サヨが斬る!   作:ウィワクシア

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第十四話

   三匹を斬る(中編)

 

5月5日

 

文官の護衛のためにブラートとイエヤスは竜船に乗り込んでいた。

 

「どうだ、いたか」

 

ブラートは帝具で透明化している。

 

「いや、それらしい奴は見かけない」

 

「そうか、注意して監視しろ」

 

「ところで、なんで俺船員の格好、しかも一番下っ端・・・」

 

イエヤスは釈然としなかった。

 

「お前にはそれが一番しっくりくるからな」

 

「わかった・・・」

 

イエヤスはまだ納得していなかった。

 

「にしても・・・」

 

 

 

 

「これが三獣士の人相画だ覚えておけ」

 

ナジェンダはラバに描かせた人相画をみせた。

 

「!?」

 

ブラートは人相画を見て驚愕した。

 

「どうした」

 

「い、いやなんでもない・・・(マジか)」

 

ブラートは額の汗を拭った。

 

 

 

 

 

 

「まさかリヴァ将軍がエスデスの手下になっていたとはな、ここで鉢合わせするような気がするぜ」

 

ブラートは再び監視に徹した。

 

竜船には大勢の人が乗船している、その中のひとりにそのリヴァがいた、フードで顔を隠している。

 

「・・・」

 

リヴァは三人目の文官を始末した時のことを思い出していた。

 

 

 

 

 

ズバッ!!

 

リヴァは文官の首を切り飛ばした。

 

「これで三人目だ、次は元大臣のチョウリだな」

 

「ねえ、そいつをいれて後何人?」

 

ニャウが質問してきた。

 

「後三人だ」

 

「ふうん、そう」

 

「?」

 

リヴァは首をかしげた。

 

「ねえ、ここからは三手に分かれない」

 

「何を言い出すんだ!?」

 

さすがにリヴァは驚いた。

 

「だってその方が早く片がつくでしょ」

 

「何を言っている、そろそろナイトレイドが行動にうつってもおかしくないぞ」

 

「だからだよ」

 

「だめだ、危険すぎる」

 

「大丈夫だってアカメがいなくなったナイトレイドなんて雑魚の集まりだよ」

 

「しかし・・・」

 

二人の言い合いに大男が参加した。

 

「いいねえ、そっちの方が経験値ガッポリ稼げそうだ、俺ものったぜ」

 

この大男はダイダラ、三獣士のメンバーである。

 

「ダイダラ、お前まで・・・」

 

リヴァは絶句した。

 

「いいじゃねえか、そっちのほうが面白れえし」

 

「アカメがいなくてもまだ腕の立つ者はいる」

 

リヴァはなんとか二人を思い止めようとしているとニャウは。

 

「あの出来事覚えているよね」

 

リヴァはその時のことを振り返っている。

 

 

 

「以上だ、早速お前達に働いてもらう」

 

エスデスが三人に文官抹殺を命じている。

 

「はっ」

 

三人が返事をするとエスデスは。

 

「ところでお前達もアカメの首を見たか?」

 

「はい」

 

「帝都最凶の殺し屋と言われていたが、まあ、弱かったから死んだ、そういうことだ」

 

エスデスは以前アカメと戦ってみたいと言っていたが残念そうなそぶりは全くなかった。

 

「アカメを仕留めたのは確か警備隊員のセリューという者です」

 

「ああ、興味がわいたので会いに行った、なかなか見どころのある奴だったぞ、そうだな、アカメを仕留めたほうびにアイスでもご馳走してやるか」

 

「・・・とても喜ぶことでしょう」

 

リヴァは平静に返答した。

 

「ではお前達任務に移れ」

 

「はっ」

 

 

三人は宮殿を後にした、するとダイダラは。

 

「まったくエスデス様にご馳走してもらえるなんてうらやましい限りだぜ」

 

ダイダラがぼやいているとリヴァが。

 

「それだけの戦果をあげたんだ、やむを得な・・・」

 

リヴァが言い終える前に背後からおぞましい殺気を感じた。

 

「・・・アカメを仕留めたぐらいでいい気になるなよ、僕のスクリームならアカメなんか一ひねりだよ」

 

ニャウはセリューに怒り心頭である。

 

「落ち着け、アカメはもういないんだ今は任務に集中しろ」

 

「・・・わかったよ」

 

ニャウは殺気をおさめた。

 

「ふう、ビックリしたぜ」

 

「まあ、気持ちはわかるがな」

 

三人は気を取り直して帝都を後にした。

 

 

 

 

 

「お前あの事をまだ気にしていたのか」

 

「そりゃそうだよ、エスデス様にご馳走してもらえるのは僕達にしか許されないんだよ」

 

「気持ちはわかる、だがこれは話は別だ」

 

「別じゃないよ、ここでナイトレイドの首をとれば僕達がセリューよりも上だと証明できる」

 

「それなら三手に分けなくても」

 

「セリューは一人でアカメを仕留めたんだ、僕達も一人でやらないと」

 

「セリューは生物型の帝具使いだ一人ではないぞ」

 

二人の口論にダイダラが割って入った。

 

「いいじゃねえか、俺達三獣士に敵はいねえよ」

 

「そうだよダイダラの言う通りだよ心配のしすぎだよ」

 

「だが・・・」

 

「このチャンスを逃せばセリューの奴にエスデス様を取られちゃうよ」

 

「いい加減にしろ、お前何様だ」

 

さすがのリヴァも激怒した、だがニャウは怯むことなく。

 

「・・・リヴァはセリューの後ろを歩くことになってもいいの」

 

「!?」

 

リヴァはその状況を頭で想像した、みるみる顔が青ざめていく。

 

「どう、屈辱だろ、今動けばこの未来を防げるんだよ」

 

リヴァはしばらく考え込んだ、すると。

 

「・・・仕方あるまい、だが指示にはしたがってもらうぞ」

 

リヴァはついに折れ、三手に分かれる案を受け入れた、二人に決して油断しないよう釘をさした。

 

 

 

 

そして今に至る、リヴァは三手に分けたことを後悔していた、気を取り直して任務に集中することにした。

 

そして深夜になりリヴァは文官の部屋の前に立っている。

 

「さて、始末にかかるか」

 

その時、気配を感じ回避に移った、目に見えないが確かに何かがいた。

 

「この感じ、透明化したインクルシオか、ブラート、お前がいるな」

 

すると透明化が解けていき姿を現した。

 

「さすがだな気づくとは将軍は伊達ではないな」

 

「今は将軍ではない、エスデス様のしもべリヴァだ」

 

「こういう状況じゃなければ酒の一杯でも飲みたい所だがな」

 

「今は任務優先だ」

 

「そうだな」

 

「表へ出ろ、ブラート」

 

「おう」

 

二人は船外へ出て臨戦態勢を整えている。

 

「何となくアンタと戦うことになるような気がしてたぜ」

 

「私もだ」

 

二人は集中している、そして。

 

「お前には小技など効かないからな一気に決めさせてもらうぞ」

 

リヴァは指輪の帝具を使用した、この帝具はブラックマリン、水を操る帝具である、川から水が舞い上がり巨大な蛇が造りだされていく。

 

「指輪の帝具か、アンタが兵の指揮をとっていた奴か納得だぜ」

 

「いくぞ、ブラート」

 

 

   深淵の蛇!!

 

水の蛇が船ごとブラートを押し潰そうとしている、だが、ブラートは高く飛び上がりそのまま蛇を真っ二つにした。

 

「さすがだな、だが、想定内だ」

 

リヴァは帝具に念じ、無数の水の槍が造られていく。

 

   濁流槍!!

 

無数の槍が宙に浮いたブラートを直撃した、衝撃で仮面が壊れ素顔が見えた。

 

「これしきの水をぶっかけられたぐらいで俺の情熱は消えねえよ!」

 

ブラートの闘志は衰えていなかった。

 

「それも想定内だ、これならどうだ」

 

リヴァが念じると、無数の竜が造られていった。

 

「私の最強の技をくらえ!」

 

   水龍天征!!

 

水の竜が次々ブラートに直撃していく。

 

「ぐわあああああ!!」

 

さすがのブラートも大ダメージであった。

 

「やったか?」

 

するとブラートはリヴァに切り込んでいく。

 

「まだまだ!!」

 

「耐え抜いたか、だが、こっちもまだまだだ」

 

リヴァは床に落ちた水を帝具でかき集めてブラートにぶつけた、無論それでブラートを仕留めることはできなかったが勢いを削ぐには十分だった。

 

「まったく、抜け目ないぜ」

 

「お前を相手にするのだ、2手、3手読んでおくのは当然だ」

 

すると突然鎧化が解けた、ブラートの体は傷だらけであった。

 

「どうやら限界に達したようだな」

 

「それはお互い様だろ」

 

ブラートは指を指した、リヴァの耳から血が流れていた。

 

「よく見抜いたな、交渉を有利にしたかったのだがな」

 

「交渉?」

 

「単刀直入に言う、エスデス様に仕えないか?」

 

「冗談じゃないよな」

 

「当然だ」

 

「あいにくろくでもない軍に戻る気はねえ」

 

「軍ではないあのお方に仕えるのだ、そうすれば大きな力が手に入るぞ」

 

「断る、俺の力は昔から民のためにと決めてるんだ、大臣と組んでるエスデスの元じゃあ、ソイツは気取れねぇなあ」

 

ブラートはくしを取りだし髪をリーゼントに整えてビシッと決めた。

 

「お前がどれほど命を張ろうとも認めてはくれんぞ」

 

「そんなのは求めてはいないさ」

 

「そんな愚民共助けてやる価値などないぞ」

 

「・・・俺が知っているアンタならそんなセリフ言うはずないんだがな」

 

ブラートは少し寂しげであった。

 

「愚民共にはただ力を見せつければいいのだ、真実を見分ける頭などないのだからな」

 

「アンタもかつては民のために命を賭けて戦ってきたんじゃないのか」

 

「ああ、だがそれは間違いだった」

 

リヴァは更迭されて帝都の街中を通って連行される際民衆に石をぶつけられたことを思い出していた。

 

「愚民など力で支配するものだ、優しくすればつけあがる」

 

「もう俺が知っている将軍リヴァはどこにもいないんだな・・・」

 

ブラートは目の前の事実を受け止めた。

 

「力こそこの世の理だ、私はエスデス様に仕えその真実を悟ったのだ」

 

「・・・今の俺にアンタを全否定する資格はねえ、今の俺は殺し屋だからな」

 

「殺し屋が愚民を守る、滑稽だと思わんか」

 

「笑いたきゃ笑うがいいさ、俺は俺の道を進むだけだ」

 

「交渉決裂だな」

 

「ああ、ケリをつけようぜ」

 

二人の戦いは最終局面を迎えようとしていた、二人の戦いを遠くから見ている者がいた、それはイエヤスである。

 

「・・・俺も加勢してえがレベルが違いすぎる、兄貴の足を引っ張ってしまう」

 

イエヤスは悔しさで顔がひきつっている。

 

「俺の帝具戦闘タイプじゃねえし、だが、何もしない訳にはいかねえ」

 

イエヤスは帝具を使う決心をした。

 

「俺が知らない他の能力、何でもいい、発動しろ」

 

イエヤスが念じると帝具の目が開いた、だが、何も起きなかった。

 

「不発か、くそ」

 

悔しがっているとどこからか声が聞こえてくる。

 

 

「(・・・さすがブラートだ数年前よりも腕をあげたな)」

 

「もしかして、あいつの心の声か?」

 

「(だが私とてただでやられはせん、この毒入りドーピングを体内に打ち込み奥の手血刀殺をブラートにくらわせる、そうすれば毒に免疫のないブラートを確実に仕留められる)」

 

イエヤスはリヴァの心の声に驚愕した、そして。

 

「兄貴、気をつけろ、そいつ毒入りドーピングを使う気だ!!」

 

「!!?」

 

イエヤスの言葉に二人は絶句した。

 

「な、何故わかった、いかん早く打たねば」

 

リヴァは慌ててポケットからドーピングを取りだし首に打ち込もうとした。

 

ザン!!

 

ブラートは一瞬早く首に打ち込む前にリヴァの右腕を切り飛ばした。

 

「しまっ・・・」

 

リヴァは切り飛ばされた右腕を見て絶望した。

 

ズバッ!!

 

ブラートは続けてリヴァを切りつけた、リヴァはあおむけに倒れた。

 

「・・・」

 

リヴァは無言のまま倒れ込んでいる。

 

「焦ったな、一瞬動きが遅かった、アンタらしくねえ」

 

「・・・」

 

「らしくねえといえば何故他の三獣士と行動しなかったんだ、おそらく他の奴らは他の文官の所に行ったんだろうが、理にかなってるとは思えねえ、無意味な兵力分散は命取りだとアンタは俺に言っていたはずだ」

 

ブラートは最初から思っていた疑念を言った。

 

「・・・確かにそうだな」

 

「俺の想像が正しければ・・・」

 

「そうだ、セリューを超える武勲が欲しかったのだ」

 

「だが、三獣士として十分武勲をあげてるだろ」

 

「あの方はつねに新鮮な刺激を求めている、過去の実績などあまり意味はない」

 

「確かに奴ならな」

 

「エスデス様はアカメを仕留めたセリューを気に入ってな、危険とわかっていても一人でお前達の首を取らなければならなかったのだ」

 

「そこまでの価値があるのか?」

 

「お前にはわからんだろう、罪人に成り果てた私に手を差し伸べてくれたのはエスデス様だけだった、その時私は私の命はあの方に尽くそうと決めたのだ」

 

「・・・」

 

リヴァの迫力にブラートは何も言えなかった。

 

「私に勝ったとしてもお前の命運は長くないぞ」

 

「何?」

 

「以前、エスデス様がおっしゃっていた、自分を倒せる可能性があるとすれば大将軍ブドー、そしてアカメだと、だがアカメはもうこの世にはいない、つまり、お前達では絶対勝てないということだ」

 

 

「やってみないとわからないぜ」

 

「・・・せいぜい足掻くといい、地獄で酒宴を開いて待っているぞブラート・・・」

 

リヴァは事切れた、その時雨が降ってきた。

 

「兄貴・・・」

 

「とりあえず終わったな」

 

ブラートはかつてリヴァとともに敵の工作兵128人倒した頃を思い出していた。

 

 

 

「さすがだなブラート」

 

「将軍こそさすがだぜ」

 

「お前ならいつか私を超えるかもしれないな」

 

「よしてください、俺なんてまだまだです」

 

「謙遜するな、お前ならいずれ将軍にもなれるだろう」

 

「将軍?俺がですか」

 

「その時が来たら盛大に祝ってやろう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「まずはこの戦いを勝ちぬかねばな」

 

「はい!」

 

 

 

雨はさらに激しく降ってきた、二人はずぶ濡れになっている。

 

「俺はアカメの分まで戦い抜いてみせる」

 

ブラートのずぶ濡れの背中はイエヤスには泣いているように見えた、竜船は港に着こうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あいからわずバトルシーンはうまく書けません、頭ではイメージ出来てるんですけど、文章として書くのは本当に難しいです、これからもよろしくお願いします。

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