再会を斬る(後編)
「アカメちゃん、もう、やめようよ」
「いや、まただ」
都会で流行っているスキンシップだと信じてアカメはツクシの胸を揉み続けていた、ツクシはもうやめたがっている、恥ずかしさのあまりツクシは半泣き状態であった。
「恥ずかしいよぉ」
これが流行りのスキンシップだとツクシは思えなかった、それでもアカメは大真面目だったため否定できないのであった。
この状況を作った張本人はどうしようかと様子を見ていた、嘘だったと言えばアカメは激怒するだろうし、このまま何もしなければずっと揉み続けてしまうであろう、なんとかもっともらしい理由をつけて終わらせようと思案していたら別の者が動きだした。
「ねぇ、アカメちゃん」
「なんだ、マーサ」
「言いにくいんだけど」
「だからなんだ?」
「それ、嘘だと思うよ」
「嘘だと!?」
「先月大きな街に行ったけどそんなスキンシップ全然流行ってなかったよ」
アカメは数秒固まっていた、自分がとんでもないことをしてしまったことに頭がついてこなかったからである、そしてようやく追いつき···
「お前!!」
アカメは顔を真っ赤にして鬼の形相でにらみつけた、とんでもない恥をさらしてしまったからである。
「まさか別の誰かにやるとは思ってなかったのよ」
「言い訳するな!!」
「それよりもその娘、なぐさめたほうががいいよ」
そう言われてアカメはツクシの方に振り向いた、するとツクシは顔を真っ赤になってべそをかいていたのである。
「ツクシ、本当にすまない!!」
必死に謝るアカメを見て心からこの娘を想っているのだなぁと思った、それにしてもクロメはどうしたのだろう、ここにいないのだろうか?
「アカメちゃん、もう大丈夫だよ」
「だが」
「悪気があったわけじゃないんだから」
「···わかった」
あんな目にあってあっさり許すなんてこの娘かなりいい娘ね、それでも気を抜くわけにはいかないけど。
「悪かったわね、私が余計なことをして」
「ええと、あなたは?」
「私の名はメラミよ、アカメとは半年前に近くの森で知り合ったの」
「そうなんだ」
名前を言った瞬間アカメが眉をひそめたのを察した、その理由は想像できるなぜ偽名を使っているのか、でも本名を言うわけにはいかないのである。
「奢るから何か食べたら?」
「いいの?」
「さっきのお詫びも兼ねてるから」
「じゃあ遠慮なく」
こうして三人での食事が行なわれた、アカメの料理は凄まじく多くこの体でよくたいらげられるものだとつくづく思う、8年前も十分大食いだったがさらに増したのである。
食事が終わり一息ついているとツクシが席を立ち上がりこう告げた。
「ちょっとお手洗い」
「ああ」
ツクシはお手洗いをするために席を離れた、このタイミングを待っていたのである。
「アカメ、さっき私が偽名使ったことなんだけど」
「私もそれを聞きたかったんだ」
アカメは偽名を使った瞬間に聞きたかったのであるが視線を送ってそれを控えさせたので。
「それは帝国に私が生きていることを知られたくないのよ」
「なぜだ?」
「帝国は8年前のあれを脱走と判断して私を抹殺するかもしれないから」
「それは···」
「私の存在はあなたを面倒事に巻き込むことになると思うから」
「面倒など言うな、お前がいなかったらクロメはどうなっていたか」
正直私一人ではクロメを守りきれたかわからない、その恩は決して小さくないのだ。
「···さっきから気になっていたんだけどクロメどうしたの?」
あれだけアカメにベッタリしていたクロメが見かけないことに妙だと思っていた、それに心当たりがないわけではない、ハズレであればいいんだが。
「クロメはここにいない」
「やはり姉妹だから離れ離れにされたの?」
「ああ」
決してありえないと思ってなかった、子供を使い捨て同然に扱う帝国が温情などあるわけがない、姉妹は一緒にしたら都合が悪い、だから離れ離れにさせた、予想は的中してしまったのである。
「クロメがどこにいるかわからないの?」
「わからない」
アカメがクロメのことを探さないとは思えない、アカメもできる限りのことはしたのだろう、あまりに踏み込んだまねをしたらクロメの身が危ないと思い今に至るのだろう。
「いつかクロメと再会できるといいね」
「ああ、クロメといつか再会できると信じている」
この姉妹ならいつか再会できる、そんな気がするのよね、そう思いたいだけかもしれないけど···
「とにかく私のことはメラミで通してね」
「わかった」
クロメのことはひとまずおいておこう、今はアカメだ、あまり踏み込んだことを聞くわけにはいかないけど。
「アカメ、今あなた何してるの?」
「今は鍛錬に励んでいる」
鍛錬か、何の鍛錬か聞きたいけど少し危険かな···
「あなたはこの先何をしたいの?」
「私は弱き者の力になりたいと思う」
···アカメらしいわね、8年前もそうだった、だけど帝国がそんなまねするのかな?
「世を乱す者を討つために今鍛錬しているんだ」
世を乱すか、今この帝国がどうなっているのか知らないみたいね、重税によって多くの人々が苦しみ、役人は腐敗と不正まみれ、このことを知っても帝国に尽くすのかな、否、アカメはそれを良しとしない。
「ねぇ、アカメ···」
その瞬間、何か妙な視線を背後に感じた、すぐに振り向くとそこにはツクシが立っていた。
「どうしたの?」
ツクシはにっこり微笑んでいる、だが何か妙な感じがした、それが何かわからない、だが取り乱すわけにはいかなかったのである。
「ねぇ···」
あなた今の帝国どう思う?そうツクシに聞こうとした、だがその瞬間危険を感じた、ツクシはいい娘だ、それは間違いない、だが何か危険がある、そう勘が働いたのである。
「何?」
なんでもない、そう言ったらまずい気がした、だから別の答えを言うことにした。
「あなたの胸揉ませて」
「えええ!?」
「あなたの胸大きくて柔らかそうで揉んだら気持ちよさそうだから」
「だ、だめだよ!!」
「なんで?」
「恥ずかしいから」
「絶対にだめ?」
「絶対ダメ!」
「···仕方ないわね、あきらめるわ」
「ごめんね、でもやっぱり揉まれるの嫌だから」
まあ、女の子なら普通の対応よね、こうして見るとどこにでもいる女の子なんだけど。
「悪ふざけが過ぎたわね、大きいおっぱいだったからつい我を忘れて」
「ううん、気にしないで」
胸を揉もうとしたのに怒ったりしない、やっぱりこのツクシって娘いい娘ね、でもこの娘に何か不安を感じるのよね···
このあと食事をたいらげてしばらく休息してメラミは立ち上がり食堂を出ようとした。
「お先に」
「これからどうするんだ?」
「しばらく村をブラブラするわ」
「そうか、私達はしばらくしたら戻るつもりだ」
「そう、またね」
メラミは食堂を後にしてしばらく村を歩いていた、最初に村に入った時にも思ったのだがこんなところに村をよく作ったものだと思った、西の異民族の国境のすぐそばに村を作って利点があるのだろうか、そう思っていると妙な気配を感じた。
見られてる?でもこの視線は素人のそれじゃない。
よそ者を警戒するのは自然だ、だけどこれは訓練された者の視線だ、やはりこの村ただの村じゃない。
メラミは慌てずにゆっくりと歩きそのまま村を出ることにした、例の視線はまだ感じる。
まだ感じるわね、一体何者?
メラミは村が小さく見えるところまで歩き続けたところで足を止めた、そして一気に全速力で走り出した、しばらく走り高い木を見つけると思いっきりジャンプして枝に飛び移った。
さて、やってくるかな?
しばらくすると二人の男がやってきてあたりを見回した、この男がメラミを監視していた者であり完全に彼女を見失ったようである。
「あのガキどこ行った?」
「なんて速さだ完全に見失った」
「ただ者じゃないな」
「もしかして反乱軍の密偵か?」
「とにかく探すんだ」
「ああ」
男達が去ったあともメラミは降りずに考え事をしている。
今反乱軍って言ってたわね、反乱軍は確かはるか南に拠点をおく帝国と敵対している組織、私をその密偵と疑っていた、あの二人は間違いなく帝国の手の者、おそらくあの村は帝国の息がかかっている、もしかしてアカメ達のためにあの村が作られたの?
「もう一度アカメと話したいわね」
だが再びあの村に入るのは危険である、次は問答無用で捕えにくるだろう、となれば村以外でアカメと会わなければならない、だがアカメが一人の時を狙わなれけばならない、ツクシや他の者が一緒の時はダメである、そんな機会があるのだろうか、それでももう一度アカメと話をしたいのである。