選択肢を斬る
「どうしたの?メロディ」
「ちょっとね」
アカメのことを思い出したら色々なことを思い出しちゃったわね、私が革命軍に入るきっかけになったこととか···
「ボーとしてらしくないじゃん」
そう言いながら近づいてきたのはキャスカだった、あの日キャスカと出会ったことで革命軍に入ることになったのだから。
「ちょっとあなたと出会った頃のことを思い出していたのよ」
「私と?あのときはホント大変だったよね、その後も色々あったよね、天狗党と遭遇したり、行きだおれてたガザムを助けて革命軍の拠点まで行動を共にしたり」
「何の話?」
サヨはキョトンとした、バン族の生き残りであるガザムの名前がいきなり出てきて天狗党なんて初耳だった。
「その話は暇な時にするわ、ところでキャスカ何か用?」
「うん、もうすぐ案内人がやってくるから知らせとこうと思って」
「そう」
「案内人?」
「西の異民族の密偵よ、彼の手引で街に侵入することになってるの」
「そう」
西の異民族と再交渉する条件として依頼を受けることになったのである、確か複数の依頼から一つだけ選べばいいのである。
「西の異民族の依頼って他に何があったの?」
「一つはエスデスの抹殺だったよ」
エスデスの抹殺!?そんなのほとんど無理じゃない、それができるなら苦労はないよ。
「まあ、向こうも不可能だってわかってて言ってきたのよ」
「そりゃそうよ」
西の異民族だってバカじゃない、不可能とわかってて提示したのだから。
「もう一つは国宝を盗んで逃亡した錬金術士の抹殺よ」
「錬金術士?」
初めて聞いた名称だ、どういうものか全くわからない、この国における帝具使いみたいなものだろうか。
「詳しいことはわからないよ、何しろ西の異民族にとって国家機密だから、ただ予想外のものを造りだせるそうよ」
予想外のものを造りだせる、一体どういうものを造りだせるのだろうか、予想ができない。
「ところで国宝は取り戻さなくてもいいの?」
「それについては向こうは諦めていたよ、抹殺だけで構わないって言ってた」
国宝を諦める?なんで諦めるのかな、まだ取り戻すチャンスがあると思うんだけど、それにしても国宝って一体なんだろう?
「その錬金術士の顔わかっているの?」
「うん、これがその錬金術士の手配書だよ」
「これが!?」
キャスカから渡された手配書を見てサヨは心底驚いた、まさかこの人物が錬金術士とはまさに予想外。
錬金術士ってどんなものか今ひとつわからないけど術士だからなんとなくそれらしいイメージをしてたけどこれは予想外。
「錬金術士ってのは私達の予想を超えた存在なんだよ」
「うん、そうだね」
「もっとも西の異民族にとっても帝具がありえない代物なんだけどね」
そっか、私達が普通に使っている帝具自体西の異民族にとって未知そのものなんだ、錬金術も向こうにとっては普通の技術なんだ。
「錬金術士の抹殺の依頼も受けないことになったの、どこにいるかわからない人間を探し出すのは骨だからね、だから今回の依頼を選択することになったんだ、人数は多いけど居場所は把握しているから楽なんだ」
「そうだね、居場所がわからない人間を探し出すのって困難だし」
西の異民族もそれを見越してこの手を打ったのだろう、エスデスや所在のわからない錬金術士の抹殺を選ばず残った街の首脳の抹殺の依頼を受けると読んでいたのだ、正直に言って小賢しい、だけどそれが戦略というものだ。
「西の異民族にとってもあの都市の攻略は帝国進行に必須だから革命軍に露払いさせておきたいんだよ」
確かに山岳にある都市を普通のやり方で攻略するのは簡単ではない、暗殺で中枢を抹殺するほうがが簡単である。
「依頼は複数あったけど実質今回の依頼を受けるしか選択の余地がなかったんだよ、残りはほぼ不可能だし」
「まあ、エスデスの抹殺に比べたら首脳の暗殺の方が全然楽だし」
実際暗殺自体危険がともなうんだけどエスデスと比べたらね···
「そろそろ行こうよ、ちょうど案内人が到着したから」
「うん」
西の異民族の案内人がやって来て打ち合わせが行われた、暗殺する首脳の似顔絵が渡され所在地を言い渡され今夜中に全員始末すること、ただしある書記官は生かしておくよう言われた、その書記官はワイロにとても弱く攻略の際には多額のワイロを渡して工作員を入り込ませる予定なのだ、そして都市内で騒動を起こし扉を内側から開けて軍を入れて都市を攻略するのである。
「これうまくいくのかな?」
「うまくいくんじゃない、ここの連中かなり体たらくだから」
「やっぱり帝都から離れているから質が低いんだね」
「そういうこと、仮にうまくいかなくてもそれは向こうの責任だから」
「とりあえず私達は今夜の任務に集中しないと」
「その通り」
西の異民族の侵攻のことまで気にかける余裕は私達にはない、今は目の前の任務に専念するだけである。