってました、おそらく警察もグルです」
「そっか・・・確かにそう言ってたし・・・」
「じゃあ、私達であいつらやっつけよう、この腕輪があれば・・・」
ファルは勇ましくふるまうもルナは反対した。
「それもダメです、銃で撃たれたら終わりです」
「そっか、そうだよね・・・」
「じゃあ、どうするんだよ!?」
三人は必死に知恵を絞った、そこでルナは。
「ナイトレイドに頼むのはどうでしょうか?」
「ナイトレイド!?」
ナイトレイド・・・バックが帝都に来る途中で語っていた、最近帝都を震えあがらせている殺し屋集団・・・
「ちょっと待って、いくらなんでも殺すのは・・・」
「何言ってんだよエア、あいつら私達を殺すつもりだったんだぞ!!」
「気持ちはわかりますが今動かないと手遅れになります」
「そうだね・・・」
三人は体力が回復したら早速行動に移った、腕輪の力でナイトレイドと依頼の交渉する状況を作りだせたのである。
深夜の墓場、そこがナイトレイドの依頼の交渉の場であった、ここなら誰も人が来ないからうってつけである。
「怖いね・・・」
「はい、不気味です」
「何言ってんの!?お化けよりもあいつらの方が恐ろしいよ!」
三人が話をしていると人が近づいてきた。
「来ました」
「緊張するね・・・」
「どんとこいだ!」
その人はあまり大柄ではない、むしろ少年といってよかった、フードを被っていて顔は見えない。
「あなたがナイトレイドですか?」
「ああ、そうだよ」
声は少年そのものだった、やはり少年なのだ、それでも自分達よりは年上のはずである。
「ナイトレイドに依頼したいんですけど」
「話を聞こうか」
ルナは一部始終を少年に話した、少年によるとあの連中は危険な噂が絶えないそうだ。
「じゃあ、依頼受けてくれますか?」
「その前に依頼料渡してもらいたい」
「・・・今はお金ありません、ですが必ず払います」
エアは必死に懇願した、すると少年は。
「悪いが前払い鉄則なんだ」
やっぱりそうか・・・こんな稼業だから仕方ないよね・・・だけど、引き下がる訳にはいかない!!
「お願いします、私達の命がかかってるんです」
エアは涙目で懇願するも少年の答えは同じであった。
・・・かわいそうだけどこればっかりはな・・・少年は気が滅入っていた。
姐さんが泥酔して俺が代わりに来たけど・・・後味が悪いことになったな・・・
少年がそう思っていることなどエア達は梅雨知らず、エア達はある作戦を実行しようとしていた。
お金がないから依頼を断られることは予想していた、だから作戦を考えた、うまくいくかはわからないけど・・・
ファルは少年に近づいていく、少年は警戒して構えた、ファルは腕輪を少年の方に向けて。
「あんたが依頼料立て替えろ!」
その瞬間、腕輪の宝玉が光り輝き少年を照らした、少年はしばらく呆然としていた、そして。
「・・・わかった、君達の依頼料、俺が立て替えるよ」
大成功である、ここまでうまくいくとは・・・
「ありがとうございます!」
エアは心から感謝した、申し訳ないという気持ちもあるが・・・
「じゃあ早速依頼を・・・」
「その前に裏をとらないといけないな」
確かにその通りである、しかし・・・
「私達に任せてください」
今度はルナが腕輪を使った、同じく腕輪が光り輝き少年を照らした。
「・・・わかった、君達に任せるよ」
「ありがとうございます・・・ええとあなたの名前は?」
「ラバックだよ」
「はい、ラバックさん」
エア達はラバックと共に裏を取るべく行動を開始した、腕輪を使いあっという間に裏を取ることができた、そして、ナイトレイドはバック達の抹殺に取り掛かった、バック達はナイトレイドによって始末された。
エア達はこの知らせを知って心から安堵した、その時は・・・まさかその後あのようなことことになるとは・・・
原作を見てかわいそうだと思いこのストーリーを思いつきました、ナイトレイドは事件が起こらないと行動に移れないので、三人が自力で何とかするしかありませんでした、そういう訳で次回もお楽しみに。